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locateの日記: 佐藤幹夫『自閉症裁判』を読了

日記 by locate

著者の佐藤幹夫は国学院大学文学部卒のフリージャーナリスト。この本はレッサーパンダ帽男による浅草女子短大生殺人事件の裁判について書かれたもの。

被告Yは身長180cmほどもある大男でありながら、レッサーパンダの帽子をかぶって街を歩くなど変わったところがあった。その男が2001年5月に浅草で、当時19歳の女子短大生O・Mさんを路地に連れ込み、包丁で何度も刺して殺害した。その特異な風貌から数日後に逮捕される。

この裁判では、弁護側は被告Yは自閉症だとし,被告は被害者をガールフレンドにしたいと思い近づいたが、女性から拒絶されたことからパニックに陥ってしまい、殺害に至ったと主張。検察は、被告は軽度の知的障害があるが責任能力はあり、被害者を殺してでも自分のものにしたいと思って殺害したと主張した。

この裁判の問題点は、検察、警察側は被告の知的障害を全く考慮せず、警察の筋書き通りになるような自供を強要していること。警察の筋書きを否定するような目撃証言もあるにもかかわらず裁判官は証拠採用せず、検察のストーリーに沿った判決を出した事。

殺人という結果は重大なので、被告がそれなりの重罰に処される事は仕方ないとしても、裁判を通して真相を解明しようとする努力がなされていない。これでは知的障害者に対する偏見(例えば知的障害者は危険人物なので隔離すべしなど)が助長されるし、被告の更正または再犯防止のために何をすべきかについての議論が進まない、というのが本書の主張かな。

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UNIXはただ死んだだけでなく、本当にひどい臭いを放ち始めている -- あるソフトウェアエンジニア

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