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masakunの日記: 今回の桜島の噴火で川内原発が止まるべきだと本気で思うなら、小学校からやり直してね 4
日刊ゲンダイに頭の悪そうな記者が書いた「噴火警戒レベル4 再稼働「川内原発」に桜島の火砕流が届く日」が載っていた。記者の思いでは、どうしても桜島の火砕流が届くということにしたいようだ。
そこで心配になってくるのが、11日に再稼働した川内原発1号機だ。桜島からはわずか52キロしか離れていないのだ。九州電力は「現時点で、影響があるとは考えていない」とした上で、「特別な態勢も取っていない」とノンビリと構えているが、果たして大丈夫なのか。
俺が答えてやるよw
そもそも今まで何度も桜島は噴火や爆発をしていたが、311の前に川内原発が火山活動の影響で停止したことは一度もないのだ(あったらぜひご教授いただきたい)。
たとえば過去の桜島では、2000年10月7日にかなりの被害を出したことがある。日本火山学会第8回公開講座「桜島火山の最近の活動状況」によると、
2000年1年間で約150回の爆発が発生し,約270万トンの降灰がありました.また,10月7日のやや強い爆発では,1時間の内に30~40万トンの火山灰を噴き出し,鹿児島市内中心部を降灰が襲いました.桜島港近くでは1~3cmの噴石が多数落下して,車のガラスが破損する被害がありました.
さてこのとき川内原発はどうだったのか。川内1号機は第13回定期検査中(8月7日~11月2日)であったが、2号機は稼働中だった。もちろん噴火要因のトラブルで原子炉停止はない。
桜島の噴火について九州電力はどう考えているのか、「川内原子力発電所 火山影響評価について」をみると、こうある。過去の桜島最大の火砕流「桜島薩摩S2aベースサージ」の最大到達距離が約13km。よって「火砕流が敷地に到達することはないと考えられる」(52頁)。火山灰については、「敷地への影響が最も大きい桜島における約12,800年前の「桜島薩摩噴火」による火山灰等を想定した」。鹿児島市に100cm積もったこの噴火で、当時の風向は現在の薩摩川内方へ向かっていたと思われるが、火山灰は残っていない(53頁)。
さてゲンダイの記事にはこんな記述もある。
川内原発については、以前からその“危険性”は指摘されてきた。2013年に毎日新聞が火山学者に行ったアンケートでは、「巨大噴火の被害を受けるリスクがある原発」として、50人中29人が「川内」を挙げている。九電が何を根拠に「影響なし」としているのかわからないが、噴火の規模が大きければ、影響は避けられないだろう。
「九電が何を根拠に「影響なし」としているのかわからない」
ブロガーじゃあるまいし、プロの物書きが平気でこんなことを書くのか。今時ネットも使いこなせないアホのライターなのだろう。もともと規制委と対立することの多い日本火山学会なり火山学者に聞いたアンケートだし、九州電力がどういう根拠で「影響なし」としたかは、事象の発生確率をどうとらえるかという認識の違いでしかない。
「川内原子力発電所 火山影響評価について」の11頁から、カルデラ噴火の評価方法が説明されており、南部九州におけるカルデラについての概要は以下のとおり。
○鹿児島地溝においては、約60万年前以降に破局的噴火が複数回発生している。
○○鬼界を含まない鹿児島地溝における破局的噴火の活動間隔は約9万年であり、当該地域における最新の破局的噴火は約3.0万年前である。
○鬼界を含む鹿児島地溝における破局的噴火の活動間隔は約6万年であり、当該地域における最新の破局的噴火は約0.7万年前である。
○鹿児島地溝については、鬼界を含む、含まないに関わらず、破局的噴火の間隔は、最新の破局的噴火からの経過時間に比べて十分長く、運用期間中における破局的噴火の可能性は十分低いと考えられる。
もちろん個々のカルデラについての詳しい説明があるので、興味のある方はどうぞ。
さてこれについて原発反対派の静岡大学防災総合センターの小山真人教授はこう語っている(反原発雑誌岩波科学6月特集)。
川内原発付近に実際に火砕流を到達させたカルデラ火山は、姶良、阿多、加久藤、小林の4火山です。10火山中の4火山が川内原発付近に火砕流を到達させる能力があるのですから、今後1万年間に川内原発に火砕流が到達する確率は40%程度と思われます(九州電力と同様に加久藤と小林を同一火山とみなせば30%程度)。今後100年間に言い換えれば0.3%~0.4%になります。
