Jadawin (2174) の日記

2003 年 05 月 13 日
午後 06:09

書評分会、少女漫画部:「彼方から」14巻(ひかわきょうこ)

長い間続いていた「彼方から」がとうとう終ってしまった。盛り上がりつつも、
ちょっと違和感を感じる終り方だった。物語的には王道なのだけれど。さて、
知らない方のためにちょっと紹介しておくと、、、

イザークは、自分は「天上鬼」であると、「目覚め」が自分を「天上鬼」にす
ると予言され、「目覚め」を殺しに森を目指した。しかし、深い森の中金色の
コケの絨毯でみつけたのは、ごく普通の女の子(だった)ノリコである。

といった、導入で始まる物語です。作品世界は、現実世界よりファンタジー方
面にずれており、変わった能力をもつものも多い中でもイザークの強すぎる能
力は様々な波紋を呼びます。敵愾心をいだくもの、利用しようとするもの、そ
して敵。

この状況においてノリコは何をするか。これが、物語の大きな軸の一つです。
典型的な物語では、異界は主人公に力とそれをふるう対象を与えます。例えば、
同じ少女漫画でも「天は赤い河のほとり」(篠原千絵)では、現代人の知識と感
覚を持ち込こんで戦い、女神イシュタルとまで呼ばれます。しかし、ノリコ
はずっとただの女の子でありつづけました。結構ハードな物語の中だからこそ、
ノリコの回りの日常がこのマンガの基調をなしています。

で、14巻に話を戻すと、最後にノリコが救世主になってしまいました。あくま
でも、「根元の力」、「光の世界の力」を通してイザークの力を借りるという
形はとっていますが。個人的には、これがちょっと残念です。

しかし、巨悪が倒され、やはり、ノリコはあの世界に残ることを選択しました。
現実世界へも日記を送ると言う形でのコンタクトが回復し、物語は大団円を迎
えます。読者も納得のハッピーエンドと言って良いと思います。

「彼方から」は、少女漫画でありながらも良質のファンタジーだと言って良い
と思います。普段は、少女漫画を読まない人でも十分楽しめるでしょう。最
近は、女性マンガ家が少年誌に進出したり(「Dragon Voice」とか)、少年/
少女といったジャンル分けはだんだん無意味になりつつあります。/.のみなさ
んも、漫画喫茶あたりでたまには少女漫画なぞ読んでみてはいかがでしょうか。
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ハッカーとクラッカーの違い。大してないと思います -- あるアレゲ

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