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日記

ken_non_sumの日記: ドイツ文字筆記体を知ったときの衝撃といったら…… 4

日記 by ken_non_sum

某アニメで、高校生のキャラが筆記体を用いて英文を綴る場面があったらしいのだが、それについて、今時の中高生は習わない筈だからつかうのはおかしい、みたいな議論が当然のように行われていて、うすうす分かってはいたけれども、ボクはどうにもヲタクというものを買い被り過ぎていたのだろう、ということを今更ながら思い知らされた気分だ。
知らないことは恥ではない。
知らないという立場を擁護するのに、知っているという立場を否定する必要はないはずなのだ。
それなのに、知らないでいることを要求するような言動をとる。そこにこそ、強い怒りをおぼえるのだ。
がんらい実生活に何らの寄与をも指向しない娯楽を、積極的に楽しもうとする身が、そんな考えではダメだろう、と。
;; 気障だ、くらいの感想なら理解できるが。共感はしないが。
;;; ああ、まとめサイトの情報操作を真に受ける愚かしさについては見逃してね。

ちなみに、jargon file の pencil-and-paper の項や Appendix B Miscellaneous の内容を見る限りは、おそくとも 1980 年代くらいまでは、米国でも筆記体、少なくともブロック体でない書体が筆記に用いられるのは自然だったことがうかがえる。

ただ、ボク自身についていえば、書字のときに、一文字づつ書きおえてゆかないと気が済まない質なので、どうにも半端な書きぶりになってしまう。
;; 和文でも、かな文字を、濁点半濁点をさし置いて連綿するのがイヤだ。
あと大文字は活字のスクリプト体ふうに書くことのほうが多い。
楷書(と世の中がみなしているもの)と行書とだったら、特に気をつけて、決して交ざらないようにするのだけれども、このあたりは、やはり母語であるか否かの差だろうか。

タイトル、初見は、高校の図書館で借りた三修社か白水社のドイツ語文法書だったかな。挿絵の、喫煙している女性に時代を感じた。
で、ドイツ語の授業のノートは頑張ってそれで取った。今読み返してみても、鋸歯がギザギザしているようにしか見えない。こんなの。ノートを貸してくれという知人には、わざわざメモに、常識的な書きぶりに直して渡したっけ。そんなこと知る由もない先方はいたく感激してくれたが。
;; ここらだと代数や、位相空間論のテキストに載っていて知った、なんていう人が多そうだ。

エスツェット(ギリシア語のベータみたいなやつ)はたぶんこれか、亀の子文字の名残り。
でもガウスもワイエルシュトラスも今は ss と綴られがちだよね。
ハンガリーだと sz は頻出なのに。大学町 Szeged のほかには、超絶技巧の Liszt、聖剣伝説 3函数解析の Riesz 兄弟くらいしか思いつかないが。
ああ、あと女優に Rachel Weisz がいるね。
ローマンなアルファベットでも、18 世紀ぐらいまでは、語中の s は f みたいな字で表現されていたようだ。そのへん、ギリシア文字でもシグマは語尾と語中とで形を変えるのと符合していて、おもしろい。

;; ああ、急減少函数の S も一瞬戸惑いそうな形をしているよね、そういや。
;; 筆記体風活字で表現されているのを見ただけで、Schwartz 先生が実際どう書いたのかは知らないけれど。

;; 何気なく使うけれど「筆写体」というのはなかなか歴史的な呼称だな、と思う。

1930 JST 追記

自分で書いておいてあとから気付いたけれども、いわゆる小文字は後世にそれこそ「筆写」などの実用のために、たぶんだいたい同じ時期につくられただろうものだから、似たようになるのは当然だよな、と。

[Re: これはまだ可愛い方ですよ (#2160116) from AC]

ぼくもむかし、一度だけ、何かの展示に、関係者から届いたメッセージとして、その人の自筆による、ドイツ文字の書簡が飾られていたのを見たことがあります。文面じたいは英語だったのですが、書きぶりを見ておやと思い、署名を見たらドイツ系の姓でした。それで納得したというより、むしろ、今でも用いる人がいるということに少しく感激したのをおぼえています。
もっとも、その手紙で判読できたのはその自署の部分だけでしたが。
ほんとうに、アセンダのない字はみんな鋸歯にしか見えません。

筆記体というのは、英語の、ネイティヴの人のでも読み難いことが多いですね。和文の行草や変体仮名は、少し訓練すれば意外なほど読めるものですが、欧文のは、単語として綴ったときの形に馴染んでいないとダメな気がします。

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[Re: 鋸歯の衝撃 (#2160202) from staygold]

康煕字典体しか知らない本邦の似而非右翼が、常用漢字にナイーヴな批判をぶつけるごとく、向こうの剃髪極右青年はこうした文字を好んで用いたり、あるいは新正書法を峻拒したりしているのでしょうかね。ヨーロッパの知的文化は長年ラテン語によって担われたでしょうから、ローマンな書きぶりや活字書体がまったくよそもの扱いだったこともないとは思うのですが。
もっとも、ルネサンスが地中海方面からもたらされたいっぽうで、印刷はなんてったってグーテンベルクですから、亀の子文字派にも言い分があるのは、それなりにもっともかも知れません。

ところで、フェニキア文字を端緒とするアルファベットでは、はやくに現在のブロック体の原形が確立され、筆記体は、ほぼそこからの派生である、というのが興味深いところです。
漢字のばあい、草書は隷書や篆書の影響を被っていて、今なお(少しく歪められているとはいえ)真なる書たる楷書とは直接関係しないので、まったく好対照です。「字の書きかた」のお手本帳の冒頭には必ず載っているこの事実は、行草をナイーヴに「くずし字」と表現する面白くない例が横行する現状、あまり理解されていないようですが。

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[Re: 興味深いです (#2160207) from ACs]

舞台設定が20年前だったりしたら全然おかしくないんだけど、

今だって 20 年後だっておかしくはありませんよ。世の中にはギリシア語やラテン語を読み書きできる高校生だっていたんですから。
;; 残念ながらボクのことではない。
むしろ、情報、知識というものがかつてなく安価に入手できる現在、決然たる意志もなくそれらを避けることのほうが不自然な気さえします。
否応なく物事を知ってしまえる、なんてことは、ネット以前では考えられませんでした。

携帯電話については、本編を確認していないので分かりません。そういえば「あの夏で待ってる」は徹底して避けてましたね。檸檬先輩がいろいろオーパーツを持っていた気がしないでもなかったけれど。

;; 一瞬、サブジェクトを「わたし、気になります」と見まがったのは秘密です。

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  • by staygold (23127) on 2012年05月25日 10時21分 (#2160202)
    大学でドイツ語履修したけど筆記体は記憶がない.参考になりました.
  • by Anonymous Coward on 2012年05月25日 3時30分 (#2160116)

    実際に見ると、ただののこぎりにしか見えません

  • by Anonymous Coward on 2012年05月25日 10時32分 (#2160207)

    > 今時の中高生は習わない筈だからつかうのはおかしい、みたいな議論が当然のように行われていて、

    そのアニメの高校生は「今時の」高校生だったのかな?w
    舞台設定が20年前だったりしたら全然おかしくないんだけど、

    • by Anonymous Coward

      でも携帯電話は平然と出てくるんだよきっと

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アレゲは一日にしてならず -- アレゲ見習い

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