y_tambe (8218) の日記

2010 年 06 月 28 日
午前 09:27

ブラックジョーク

Q. 死刑廃止されたフランスで最も重い刑は何か?

A. 「被告を終身刑に処す。ただしニコラ・コカニュと同室で」
2010 年 04 月 26 日
午前 10:05

まだ終わってないけど

実習のメイン担当、明日まで。今年起こした菌株も、みんな無事活躍(?)してくれました。

途中、教官側で準備しておいた寒天平板に質の悪いのがいくつか混じってて焦ったのだけど、まぁ、大した数ではなかったので何とか無事にすんでよかった…枚数が多いので院生に作成を手伝ってもらったんだけど、多分その辺りが原因だったんだろうなぁ。普段、実験用で作ってるのとは要領が違う(大きなフラスコで大量に作る)せいで、寒天が沈んでるのを撹拌不十分のまま固めちゃったとか、多分そんな感じだろうな。
2010 年 03 月 12 日
午後 06:06

中二病っぽく(こんな感じか?)

…人の世に災いをもたらす、いと小さき者どもよ。今こそ、氷の中の眠りから覚めて、再び我が前に姿を見せよ。


訳:今年もまた学生実習の季節が近づいてきたので、一年前に凍結保存しておいた、カビや細菌(病原菌も含む)を復活させて、培養開始しました。
2010 年 02 月 26 日
午後 12:09

Yahooニュースのコメントで、狂犬病についての理解が乏しい件

【中国】エイズ発症3割増、死亡者数もトップ—死亡率では狂犬病1位

中国での狂犬病の発生件数について触れたコメントがいくつか見られ、その多くの人が「狂犬病の多さは中国の衛生管理の悪さやワクチン接種の不徹底によるもの」と認識してるようですが…この理解は正しくないし、そんな生易しい話ではありません。狂犬病に関して、世界的に見て日本がいかに恵まれた状況か、ということをまず理解して欲しい。


IDWR:感染症の話 狂犬病

「狂犬病」という名前から誤解されがちですが、狂犬病はイヌだけの病気ではなく、イヌ・ネコ・アライグマ・キツネその他の(いわゆる食肉目の)動物や、コウモリなどの野生動物が主な感染源になるものです(いわゆる「温血動物」には感染しうると言われる)。世界的に見ると、オーストラリア、イギリス、日本、台湾、ハワイなどの島国ではほぼ根絶されたと言われてますが、それ以外の、いわゆる「大陸」部では依然発生が多いです…というのは、野生動物が宿主になりうるからです。

日本では幸い、イヌ以外の野生動物には蔓延していなかったので、飼っているイヌへの予防接種と、いわゆる「野犬」への対処によって根絶にほぼ成功しました。しかし、野生動物に蔓延してる地域では根絶は現実問題として不可能だと考えられてます。
その国の、狂犬病のキャリアになりうるすべての野生動物に狂犬病ワクチンを接種するか、あるいはキャリアになりうるすべての動物を処分するかしかないので。さらに大陸部では一国だけの対処では不完全で(野生動物は国境に縛られませんから)、(仮に国内で根絶が成功したとして)根絶後に、国外からの野生動物の侵入を防止するか、あるいは周辺の国すべてで根絶できないと意味がありません。

このような背景から微生物学の講義では、狂犬病は、しばしば「人類が初めて根絶に成功した」天然痘(痘瘡)と対比して語られます。どちらも有効なワクチンが存在するものですが、天然痘の場合、ヒト以外の宿主が自然界に存在しないことが、根絶の成功につながった理由になりますので。

なおIDWRのリンク先でも触れられてますが、「いくつかの島国では根絶された」と言われてきましたが、イギリスやオーストラリアでは野生のコウモリからの感染事例が報告されており、厳密な意味で「根絶され」ているとは言えないことが判ってきてます。また日本や台湾などでも、感染事例こそないものの、狂犬病の宿主になる可能性があるコウモリが生息していることが明らかになってます。
あと、確かヨーロッパのどこかだったと思いますが、狂犬病の経口ワクチンを開発して、肉などに混ぜて森林にばらまくことで、野生動物にワクチンを投与しようという構想もあったと記憶してます…まだ現実のものにはなってないと思いますが。
2010 年 02 月 08 日
午後 08:21

UCC

表のストーリーだと、オフトピっぽいのでこちらに。

UCCは去年の1月に社長が交代したところで、今後、どのような方向に進んでいくのかが、コーヒー業界の関係者から注目されてるところです。
新社長に就任した上島豪太氏は創業者の孫で、また同時に会長兼社長であった父が会長に就任(?)したことで同族経営路線が固まったこと。また新社長は、大学では経営学を専攻しており、いわゆる「コーヒー屋さん」とは違う観点からの経営方針に切り替える可能性を考えている業界人もいました。加えて、日本のコーヒー業界自体も、スタバの進出によるショックから抜け出せないうちに、今度はマクドナルドの本格参入という事態がやってきて、かなり大きな動きが避けられない時期に来てるとも言えます。

