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数学

yasuokaの日記: デカルト『幾何学』とフランス語の文字頻度

日記 by yasuoka

「モールス符号と英語の文字頻度」の読者から、『アルファベット24文字目「X」が謎を意味するようになった裏側』(Suzie、2015年7月2日)を読んでみてほしい、との御連絡をいただいた。読んでみたのだが、デカルトの『幾何学』(LA GEOMETRIE, Ian Maire, 1637年)がフランス語で書かれていることを知らないらしく、かなりハチャメチャな内容だった。

デカルトが『幾何学』の原稿を持っていったところ、出版社(印刷業者)から「YやZから始まる単語は少なくない。でもXから始まる単語はあまりないから、活字が余っている。だからXを未知数の代表にしよう」と提案され、それがきっかけでXが“未知の代表”とされてしまったのです。

デカルトの『幾何学』をパラパラとめくってもらえばわかるが、未知数として使われているのはzが多く、それに次いでyとxとなっていて、必ずしもxが未知数の代表というわけではない。というかフランス語では、「deux」とか「aux」とかxを含む単語はそこそこ多くて、「活字が余っている」とは考えにくい。ちなみにアルファベット26字のうち、フランス語で最も頻度が低いのはkであり、実際『幾何学』原著での文字頻度もそうなっている。また、『幾何学』原著はライデンで出版されており、そもそもフランス語の文字頻度が活字数に影響するとは思えない。

当時のフランス代数学では、母音(aやe)を未知数に、子音(bやd)を既知数(定数)に用いるのが主流(ヴィエトなど)だったようだ。これに対しデカルトは、既知数にa,b,cを、未知数にz,y,xを用いており、まあ、それがデカルトにとって哲学的だったのだろう。一方、xを「未知数の代表」に押し上げたのは、私(安岡孝一)の睨んだところではライプニッツではないかと思われる。ただし、デカルトの記法がライプニッツにどう承継され、あるいは承継されなかったかを含め、もう少し研究を進める必要があるだろう。

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