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日記

yasuokaの日記: 「桓」は常用平易か

日記 by yasuoka

『民事月報』2016年4月号(Vol.71, No.4)がやっと京都大学法学部図書室に届いたので、さっそく読みに来た。「桓」を子の名にしたい親が、舞鶴市長を相手に争った家事審判が掲載されている(pp.45-46)。

「桓」の文字は社会通念上明らかに常用平易な文字と見ることはできないとして,戸籍事務管掌者に対して,出生届の追完届の受理を命ずることを求める申立てを却下した事例(大阪高裁平成27年(ラ)第928号,平成27年9月11日決定)

[事案の概要]出生した長男の名を「桓」とする出生届の追完届(以下「本件追完届」という。)を戸籍事務管掌者であるY(舞鶴市長,抗告人)に対し提出したX(申立人・相手方)が,「桓」の字は戸籍法50条に規定する常用平易な文字に該当しないとして,不受理処分を受けたことから,本件追完届の受理を命ずる審判を申し立てた。
原審判(京都家庭裁判所舞鶴支部平成27年(家)第2013号 平成27年6月30日審判)は,要旨以下のとおり判示して,Xの請求を認容した。
「桓」の字は,木を偏とし,亘を旁として構成されているが,木偏自体はありふれた偏であるし,亘を旁に持つ常用漢字は他にもあり,総画数は10画と多いとはいえないのであって,文字の構成自体複雑なものとはいえない。また,「桓」の文字は,平安京を開いた桓武天皇の一字であり,桓武天皇は,義務教育である小学校,中学校の各課程において必ず教えられる歴史上の人物であるため,「桓」の字が難読であるとは言い難い。さらに,法制審議会人名漢字部会等による審議の過程において,JIS第一水準の漢字については,文化庁が作成した「漢字出現頻度数調査(2)」に現れた出版物上の出現頻度の順位が3012位以上の漢字について常用平易と認めるのが相当という判断が基準の一つとして示されており,かかる判断基準は合理的であり尊重されるべきところ,その後の調査において,「桓」の出現順位が上記基準を上回っていることなどを総合的に考慮すると,「桓」の字は常用平易なものと見るのが相当である。

[決定要旨]原審判を取消し,申立てを却下。当該文字が常用平易な文字と認められるか否かを判断するに当たって,その文字を偏と旁とに分解してそれぞれがありふれているか否かを検討することは,文字自体の常用平易性の判断に必ずしも結びつくものではなく,総画数が10画程度で文字の構成自体複雑とはいえなくても平易とはいえない文字が多数存在することに照らすと,総画数や文字の構成の点は常用平易性を肯定することにはならない。また,「桓」の字を使用する歴史上の人物は,義務教育課程では桓武天皇以外に見当たらず,「桓」の字を使う氏や地名が多いと認めるに足りる資料もなく,「桓」の字義についても広く理解されているとは認められないのであって,「桓」の字が日常生活や社会活動等において国民に広く使用されている文字とは認められない。そして,出版物に出現した「桓」の字がどのように用いられているかは不明であり,出現頻度が3012位を上回ったといって,直ちに常用平易な文字とみることはできない。以上のところによれば,「桓」の字は社会通念上明らかに常用平易な文字であると認めることはできない。(確定)

桓帝とか藤島桓夫とか盤桓園とか、やっぱりマイナーなんだろうか。でも、桓武天皇おひとりで十分「常用平易」だと、私(安岡孝一)個人は思うのだけど。

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