Oliver (4) の日記

2003 年 12 月 30 日
午前 04:56

削除要請

Slashdotをやってるとたまに削除要請というものがやってくる。著作権侵害やらプライバシー侵害やら、名誉毀損やら業務妨害やら。本当は権利を侵害されたとする人と侵害したとされる人同士、つまり当事者同士で解決することなのだが、そもそも連絡がとれなかったり、話が決裂したり、はたまた直接交渉するのが面倒だったりすると、「削除できる人」に連絡がくる。

この削除要求、ほぼすべてがかなり興奮して権利侵害だ!と息巻いているのだが、多くの場合、この時点では文章の内容的には第三者である自分からみれば、権利侵害の違法情報ではない。もちろん弁護士でも判事でもないので、専門家ではないのだが、こういうことをやってるからにはニフティのフォーラムや2ちゃんねるの事件や裁判には注目して、判決文や解説も読んでいるので、ちょこっとは判断できるとは思っている。

それでも、名誉棄損はすんげぇ難しい。成立するためには、公然と相手を特定して、具体的な事実を示した上で相手の社会的信用/名誉を低下させうる発言でなければいけない。しかし、過去の事例から明白なケースならまだしも、本来ならば門外漢のネットワークサービスの運営者に暫定的とはいえ判断させるべきものではない。でも、判断を拒否すれば「たとえ正当な文章であっても、クレームがあって、人様に迷惑をかけているので削除」ということになってしまう。ほとんどのサービスプロバイダーが楽なその道を選んでいる。自分が訴えられるリスクをおかしてまで利用者の権利を守ることもない、と考えているからだ。でも、それでは正当な言論までもが、クレームつけたが勝ち、で封殺されてしまう。かといって、判断を誤ったら権利侵害を放置したとして責任をおってしまう。プロバイダー責任制限法によって、明らかに権利侵害だと知っていた場合以外は免責されるとはいえ、間違えたくはないものだ。

最近もある日記エントリの文中になんの脈絡もなく「ここのサービスはうけたくない」という風な文章があって、「ここ」がリンクになっている先から名誉毀損だ!という削除要請をもらった。公然と発言し、相手を特定はしているが、まわりの文章はまったく関係ないもので、具体的な事実はおろか、侮辱的もしくは攻撃的な表現すらない。そこで名誉棄損とは思えないので削除はできない、と返事したら、具体的に指摘した疑問点への反論はなく、法律の条文やら(本当はとても参考になる)テレサ協のプロバイダー責任制限法ガイドラインやら最高裁の判例から引用して、さらに激しく削除要請された。たしかにその人のサービスは受けたくないと思った :-)

いくら不当だと思っても、こうなったら最終的な判断ができない運営者は白黒がハッキリするまで念のため、送信防止措置(=必要最低限の削除)を取らざるをえない。もし権利侵害がなかった場合に、不当削除したとしてトラブルにならないためには、問題となっている文章の発信者に連絡して削除に同意してもらうことになる。同意してもらえなかったら、運営者が自分の責任で削除するか、しないか決めなければいけなくなる。

今回は発信者から、違法とは考えていないが、トラブル回避のために問題となっているリンクをはずす、という返答をもらった。訴えられうる一人としてはすこしホッとしていることは否定できないが、正当と思える言論が、自主的にとはいえ、誰かが激しく騒いだだけで引っ込められたのは、とても残念だ。自分が受け取った削除要請の類で実際になにかが消えたのはシェアウェアのパスワードを消したとき以来、二度目だ。他の要請は全部、納得してもらったうえで削除しないですんだので、なお残念だ。でも、どれほどのリスクをおってまで発言するかは発言した人が自分で決めなければいけないことだ。自分にできることは、不当と思える削除要請を安易に認めないことで、なんでもかんでも批判的な意見にはクレームをつける、という雰囲気を変えようとすることだ。

「特定電気通信役務提供者」なんてすごそうな肩書を法律にもらっても、結局は板ばさみの運営者。大変だけど、こういうのもハラハラドキドキでちょっとは楽しいと思ってしまう。

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Stableって古いって意味だっけ? -- Debian初級

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