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日記

phasonの日記: 無限速度の量子相間,もしくは超光速通信 2

日記 by phason

時間が無くて読めていないので概要だけ.

"Quantum non-locality based on finite-speed causal influences leads to superluminal signalling"
J.-D. Bancal et al., Nature Phys., in press (2012).

量子論的にもつれた2粒子のうち片方を測定すると,もう一方の粒子の状態も「瞬時に」決定される.量子論の持つこの奇妙な非局所性は長いこと研究対象となっているが,その存在自体はベル測定により確実なものとなっている.
さてこういった現象を知ると,「超光速で状態の変化が伝わるのなら,それを使って超光速通信が可能になるのでは?」と思ってしまうのだが,世の中そうは甘くない.例えば光の偏光方向が縦か横か,という状態が2粒子間で混合していたとしよう(Aが縦ならBは横,Aが横ならBは縦).粒子Bをそのまま測定すると,1/2の確率でランダムに縦 or 横という結果が得られる.では最初に粒子Aを測定したら?粒子Aの状態が横と決まればBもその「瞬間」に縦と決まるが,Bを測定している人にとってはBが「ランダムな状態から,測定したことによって縦と決まった」のか,「先にAが測定されており,その段階で縦に決まった」のか区別出来ないのだ.このためこの「超光速での相間」を使って有意な情報を送ることは出来ない……とされている.

さて,本論文が扱っているのはこの部分である.
そもそも,先ほどから何度も出てきている「瞬時」とは,どのぐらい瞬時なのだろうか?これを粒子間で状態変化が伝わる速度と捉えたとき,その速度=瞬時の程度,は「光より十分速いが有限速度(c < v < ∞)」なのか,それとも文字通り「瞬時=速度無限大(v = ∞)」なのだろうか?
ここから先はまだ読む時間が無くて読めていないのだが,著者らはこのあたりをつつき回した結果,一つの面白い結論を得たようだ.その結論とは,「この超光速の相間がどんなに速かろうと無限速度で無い限りは,その状態変化を使って超光速での信号伝達が可能になってしまう.超光速通信を避けるためには,状態変化の伝わる速度は無限大で無ければならない」というものだそうだ.なお,これの実証実験は現在の科学技術でも可能っぽい.

まあ順当に考えるならば,超光速での情報伝達と相対論を結びつけた際に起こる因果律の破綻を避けるためにv = ∞なのだろう.これが有限で超光速通信が出来てしまったらそっちの方が面白いのだが,まあ無いのだろうな.

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by funakichi (28497) on 2012年11月18日 13時13分 (#2274422)
    多世界解釈的なイメージでは、観測によってAが縦を観測する世界が選択されたら、Bは「初めから」横である…という風に日頃思っております。
    Aで縦を観測してBで横を観測することになる世界と、Aで横を観測してBで縦を観測することになる世界が混合してる状態が、観測によってどちらかに確定する…というようなイメージ。
    そこには、通信の速度を問題にする余地ははじめからなく、多世界の時空連続体の幾何学の問題にすぎない…。
    さらに言えば、もし多世界が現実に存在するなら、Aでの観測とは全く独立・無関係ににBでの観測が行われるのであり、Bでの観測は全くランダムに起こり、Bの観測後にBに対して知らされるA’の結果が相関しているだけである…。(一般にAとA'は世界が異なる)
  • by Anonymous Coward on 2012年11月09日 21時09分 (#2269254)

    結局問題は同時刻の相対性ですよね
    本文読めないからあれですが

    でもどの慣性系にとっての無限速度…?(同時刻面に一瞬で伝わるってことですよね?)

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