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yasuokaの日記: 電話機の「⚹」と「#」

日記 by yasuoka

電話機の右下にある「#」は「NUMBER SIGN」なのか「MUSIC SHARP SIGN」なのか、という質問をもらった。歴史的に見れば、もちろん「NUMBER SIGN」だ。ただ、それを言うなら、左下の「⚹」は、どう見ても「SEXTILE」に見えるが、歴史的には「ASTERISK」ということになる。少し歴史を紐解いてみよう。

1961年にAT&TがTouch-Toneを実験しはじめた際には、電話のボタンは10個しかなかった(『Bell Laboratories Record』1961年9月号pp.312-316)。これにボタンを2つ追加するにあたり、Bell Telephone Laboratoriesは、とりあえず「☆」と「◇」を割り当てた。しかし、電話をコンピュータの端末として用いるのなら、これらはASCIIから選んだ方がよいのではないか、という議論となり、「☆」と「◇」に比較的類似した「⚹」と「#」になったわけである。非常に不幸なことに、彼らが参照したのは1965年版ASCIIのドラフトであり、そこでは2/10が「*」ではなく、90度回転した「⚹」で印刷されていた(『Communications of ACM』1965年4月号p.207)。この結果、電話機には「⚹」と「#」が、「ASTERISK」と「NUMBER SIGN」として搭載されることになったわけである。

ちなみに電電公社では、元々これら2つのボタンは、赤色の「●」と緑色の「◉」だった(『NEC日本電気技報』1970年7月号表紙)。電電公社は、遅くとも1971年7月には、AT&Tと同じ「⚹」と「#」にしているが、過去との互換性を考慮して、それぞれを赤色と緑色に塗りわけている。その意味では、日本の電話の「#」は、「シャープ」とか「いげた」ではなく、「緑色のボタン」とか「青いボタン」とか呼ぶのが、あるいは正しいのかもしれない。

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未知のハックに一心不乱に取り組んだ結果、私は自然の法則を変えてしまった -- あるハッカー

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