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日本

yasuokaの日記: Re: 現行戸籍制度の問題点と戸籍制度の由来

日記 by yasuoka

昨日の日記に続けて、「無戸籍者問題」が「家制度」に由来しているのかどうか、私(安岡孝一)なりに多少、考えてみた。ざっと考えてみたところ、どうも違うようだ。「無戸籍者問題」は「家制度」に由来しない。

現在の戸籍法は、出生・婚姻・死亡の三大身分事項を中心に設計されているが、なかでも、出生と婚姻が独立していないという、かなり独特なモデルが採用されている。すなわち、婚姻の結果として出生が生じる、というモデリング(制度設計)がされていて、このモデルに乗る場合はいいのだが、モデルに乗らない場合には不都合が起こる。もちろん、不都合のうちの典型例(非嫡出子とか認知とか)については、それぞれ何とかモデルが崩壊しないよう運用上の「パッチ」があてられてきたが、「パッチ」は所詮「パッチ」に過ぎず、その隙間からポロポロと「考慮もれ」がこぼれ出しているのだ。こぼれ出たうちの一つが「無戸籍者問題」なのだと、私には思える。

そもそも、婚姻と出生には何の因果関係もない(微妙な相関関係はある気がする)のに、それを日本の戸籍法は、因果関係があるかの如くモデリングしてしまったのが、最大の失敗なのだろう。というか、「家制度」時代の古い戸籍法では、婚姻以外で出生が生じるのは当たり前であり、出生した子をどの「家」に入れるか選択できるよう、制度設計されていた。ところが、戦後の戸籍法では、GHQ民政局(というかAlfred Christian Oppler)の意向もあって、婚姻と出生が紐づけられてしまった。この結果、婚姻以外で出生した子が、戸籍法のモデルに乗らない、という事態になってしまっている。

ただ、いまさら、出生を婚姻から切り離して制度設計し直せるかどうかは、正直、私にもわからない。なお、Opplerを含むGHQ民政局が、どういう意向で日本の戸籍法を設計しようとしたかは、和田幹彦『家制度の廃止』(信山社、2010年10月)に詳しい。興味のある方は、ぜひ読んでみてほしい。

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計算機科学者とは、壊れていないものを修理する人々のことである

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