しかしながら、論説で詳しく述べたように、これはあくまで実績であって、実際には巨大噴火の未遂事件が桁違いの頻度で起きてきたと考えられます。(略)よって、桜島の次の大噴火が、VEI5規模にとどまらずに姶良カルデラの VEI6~7の巨大噴火にまで発展する可能性を、常に念頭に置く必要があります。
とりあえず政府を動かすためにも、小山先生には巨大噴火の未遂事件の仮説の研究でも続けてもらいましょうか。まあでも発展する可能性を「念頭に置く必要」としか述べていないんだわ。それが10年後なのか百年後なのか一切説明していない。
それでもなお今の桜島の火山活動が破局的噴火につながると思うなら、破局的噴火のないところへ逃げたほうがいい。できれば日本の外だが、どこがいいのかは見当もつかない。好きなところへ行けばよい。ついでに破局的噴火について学んでほしい。よく反対派は「破局的噴火による原発事故は九州の復興の妨げになる」という主張を展開しているが、破局的噴火と桜島の通常の噴火を取り違えていないかと思わずにいられない。火山学者はその辺の心得があって当然だが、一般人にはご都合主義者が多い(九州電力のことを悪く言えない)。
【8/18 23:00追記】余談だが、「桜島昭和火口における噴火活動と地球化学的観測研究」によると、火山灰水溶性成分とSO2放出量を測定することで、ある程度今まで起こった噴火活動の変化を推し量ることができるようだ。そしてこれにより、「2010年から2013年までは約6ヶ月に一度のペースでマグマの貫入・昭和火口の地下浅部への上昇・顕著な脱ガス」があり、2014年は「この時期に貫入したマグマは地下浅部まで上昇せず,貫入量が少なかった可能性がある。この点は地盤変動など,地球物理学観測データとの比較検討によって詳細が明らかになるものと考えられる」と結ばれている。昨日起きたマグマ貫入も地殻変動量からみて少ない(でもまだ計算してない)という報告があったと思うが、火山灰の噴出によってその現象が明らかになるのであれば、噴火は早く起きてほしいと願わざるを得ない。
桜島島内での地殻変動観測によると、山体が膨張した状態が継続しています。
本日実施した赤外熱映像装置による現地調査では、山頂付近は雲のため観測できませんでした。東側山麓から南側山麓にかけては、特段の変化は認められませんでした。
桜島では規模の大きな噴火が発生する可能性が高まっています。今後の火山活動に厳重な警戒をしてください。
ちなみに気象庁が述べる「規模」は「被害の規模」のこと。報道関係者が間違って「噴火の規模」と勘違いするが、そういうことではない。
【8/18 23:47追記】さっき書きかけた記事が Windows10 のぬるっとしたスクロールのせいで誤タッチを引き起こして消えた。そこで今回再度手直しをいれ結論をソフトタッチにしてみた(当社比)。
【関連記事】川内原発にカルデラ噴火のリスクはあるのか
【関連記事】避難なき反原発も原発再稼働も、火山予知に依存している点で同じ穴のムジナ
灰すらあまり飛んでこない (スコア:1)
実家が川内原発より桜島に近い距離にありますが、
途中に山があるので灰すらあまり飛んでこないですね。
川内原発に届くくらいの火砕流なら実家にも届くわけですが、
届くわけねーよ、って断言できます。
まあストーリーでも言われてますが、
火砕流が実家まで届くような噴火が起こったら、それこそ九州全滅ですね。
九州全滅どころか、日本経済は終了です (スコア:1)
表 [srad.jp]にも書きましたが、姶良火山でプリニー式噴火が起これば、高さ50kmの噴煙柱から崩落するイメージで薩摩川内市にも火砕流は到達可能です。
防災基礎講座 災害予測編 [bosai.go.jp]
で、この恐ろしい火砕流の後、何年も火山灰がもっと広範囲に降るのですけどね。そんな状態で日本が経済復興ができるとはちょっと想像つきませんね。
モデレータは基本役立たずなの気にしてないよ
日本どころじゃないような (スコア:2)
成層圏界面近くまで上がってしまった噴煙によるダメージは
地球規模でそれなりに覚悟が必要だと思いますしね。
それこそ日本にちかい朝鮮半島だけじゃすまない気がします。
Re:日本どころじゃないような (スコア:1)
カルデラ噴火1発からみれば、東日本大震災の津波なんてかわいいもの。通常の噴火でも何ヵ月も影響が続くのがざらなのに、破局噴火の噴出量だと何年続くのだろう。氷河期みたいな状況に一変すれば、さらに地球規模の気象災害が起きても不思議はない。
この辺り石黒さんの小説以外でシミュレーションしている科学雑誌があれば(ニュートンの別冊にありそうだが、執筆陣に想像力が欠如しているのか、2010年の大地震特集で東日本大震災クラスの示唆はなかったので、期待していない)
モデレータは基本役立たずなの気にしてないよ