個人的には、新社長就任の少し前から続けられていたようなUCCの取り組み…中でも、「コーヒーハンター」川島氏がマダガスカルで「再発掘」したブルボン・ポワントゥの生産・販売や、お茶水大の芦原先生らと行っている、GCA低カフェインコーヒーの作出などを、「世界のコーヒーの歴史に残る」一大プロジェクトとして、非常に高く評価してるので、経営方針の見直しをすることになったとしても、このあたりはぜひとも続けてもらいたい、と思ってるのですが……。
2010 年 01 月 19 日
午後 03:23

これで覚えろ?? 代表的な細菌性食中毒

セレウス菌(毒素型と感染型の両方を起こしうる)は別にして。

燕尾服の大猿が かんぴょう植えると感染し、毒素で黄色いぼつぼつに
  • えんびふくの:腸炎ビブリオ
  • おお:大腸菌
  • さるが:サルモネラ
  • かんぴょう:カンピロバクター
  • うえると:ウェルシュ菌
  • かんせんし:(感染型食中毒)
  • どくそで:(毒素型食中毒)
  • きいろい:黄色ブドウ球菌
  • ぼつぼつに:ボツリヌス菌

感染型食中毒を起こすのには、サルモネラや大腸菌以外にも非O1コレラ菌とか、エロモナスとか、エルシニアとかいろいろあるし、広義の感染型食中毒(食由来感染症)であるリステリアとか、腸チフスや赤痢、コレラの扱いなんかもややこしいところなんで、代表的なものだけ挙げた(まぁ看護師国家試験対策のための補習講義用だし)

そこよりもポイントは、毒素型食中毒の起因菌の「黄色いぼつぼつ」。黄色ブドウ球菌とボツリヌス菌。この二つだけなのでしっかりと押さえること。ただ、最初に述べたようにセレウス菌食中毒にも毒素型のものがあるので、これだけ注意が必要だったり。

2009 年 12 月 16 日
午前 09:39

【ネタ】フレームのもと

高齢者の認知機能とカフェイン摂取の関連を見た論文が出てるのだけど、要旨から引用すると…

Generally, higher cognitive scores were associated with coffee consumption, and lower cognitive scores with tea consumption

…つまり、コーヒーを飲んでる人では認知機能が高く保たれ、お茶を飲んでる人では認知機能が落ちてる、ってことに(笑)

ただまぁ、タネ明かしをすると、

, but these effects were not significant in the fully adjusted model.

と続くわけですが。

ウチでは全文が読めない雑誌なんで、要旨しか読んでないですが、他にもいくつか落し穴はありそうな印象です…見落とされてる因子がいくつかありそうな、というか。

2009 年 11 月 13 日
午後 07:38

輸入ワクチンとBSE

この辺りも、今は完璧にスルーされてるみたいだけど。

新型インフルエンザ用の輸入ワクチンは、培養細胞(MDCK辺りだったと思うけど)を用いて作製されてるようですが、そのうち「BSE(いわゆる狂牛病)の感染リスクが?!」なんて話が出てくるんじゃないかと予想してみたり。

基本的にワクチン作製では、まず「生きたウイルス」を多量に作る必要があります…十分に弱毒化したワクチン株ならそのまま、そうでなければそのウイルスを壊して、予防用のワクチンにする。で、その「生きたウイルス」を作るためには、これまた「そのウイルスが増殖できる、生きた細胞」が必要になります。日本で用いられてる、ウイルスの鶏卵培養法では、有精卵(ふ化鶏卵)を、その「生きた細胞」の集団として使ってるわけです。で、輸入ワクチンの場合、その代わりに動物の培養細胞を用いて作ることになります。

動物細胞を培養する場合、それを培養するための溶液(培地)には、さまざまな成分が必要になります。それも菌類とか植物など、他の生物とは異なり、糖類や必須アミノ酸、ビタミン、塩類など(いわゆる基本培地を構成するもの)だけでは培養ができません。他の動物に由来する生体成分(さまざまな成長因子タンパク質などを微量に含む)が不可欠です。通常、哺乳動物細胞では、ウシ胎児血清(Fetal bovine serum, FBS, Fetal calf serum, FCS)を5〜10%程度培地に添加して培養する必要があります。

