珈琲を入れた後飲むまでのタイムスケール(1日前後)では,酸化よりもむしろ主原因は加水分解による酸の生成かと思います.
クロロゲン酸(エステルの一種)やキナ酸ラクトン(キナ酸が分子内脱水縮合したエステル),他の多種の香料成分等のエステル類が加水分解すると,脱水縮合していた部分がアルコールと有機酸に分解します.これにより酸が生じpHが下がります.このタイムスケールはまあ時間レベルで見える程度の速度はありますので一番疑わしいですね.確か1980年代頃の論文で,珈琲を高温貯蔵した際に生じる酸味の主原因が低分子量有機酸の増大だ,というものがあったはず.
豆レベルでの長期保存では脂質類の酸化による有機酸の生成などもありますが,こちらはタイムスケールがもっと長い(おそらく数週間とか数ヶ月とかのレベル)わけで,酸化は抽出後の酸の生成とはあまり関係ないかと.
#まあむしろ酸化は,エポキシドの生成やら何やらと香りの方にメインに効いてくる(酸敗)はずですが.
缶コーヒーに関しては,経時変化による加水分解で有機酸が出てくるのを防止するために,例えば出荷時のpHを中性近くに調整する(無処理時は植物由来の有機酸のため若干酸性)というものがあります.エステルの加水分解は酸でも塩基でも加速されますので.
他にも,寄与の大きいクロロゲン酸類などの一部成分を取り除き,分子類を適度に調合して加えて味/香りは元に近づけるとか,安定化剤のようなものを加えるとか,まあいろいろ工夫はあります.ただ,それでも加水分解は防ぎきれないため,缶コーヒーの賞味期限は缶飲料の中でも結構短めに設定されています.販売店側へは出荷後半月だか1ヶ月だかで売り切ってくれとか言っていたような.
他に寄与する可能性があるものとしては,保存することにより低分子量の揮発成分が飛んで,それによって当初はマスキングされていた酸味が感じられるようになる,というのもあり得ますかね.まあこちらもむしろ香味の方で良く効く効果ではありますが.