yasuokaの日記: 符号、音響又は影像
電気通信事業法(昭和59年12月25日法律第86号)第2条第1号において「電気通信」は、以下のように定義されている。
電気通信 有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。
この「符号、音響又は影像」という書きぶりは、有線電気通信法を引き継いだものだが、その意味するところは微妙に異なっている(cf.田中正人『解説電気通信事業法・放送法』オーム社、昭和60年4月)。立法当時、音声ではPARCORやLSP、白黒画像ではG3FAXなどの圧縮符号化が実用化されており、さらなる符号化技術が研究されていた。新たな符号化技術が現れれば、同じ音声や画像であっても、異なる符号に成りうるのは当然である。そこで「符号」から「音響」と「影像」を切り離す書きぶりを踏襲し、符号化された音声や画像ではなく、音声や画像そのものを「通信」するという書きぶりにしておいたわけである。
この書きぶりのおかげで、音声に関しては、CELPなどの圧縮符号化が次々に現れても、郵政省令(のちに総務省令)電気通信事業法施行規則の改正で対応できた。自動車電話と携帯電話の間で、符号化や帯域など異なっているにもかかわらず、ちゃんと音声通信できたわけである。一方で、画像に関しては、DCTやDWTなどの圧縮符号化が現れても、電気通信事業法施行規則がそれに対応しきれていない。いまだに電気通信事業法施行規則は、「符号」と「影像」をいっしょくたに「データ伝送」にブチ込んでしまったままになっている。
この結果、「影像」についておこなうべき法律論を、あえて「符号化された画像」と混同する議論が横行していて、私(安岡孝一)としては閉口する限りである。画像に対する「通信の最適化」が問題をはらんでいるのは理解できるが、それを「通信の秘密」(日本国憲法第21条第2項)に持ち込む議論は非常にスジが悪いし、電気通信事業法が「影像」を「符号」から切り離しているという現実とも合致しない。まあ、電気通信事業法施行規則を、さっさと改正すべきなのかなぁ。
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