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弘法筆を選ばず、アレゲはキーボードを選ぶ -- アレゲ研究家
ドメイン裁定とADRの有効性 (スコア:3, 興味深い)
事件一覧 [ip-adr.gr.jp]を見ても分かる通り、殆どが移転裁定で、
取得が正当であるとの裁定は今まで出ていません。
日本知的財産仲裁センター(IP-ADR)に係属する事件が、既に正当な
ドメイン取得かどうか怪しい事件ばかりであると言うこともできま
すが、ちょっとこの裁定の結果の移転裁定率を見るに、裁定が偏って
いるんじゃないかという疑念を拭えないと思います。
実際、裁定全文を見るに、ちょっと名の知れたドメインなり商標と
同じ名前のドメインを取得
Simon (Don't call me "Shi'mon". Call me "Sai'mon")
-- real thing goes strange. sometimes.
Re:ドメイン裁定とADRの有効性 (スコア:2, 参考になる)
もう少し明確な断基準が事前に示されていれば、ADR すらも不必要だと思うんですが。
ビジネスに使うドメイン (.co.jp もしくは新設の何か) は 「ドメイン取得の原則である先願主義」でなく、商標優先であるとわかりやす
Re:ドメイン裁定とADRの有効性 (スコア:5, 参考になる)
た話ではないことをお断りしておきます。
一般論として、ADRを有効利用しようという考え方は正しいと思い
ます。現状の司法制度上、民事上の紛争を全て裁判によって解決し
ようというのは無駄が多いと思いますから。
問題は、日本知的財産仲裁センター(IP-ADR) [ip-adr.gr.jp]はドメイン紛争のJPRS
指定ADRとして、裁判所よりも専門的知識やバックグラウンドをちゃ
んと持って裁定にあたって然るべきなのに、判で押したような
「会社名/商標と混同するようなドメインは移転」という裁定を出
し続けていることにあります。
ドメインは、歴史的にも現状でも先願主義です。有名会社だろうが
なんだろうが、先にドメインを取られたら負けという、ある意味
公平な制度を取っています。
確かに、著名な商標に関連するドメインを片っ端から取って売り付
けようとするといった、サイバースクワッティング的悪質なドメイン
売買目的の取得は、移転裁定/判決などで本来持つべき所持者に対
し権利を移転するのが正しいと思いますが、移転/取り消しなどの
処分を求める側が大会社や著名であると、goo.co.jpのように当該
ドメイン名が処分を求める側のサービス開始より前に取得されたも
のであっても、移転を是認する決定が為されることに危機感を感じ
ています。
goo.co.jpの件は、アダルトサイトのゲイトウェイ的な使われ方を
したという行為が、移転決定がなされる大きな根拠であったと思い
ますが、今回のmp3.co.jpについては、IP-ADRの移転裁定 [ip-adr.gr.jp]によれば、
という論理展開をしています。これは、あまりに強引であると言わ
ざるを得ません。
# だからこそ、移転裁定不当の判決が出たのでしょうが。
確かに、私も自分が欲しいと思うドメインが取られていて、かつそ
のドメインが使われていないようだと、「使わないのに取るなよ」
とか思ったりしますが、ドメインが先願主義である以上、
使うかも知れないから取っておくという行動を責めるこ
とはできますまい。
となれば、"使用実績"がないことを大きな理由として移転裁定がなされる
のは、小さな組織や会社に対して非常に不利であると言わざるを得
ません。大きな組織/会社は、とりあえずWebサイトを構築したり、
商標登録をしたり、宣伝費用を掛けてWebサイトを有名にして、ア
クセス数を増大させたりすることは簡単にできますが、小さな組織
にはそれは難しいことです。
それを、取得者の規模の大小や先願主義という原則を考慮せずに、
同じ土台でアクセス数だとかそのサイトを取り上げた記事など"使
用実績"として比較して、「使ってないから権利ないです」と裁定
するのは余りに理不尽であると言えます。
さて、商標に近い形でドメイン名を扱おうという主張は、既に多数
の方がなされていますし、実務家の意見もそちらに傾いている気配
があります。しかし、商標が商品分類(指定商品・役務区分)に基づ
いて登録され、違う分類ならば同じ名称を登録することが可能であ
る(当然、既にその分類で登録されていれば不可)のに対し、ドメイ
ン名は1つ取ってしまえば、商品分類に関わらず全てを押さえるこ
とができます。
かつて、JPNICのdomain-talk ML [nic.ad.jp]でも話題になったことがありますが、
商標と同じ/類似するドメイン名に対して優先権を持ちたいという
のであれば、商標専用の識別子を設けるべきであると個人的に思い
ます。そうでなければ、違う商品分類で同じ商標を取ったもの同士
のコンフリクトを解決することができなくなります。
現在、ドメイン名紛争裁定において、商標登録の有無やWebサイト
へのアクセス数などの"使用実績"が有力な証拠
として扱われていることを見るに、今のIP-ADRによるドメイン名紛
争裁定では大会社/著名商標保持者に極端に寄った裁定がされてい
ると思うので、その意味で、現在採られている先願主義との事実上
の不整合が起きています。
もし、紛争処理方針として、大会社・著名会社優先といった形を採
るのであれば、ドメイン名割り当て基準として、それを明記するべ
きでしょう。現在の先願主義のまま、事実上の横取り可能
な運用がなされることは、ドメイン名割り当て原則の根幹を揺るが
すような事態と言えると思います。
私の立場としては、「悪質な売買目的での取得などといった、悪意
によるドメイン名占拠以外のコンフリクトに関しては、先願主義を
尊重するべき」というものです。
以上、長文となりましたが。
Simon (Don't call me "Shi'mon". Call me "Sai'mon")
-- real thing goes strange. sometimes.