このウシ胎児血清は、生体由来成分なもので商品ロットごとのバラつきがあり、その良否が細胞の生育に大きく影響するので、細胞生物学屋さんにとっては非常に重要なものなのですが、2000年代初頭にそのメーカー供給がほとんどストップしてしまったことがあります。そう、BSE騒動の影響で。ウシ胎児血清も異常プリオンが検出される可能性があるから、ということで、輸入量が減り、元からかなり高かった価格もさらに高騰してしまいました。
#その後、BSE騒動も随分と下火になり、国産とかオーストラリア産のウシ胎児血清を取り扱うメーカーも増え、現在はさほど問題はありません。

例えば、ヒト幹細胞治療の分野などではワーキンググループで、培養時に用いるウシ胎児血清と、異常プリオンの問題についても話が出てます。細胞培養によるワクチン作製でも、この辺りは無関係ではないはずなんですけど、「供給量を確保せよ」という論調の陰に隠れてしまってる感がある。特に海外では、日本ほど異常プリオンに神経質でない国が多いわけで、「国内での規準に照らし合わせれば」問題になって、後から騒ぎ出す人が出てくるんじゃないの? とか予想してみたり。

個人的にはまぁ、培養液からのプリオン混入(ワクチン精製過程では、むしろ濃縮されそうだし)のリスクがどの程度のものなのか「全く見当がつかず、判断の手がかりすらない」というのが正直なところ。なので、果たして安全側に倒して判断すべきか、それともとりあえず直近の問題だけを考えて「良し」とするかは、本当に悩ましいのだけど。

まぁ安全側に倒すなら、最低限のプリオンのモニタリングくらいは実施しておく、ということになるかなぁ……もっとも、それ以前に「輸入ワクチンは高齢者用、低年齢の人はできるだけ鶏卵ワクチンで」という風な割当が可能なら、それでほぼ解決可能な問題だろうと思いますけどね。

#プリオン病は遅発性なので、高齢者だったら万一感染しても発症前に天寿を全うする可能性が高いから。
2009 年 10 月 05 日
午後 06:13

これはひどいリストですね ;-P

TarZさんの日記経由。"What's inside a cup of coffee?"(Wired記事)

随分とまたダメダメなリストだこと…以下突っ込み。
−−−
2-エチルフェノール:大して含まれてない。むしろ、グアヤコール(2-メトキシフェノール)類の方がよっぽど大事。
3,5-ジカフェオイルキナ酸:別名、イソクロロゲン酸(3,5-ジクロロゲン酸)。クロロゲン酸(≒カフェオイルキナ酸)類の中では含量は比較的少ない方。ここは素直にクロロゲン酸にしとこうよ。
ジメチルジスルフィド:これも少ない。同系統の化合物なら、むしろジメチルスルフィドやジメチルトリスルフィドの方だろうと……というより、含硫化合物を挙げるなら、2-フルフリルチオールを挙げずしてどうする。
アセチルメチルカルビノール:アセトイン。これも少(ry どうせならダイアセチル(2,3-ブタンジオン)を挙げずしてどうす(ry
プトレシン:これも(ry 含窒化合物ならピラジン類を(ry
トリゴネリン、ナイアシン:ちなみにトリゴネリン→ナイアシン→ピリジンと分解される。ピリジンの生成はかなり深煎りの段階になってから(焦げ臭や煙臭の一部)

カフェインとかキナ酸はまぁともかく、香り物質についてはもうぼろぼろ。よりにもよって、こんなものを「代表」として扱うとは何と失礼な!
※ただし、記者がコーヒー好きならば特別に許す

ちなみにコーヒーの香りについては、Coffee Flavor Chemistryという網羅的にレビューした本があって、2001年の段階で1000種類近く(生豆300種類、焙煎豆850種類、うち200種類は共通)のものが見つかってますが、この論文ではそのうち約30種類を混合すると「コーヒーらしい匂いが再現できた」としてます。

#香料関係者に話を聞く機会があったのですが、その混合物だと「60点くらいの出来」だそうですが。今度会う時は、僕も嗅がせてもらうんだ…
2009 年 09 月 10 日
午後 02:24

ダチョウ抗体入り納豆の無意味さと、コラーゲン入り食品への反論の拙さ

少し前に出たダチョウ抗体入り納豆の話。

いくら何でも、こりゃあかんでしょ、というくらいツッコミどころ満載な商品…と言っても、新型インフルエンザ流行時に抗体マスクがあれだけ売れたこの国では、わからずに買っちゃう人が多いんでしょうけどね。
以前のコメントでも、少し触れたけど、そもそもダチョウ抗体使うくらいなら、マスクに消毒薬染み込ませた方(ただし、既存商品の一部にあるようないいかげんな「抗菌剤配合」とかでなく、きっちりと効果検証した上での話)がよっぽど確実なわけで。「抗体」という言葉の響きや、そのメカニズムを示した「見てきたような絵」を見て、「何だかすごそう」なイメージを持った人が多かったのだろうけど、それはつまり抗体というものを良く知らない人が如何に多いかということの裏返しでもある。

