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xapの日記: 鋳鉄とクレーンと放射能の時代(5)

日記 by xap

前回の続き。

駒田の意見に賛成するのもシャクなのだが、まあ、ごもっともな意見だ。
何故かは判らないが、駒田に言われるまで「他にも寮のある会社がある」という現実に全く気付いていなかった。(坊やだからさ)
特に転職活動するわけでもなく、ぼんやりと今の仕事は違うなーと考えているだけだったので、まあ、当然かもしれんが。

兎に角、その一件依頼「転職」というものが急に現実味を帯びだした。

一方、仕事の方も配属されてから3ヶ月が経ち、簡単なものではあったが工場でのメンテナンス担当箇所や他の役割等も与えられ、徐々に職場での俺の居場所のようなものが確立していった。
そういった事は、認めて貰えているようで、とても嬉しい反面、もし辞めたいと思っている事が知れたら、なんと言われるかと思うと、やはり気持ちが沈んだ。
そんな感情もあってか、なんとなく職場の人と話をするのを避け、人が事務所に集まる昼時なんかは、そそくさと飯を食っては一人で湾に出かけクラゲを突っつく日々が続いた。

そんな状態を見てか、ある日、職場で比較的仲の良かった廣井(仮称)先輩が飲みにでも行こうぜと声をかけてきた。
居酒屋で暫く仕事の話等をした後、俺は思い切って転職を考えている事を話した。

元々、コンピュータとかが好きで、高校もそういう学科に入った事。
仕事でCGを描いたり、プログラミングしたりしてみたいと考えている事。
でも今の職場も良い人ばかりだし、仕事も少しづつ覚えてこれているので、なかなか辞める踏ん切りがつかない事。

話し終えると、廣井先輩は「お前の作ったCGとか、プログラム見してみろよ。」と言って来た。
かなりこっ恥ずかしかったが、ここで引くわけにも行かない(何が?)ので「いいっスよ」と廣井先輩を寮の自分の部屋まで案内し、MSXで描いたCGや、今まで作ったゲームなんかを見せた。

「これ、お前1人で作ったの?」とか「これどうやって描くの?」とか「音楽とか鳴ったら本物のゲームみたいだな」(SEは付いていたが、BGMの無いシューティングゲームだった;;)とか言いつつ一通り眺めた先輩は「俺、こういうコンピュータとかの事詳しくないんだけどさ」と切り出した。
「持ってってみたら?ゲームの会社とかに。もし駄目でも、この会社で仕事してんだから食えなくなることはねーよ。後の事は転職できそうになったら考えればいーんじゃねーの?」

楽天的だが至極もっともである。(つーか、普通は皆そうする。)

なんとなくフンギリがついた俺は、早速、転職情報誌を買い込み、何件かの会社を選んだ。
高校を卒業して、あと数ヶ月で1年が経とうとしていた俺は、この段階で急にプログラミングで売り込む自信が無くなり、グラフィッカーを募集している会社を選んでいた。
(今考えたら、顔から火が出て0.2秒で炭化しそうなくらい恥ずかしい。タイムマシンがあったら、そんな絵を人様に見せるのは辞めろと忠告しに行きたい。)

が、結局は寮が無かったり初心者は採っていなかったりで、実際に面接しましょうとなったのは1社だけだった。

杉並にある、その会社はパチンコやパチスロ、ゲーセンのメダルゲームコーナーにあるような筐体モノのメダルゲームや麻雀やポーカー等のビデオゲーム、更にはラスベガスで稼動するような本格的なスロットマシーンなんかを企画・製造しているところだった。

面接当日、慣れないスーツを着込み、右手右足が同時に出て歩くような典型的な緊張具合で、その会社に到着。

そこには、地上4F地下1Fの自社ビルが、ずーんと立ち、駐車場には見た事も無い外車や黒塗りベンツが鎮座していた。

頭の中を「ヤ」のつく職業の名前がよぎるが、思考回路をぶった切り受付に向かう。
「き、今日、こ、こ、こちらで面接の約束をさせていただきました、xapと申しますが・・・・」
面白いくらい噛み噛みで受け付けのお姉さんに告げると、早速3Fの打ち合わせルームに案内された。

暫し待った後、「やあ、お待たせ。」とやたらに低い声で現れたのは、口髭を生やし、サングラスをかけた40歳中後半の男性だった。
丁度、アルフィーの髭の人が年取って、更に眼光が鋭くなったような感じか?

とにかく、その人を見た瞬間、さっき遮断したハズの思考回路が急遽復活。頭の中が「ヤ」の文字とエマージェンシーコールで埋め尽くされる。

嫌な汗が出てきた。

また、続きます。(;´Д`)ウヘェ
(たぶん、次で終わります。)

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