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日記

yasuokaの日記: ストーカー規制法 SNSは対象外?

日記 by yasuoka

ストーカー規制法がSNSを対象外としている、という誤解が広まっている。一例として、昨日(5月25日)の東京新聞夕刊から「ストーカー規制法 SNSは対象外」という記事を見てみよう。

「あなたに見下されたこと一生忘れないから」「ふざけんなマジで あんたにスゲー怒ってる」。岩埼容疑者は一月十八日に冨田さんのツイッターに書き込みを始め、四月二十八日までの約三カ月間で約四百回に及んだ。最初は好意的な内容だったが、プレゼントを送り返されたことに腹を立てるなど、次第に攻撃的になっていった。

(中略)

ストーカー規制法は当初、執拗な電話やファクス送信などを取り締まり対象と規定。神奈川県逗子市で二〇一二年、女性が元交際相手の男に刺殺された事件では、事前に男から女性に大量のメールが届いたが、規制法にメールの規定が無く、取り締まれなかった。事件後の法改正でメールが規制対象に加わったが、SNSは依然、法の網の外だ。

ストーカー規制法第二条第五号のことを言っているのだと思うが、だとすると、この記者(土門哲雄、北川成史、唐沢裕亮)は条文を読み間違えている。第二条を見てみよう。

第二条 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること。
六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと。

読めばわかるとおり、第二条第五号の元々の立法意図は「無言電話」であり、それに「連続電話」が追加されたものだ。ここにSNSを入れたところで、本件に適用できるかどうかは、「約三カ月間で約四百回」すなわち1日平均4回では必ずしも判然としない。というか、第五号それ以前に、第二条には第二号や第三号や第四号があって、これらは手段を限定していないので、SNSなども対象となるのは明らかだ。「次第に攻撃的になっていった」のが本当に事実なら、そもそも第四号が適用されうる。第五号だけを読んで「SNSは依然、法の網の外」などと言い出すのは、法律の条文をちゃんと読んでいない馬鹿のやることだ。

もちろん、第二条第五号にSNSを加えるというのも、それはそれでアリだろう。ただ、それは、いわゆる「連投」をストーカー規制法の対象にするかどうか、という議論であり、本件をその射程とするには、多少、難があるように私(安岡孝一)には思える。

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計算機科学者とは、壊れていないものを修理する人々のことである

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