最近、「美容目的でコラーゲンを食べても、それが直接、組織に入るわけではなく、『結局は消化されるから』から無駄」という反論が(ようやく)広まりつつあるみたいけど、納豆ダレに抗体を入れるのも全く同じ話。んなもん、胃の中でほとんど消化されますって。特に抗体の場合は、抗原結合部位(Fabの先端部分)の立体構造が特に重要なんだけど、その立体構造はpHによって大きく変わります。むしろ、実験室なんかだと、抗体を使って抗原分子を分取した後で、それを外すときに酸性の緩衝液で処理して外すくらい。なので、万一効果があるとしても、それはせいぜい「食べ物に、(そのまま食べると食中毒を起こすほどの量の)有害な菌が混じっており」「それに抗体が結合し、その除去が食道までに行われる」という、ありえないほどわずかな可能性でしかないわけで。

#それ以前にまぁ、真っ当な研究者が、今時「悪玉菌」なんて言うのはどうよ、というのもあるんだけど。

−−−−
ところで、引き合いに出した「美容目的でコラーゲンを食べても、それが直接、組織に入るわけではなく、『結局は消化されるから』から無駄」という話だけど……こっちに対しては、「ようやく」ここまできたけど、まだまだというか、随分と雑な反論だよなぁ…というのが正直なところだったり。いや、結果から言うと「ほとんど無駄」というのは、おそらく正しいのだけど、それは決して、こんなに雑な、「底の浅い」議論で結着付けられるものではないです。上述の抗体とか、他のタンパク質については、その程度の議論でも十分なんだけど、コラーゲンについてはそれだけでは不十分、というか。

そもそも、コラーゲンってのは、タンパク質の中でもアミノ酸組成がかなり特殊で、グリシンとプロリンの比率が異様に高い、というのがあります。

#全アミノ酸のうち、約3分の1がグリシンで4-5分の1がプロリン。特に、プロリンがこれだけ多いのはかなり特徴的で、ここらへんが、三重螺旋構造をとることなんかにも関わってるわけですが、まぁともかく。

従って、コラーゲン新生の際には、グリシンとプロリン、もしくはその前駆体になりうるアミノ酸が多く必要になるわけで。もし仮に、経口摂取したコラーゲンが消化されることが、これらのアミノ酸の量を増やし、さらにそれがコラーゲン新生を促進する、というようなメカニズムがあるのならば、「コラーゲンを食べても『結局は消化されるから』無意味」という反論は成立しないのです。

じゃあ「意味があるのか?」ということになるんだけど…まぁ正直言うと「判りません」、というか、直接的な研究データはありません。ただし、間接的なデータは出てます。そもそも医学分野での「コラーゲン新生」ってのは、別に「お肌ぷるぷる」にするためのものではなくて、創傷の治癒との関係から研究されているものです。で、その創傷治癒について言うと、食餌にプロリンを添加し補強した場合に効果は認められませんでしたが、アルギニンやオルニチンを添加した場合には、コラーゲン新生の増強が認められてます(Pubmed)。また古い文献では、アルギニン、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、グルタミンの添加が有効であったというものもあります(Pubmed

元々、プロリンはヒトにとっての必須アミノ酸ではなく、体内ではアルギニンやオルニチンから作られるのですが、アルギニンなどの添加によってコラーゲン新生が増強されたことから、コラーゲン新生にはおそらく、このプロリン合成経路が関与しているのではないか、と考えられてますが、詳細はまだ不明です。

まぁ、この「創傷でのコラーゲン新生による治癒の促進」というのと「お肌がぷるぷるになる」ってのが関係あるかと言われると、それは判らないし、また個々のアミノ酸添加ではなく、高分子であるコラーゲンを摂食・消化した場合の話というのは、別の話にはなるのだけど、少なくとも「コラーゲンを食べても、消化されたら一緒」と、一言で片付けてはいけないだけの特殊性というのが、コラーゲンという特殊なタンパク質には存在してるわけで(そして、抗体にはこんな特殊性はないわけで)。

なので、このあたりは割りかしデリケートというか、そこらへんを計り間違えて、「雑な反論」で片付けてはいけない問題だと考えてます。むしろ、きちんとした医学的なデータ(コラーゲン摂食と肌の張りだかなんだかとの関係を解明した学術論文)を要求することで、反論しなければならない問題なんだと。

「科学者は100%安全だと保証できないものは動かしてはならない」、科学者「えっ」、プログラマ「えっ」

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