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日記

mociの日記: 「部隊の3割の損害は全滅」はボードのウォーゲーム由来か

日記 by moci

ネットで広まっている「部隊の3割の損害は全滅」について」にあったコメントについて、Twitterはしていないのでここでひっそりと反応。

これ昔のボードSLGあたりから来てるんじゃないかなぁ。ツクダとかアドテクノスとか。佐藤大輔氏などがこれを強調していたような気がするのでそのあたりからかもしれません。

「昔のボードSLG」そのものは、駒を裏返して戦力の低下を表したり、最終的に取り除いたりするだけですので、具体的な兵員数をプレイヤーが意識することはまずありません。ですので、ゲームそのものが由来ということはないでしょう。

しかしながら「ユニットが取り除かれた状態は全ての将兵が死傷したことを表しているわけではありません」といううんちくは当時から見聞きしていましたから、「昔のボードSLG『あたり』」というのはあるかもしれません。単に専門誌に何度か書かれたという程度でないことは明らかなので、怪しそうな関連書籍としてジェームズ・F・ダニガンの当時訳されていた著書を当たったところ、「戦争のテクノロジー」のp.343-344に次の記述がありました。

戦闘による損失のパターン

烈しい戦闘で一日たち、あるいは軽い戦闘で数日すぎたあと、普通は一〇%の戦闘による損失がでるものだ。そしてこの時点で歩兵と砲兵の損害が他の部隊のそれよりも大きいことの影響が表面化してくる。

三〇%の損失で、だいたいどの師団でも深刻な分解の兆候をしめしだす。そしてこれが師団を戦場から引き揚げて戦闘部門を再建するもっともよい時機なのだ。このポイントをこえて戦闘をつづけることは、師団の戦闘力を文字どおり一掃してしまうことになりかねない。将来発生するかもしれない戦争では、師団がごくあたりまえのルーチンとして、三〇%ラインをこえることを要求されるといわれている。

いったん五〇%をこえてしまうと、残っているのは補給部隊だけということになる。だいたいの場合、補給の支援部隊はあまりやる気もないままに歩兵として代役を務めている。乗組員のすべてではないとしても、大半の戦車は行動不能に陥っている。無傷なのは砲兵だけであるが、砲兵を保護する歩兵部隊もいないとなれば、砲兵もまもなく姿を消すであろう。五〇%をこえて戦うことは師団の完全な破壊を早急にもたらす。補給部隊は戦闘力としては非能率なので、簡単に殺されてしまう。彼らの技術者としての技倆は簡単に置きかえることのできるものではない。有力な歩兵部隊が前線にいない場合には、砲兵隊、補給隊もすぐに蹂躙されてしまうだろう。それらの装備が破壊されたとき、師団は存在しなくなる。

(後略)

冷戦当時の「現代戦」について書かれた本ですので、もちろんその当時(原書は1982年刊)での話です。ダニガンは当時のウォーゲーマーにとって――彼が創設し潰れたゲームメーカーSPIとともに、ホビージャパンによって――神格化された存在でしたから、もしかしたらこれが出所なのかもしれませんね。

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UNIXはただ死んだだけでなく、本当にひどい臭いを放ち始めている -- あるソフトウェアエンジニア

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