軍事転用できる炭素繊維を不正に輸出しようとした貿易会社会長らが逮捕された(毎日新聞)。
炭素繊維の世界シェアは東レ、帝人傘下の東邦テナックス、三菱レイヨンの3社で7割を占めている。燃料電池車や航空機といったハイテク分野だけでなく軍需産業や核関連施設での需要も多く、たとえば最新鋭戦闘機やウラン濃縮用遠心分離機の材料としても使われている。そのため、一部の高機能炭素繊維については安全保障上の理由により輸出が制限されている(炭素繊維を輸出する際の規制:日本)。
今回輸出された炭素繊維は韓国向けとの申請で輸出されたそうだが、実際には韓国の釜山港経由で中国東部の企業に運ばれていたという(NHK)。逮捕された貿易会社の会長らは、中国に運ばれるとは知らなかったと述べているとのこと。この中国企業は海外企業や軍需産業との取引があるとされており、中国だけでなくイランなどの「テロ支援国家」などに渡る可能性も危惧されている。
なお、炭素繊維においては2012年にも米国から中国への不正輸出が事件になっている(WIREDの記事)。中国では国家的に炭素繊維やそれを使用する複合材料の研究開発を国家的に支援しているようだが、まだ成果は出ていないようだ(中国網日本語版)。