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okkyの日記: 伸びるエンジニアについて 1

日記 by okky

伸びるエンジニアについて という日記を見た。面白かったので私の知っている条件を書いてみる。

  • 自腹で技術書を買っていること
    これは私も同意する。
    別に会社の金で買っても構わないが、会社の金で買うという事は、 資料を欲しいと思った瞬間に入手しその内容を一気に理解する、 という瞬発力に欠けるということだ。
    あと、技術書と言うのははっきり言って暗記するものではない。 覚えられないのだから手元においておく必要があるのだが、 移動などで本と切り離される可能性は高い。
    結果、本は自分で買ったほうが後々有利である。
    例外は「入門書」と言われるものと、 ごく一過性の技術に関するもの。 入門書はどうせ一度しか読まないし、 読み終わって後輩が必要になったらそいつに押し付けるものだ。 それは会社のものにしておいたほうが良い。 一過性の技術は本と離別する前に技術が廃れるし、 そんな技術を身に付けてもしょうがない事の方が多い。
  • 原理原則を知りたがる人
    先のページ には全体を理解しようとしていることとあるが、 多分同じことだと思う。
    そもそも大抵の「実装」はさほど多くの基本原理を 使ってなどいないものが多い。 従って、そこにある基本原理を正しく理解すれば、 末節部分はともかく、全体像が最初に把握できる。 また、そこで得た知識を別の実装に生かすこともできる。
    原理原則がわかれば、当然そこにある利点・弱点も把握できる。 結果、逃げ出すべきプロジェクトも正しくタイミングも含めて 理解できるように… まぁ、それはともかく。

    実は世の中、原理原則を正しく把握すれば、 単純なものである。単純だから解決も単純とはならないのも、 原理原則を正しく把握しないと 理解できない事実だったりもする。 カオス理論がいかに厄介な存在なのか理解できないと、 世の中は複雑なものだと勘違いする。これは違う。 世の中は複雑なのではない。煩雑なのだ。
    ある原理原則に基づいた解決策があるならば、 それは全く無関係に見える別の世界でも応用が利く。 これを1を聞いて10を知ると言う。
  • 経験は関係ない
    実はこの条件は 先のページ と意見が衝突する。私は経験は関係ない派である。
    本来脳というのは共通項目抽出機だ。 つまり「あれも車」「これも車」という事実から、 「車とは何か」という抽象概念を自立導出する能力がある、 というのが脳の最大の特徴である。
    しかし、現実には多くのプロジェクトを通じ 何も学習しない人は多い。 だから、Brooksの Mythical ManMonth などという本が書かれて 25周年記念をしているのに、 それどころか孫子の兵法まで「逐次投入愚の骨頂」と 書かれているのに、人月計算と逐次投入をやれば問題は解決する というプロジェクトマネージャばかりになる。
    これは結局どういうことかと言うと、 プロジェクトから共通項目を引き出せるほど 人は多くのプロジェクトを経験できない と言うことだ。100のプロジェクトを経験すれば 馬鹿にでも導出できるかもしれない基本原理も、 100のプロジェクトを経験できなければ導出できるわけはない。 3つのプロジェクトを経験しただけで 同じ基本原理が導出できるのは天才だけだろう。
    結局、経験したプロジェクトの多寡は影響しない。というかできない。
    影響して見えるのは、プロジェクトの多寡ではなく、 そこからいかに多くを学び、それを表現できるかである。 学ぶことが少なかったプロジェクトについて言及できることは あまりない。だから学習能力の低い人はプロジェクトをあまり経験していない ように見える。でも、そんなことはない。 その人はプロジェクトを経験していないのではなく、 プロジェクトから学んでいないだけだ。
  • 天才は天才だけが知る/天災は天災だけが知る
    優れた人材が見たければ、 自分が優れた人材にならなくてはいけない。 過去に常識すら学習していない事を胸を張るような馬鹿たれには 天才は発見できない。 そういう存在が発見できるのは天災だけである。
    逆に天才には天才とそれ以外としか、 天災には天災とそれ以外としか、 人の区別はつかない。 もちろん、ある程度は分類できるだろうが、 自分と異なる種類の人間であるほど「予想外の」 被害が出やすくなる。 だからある人材が欲しければ、まず自分がそれだけの能力を 身に付けなくてはいけない。
    逆に、自分が理解できない天才は、天災に見える。 なにしろそういう人ほど自分の意見に逆らうのだ。 そして、そちらの意見が正しかったと知った頃には、 その意見の自明さははっきりしており、
    「なぜもっと判りやすく説明してくれなかったのか」
    という思いだけが残る。旧約聖書にある エリヤの悲劇は日常的な問題である。
  • 伸びるエンジニアはそこにあるものである
    つまり、育てるものではない。 彼らは人生のきわめて初期の段階で脳を使う正しい方法を 身に付けた存在なのだ。
    多少ならば、例えば大学入試程度ならば、 脳の使い方が判らなくても誤魔化す事はできる。 しかし、何十年もの間誤魔化す事はできない。
    従って、伸びるエンジニアは最初から伸びる存在である。 教育でどうにかすることはできない。 伸びない奴は伸びないのだ。 伸びる奴が欲しければ待っていても無駄である。 新卒採用でバルク入社させてもほとんど存在しない。 一人ひとり、丁寧に捜し歩く以外、見つける術はない。
    しかして人事部にそれだけ人を見る人間を割り当てている 企業はほとんどない。 昔は割り当ててたと言う所も、今は昔でしかない。 これで人材がない、というのは当たり前の話だ。
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私はプログラマです。1040 formに私の職業としてそう書いています -- Ken Thompson

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