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日記

live-gonの日記: 一人称小説 - IT観察

日記 by live-gon

私の友人からアイスバケツチャレンジの指名が来たのは2014年8月22日のことだった。ITmediaでは「頭から氷水」は「飽きちゃったので」 「100ドル寄附」を選んだサイバーエージェント藤田社長といった記事が話題になり、スラッシュドットジャパンでもビル・ゲイツ、ザッカーバーグ、孫正義も氷水をかぶるALS Ice Bucket Challengeというストーリーが出た頃だ。こちらのストーリーでも、後日談的なカナダの科学者、アイスバケット・チャレンジで氷水の代わりに液体窒素をかぶるというストーリーでも同様のコメントが付いているが、売名行為だの同調圧力だのチェインメールだのと批判も多い。

そういった指摘は別に間違いではない。私が指名されて戸惑ったのは、友人もこれが良い要素だけではないことを知っているはずであり、また、私もそのくらいの分別があり、友人も私がそういう分別のある人間であることを知っていることを確信していることであり、つまり、指名した意図が分からない点であった。

私に ALS について認知させる意図でないことは明白だ。お互い、どんなニュースサイトを巡回しているかはなんとなく知ってるし、このくらいの話題性があれば相手もこのニュースを見ただろうくらいのことは予想できる。氷水を被らせようというつもりもないだろうし、寄付させようというつもりもないだろう。次に誰を指名するかといった下衆な好奇心でもなさそうだ。同調圧力も無い。お互い、そういう湿度の高い関係ではない。指名を無視してもそこで関係が壊れるということはないだろう。

しがらみの無い、フラットな状態で指名されたといっていいだろう。これがちょっとでも立場が上だったり下だったりする人物からの指名だとまたややこしくなっていただろうが、そうではなかった。

色々ひっくるめて、これはネタフリだと判断した。学生の悪ノリの類だ。どういうふうに氷水を被るのか、あるいは被らないのか、誰をどのように指名するのか、指名しないのか、そういった一切合切を含めたリアクションを求めるためのフリである。

友人は氷水を被っていた。風呂場で洗面器にそれを作って、「うー、寒い!」などと被ったあとに悲鳴をあげるバストショットの動画をアップしていた。上半身しか映ってないがたぶん全裸だろう。再生数は100くらい。誰が見たのか何人かは確実に当てられるが、話題に乗っかってまったく知らない人も視聴してこその再生数だ。動画についたコメントにも賛否両方があったが、明らかに知人と分かるものがあり、内輪ウケの雰囲気が強かった。私もその内輪に含まれる。

動画を投稿するのもやや抵抗があった。私がそういうことをするとは思われてないだろうから、「意外に乗ってきたな」って反応はあるかもしれない。だがそれも普通といえば普通である。それに意外とやるかもしれないくらいには思われてる可能性もあるので、めんどくさいから安易に被って済ませたなって反応になるかもしれない。

なんだかとにかくめんどくさい。嫌悪感とか友人への怒りや憎しみまでは湧かない。そこまで――なんというか――嫌がってもいない。義務も義理もないのだから、楽しさも無いわけではないのだ。

ヒネってもヒネらなくても傑作にはなりそうにないし、これに一週間もかけて反応するのもイケてない。結局私がどうしたかというと、普通に寄付をする動画を投稿した。批判的なことを言うのは野暮なので、そこには触れず、ただ寄付をしてチェーンを止めた。真似をしたわけではないが上で紹介したように藤田社長と同じことをしたことになる。オリジナリティのある反応をするのは難しい。すでに私が受け取った頃には全パターンが世界中に出てしまっていただろう。

私が思うに、このキャンペーン手法に対する批判や批判への反論のコメントは、あまり意味がない。客観的にどういうものであるかは自明であるし、当事者にとってもそれは百も承知のことだ。これは個人的なものなのだ。自分が指名されたらどうするか、その個々の反応に意味がある。ノリのいい人であっても、このキャンペーンに否定的な人であっても、実際に指名されたときにどう反応するか。その個人的な回答が聞きたい。被るのか、無視するのか、指名してきた相手を非難するのか、次に指名をするのか、誰を指名するのか。当事者になったらその人はどうするか。それだけの話だろう。

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計算機科学者とは、壊れていないものを修理する人々のことである

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