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通常の対空ミサイルは、クソでかい航空機を標的に近接信管(目標の直前で爆発して、破片で機体に損傷を与える)を使用して迎撃しますから、それほど高性能なシーカー(誘導装置)が必要という訳ではないです。
TMD(戦域ミサイル防衛)やNMD(国家ミサイル防衛)で使用されるミサイルは低空迎撃用のPAC-3(MIM-120パトリオットの性能向上版)と、航空迎撃用のTHAADミサイルの二種類があります。PAC-3(別名ERINT)の開発は順調で、日本のTMD計画にはこちらだけを採用する予定のようです。問題になっているのが、高層迎撃用のTHAADで、すでに何度も迎撃実験に失敗しているのはご存知の通りだと思います。
THAADミサイルは、航空機のような巨大な標的ではなく、45度に近い角度で大気圏を再突入してくる弾道弾を、高高度で「破壊」するためのものです。具体的には、タングステン製の「キル・ビークル」と呼ばれる高速直撃弾によって、飛来する核弾頭に慣性で直撃して破壊するもので、技術的には非常に困難と言われています。例えるならば、通常の迎撃ミサイルはショットガンでダチョウを狙うようなものですが、THAADはライフル銃で100M離れた所にあるタバコの先端を狙うようなものです。
もちろん、核弾頭には一般的にバルーンと呼ばれるダミー弾頭を複数搭載しているので、オトリを識別する能力が必要です(ここは地上の支援レーダーがやる仕事ですが)。実際の実験では、第二世代のミニットマンミサイルにバルーンと模擬弾頭を搭載して実験を行っています。
NMDは建前的には北朝鮮などの「ならずもの国家」が配備する長距離弾道弾を迎撃する目的のもので、ロシアなどが配備する第三世代弾道弾の迎撃を主体にしたものではありません(そんなことをすれば相互確証破壊理論=MADを否定してしまう)。第三世代以降は、MIRV(個別誘導型多弾頭弾)と呼ばれる1基のミサイルに複数の誘導弾を搭載したミサイルを迎撃しなければならないので、現実的ではありません。が、将来的にもそれらを視野に入れているというのがEU諸国やロシア、中国の懸念です。
過去にも、アメリカは核迎撃手段を構築しようとしています。例えば1970年代のABM(対弾道弾迎撃ミサイル)計画、80年代のSDI(戦略防衛構想)などです。ABMは10ギガトンクラスの超水爆を搭載した超高速ミサイルで、核弾頭を核爆発で吹き飛ばすもので、SDIは宇宙空間に配備したレールガンや炭酸ガスレーザーガンを使用して弾頭を打ち落とすものです。というわけで、TMD/NMD(どちらも運用主体はSDI局の後継のBMDO=弾道弾防衛局)は三度目の正直を狙ってるみたいですけど・・・。
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私は悩みをリストアップし始めたが、そのあまりの長さにいやけがさし、何も考えないことにした。-- Robert C. Pike
Re:行うは難し?! (スコア:4, 興味深い)
通常の対空ミサイルは、クソでかい航空機を標的に近接信管(目標の直前で爆発して、破片で機体に損傷を与える)を使用して迎撃しますから、それほど高性能なシーカー(誘導装置)が必要という訳ではないです。
TMD(戦域ミサイル防衛)やNMD(国家ミサイル防衛)で使用されるミサイルは低空迎撃用のPAC-3(MIM-120パトリオットの性能向上版)と、航空迎撃用のTHAADミサイルの二種類があります。PAC-3(別名ERINT)の開発は順調で、日本のTMD計画にはこちらだけを採用する予定のようです。問題になっているのが、高層迎撃用のTHAADで、すでに何度も迎撃実験に失敗しているのはご存知の通りだと思います。
THAADミサイルは、航空機のような巨大な標的ではなく、45度に近い角度で大気圏を再突入してくる弾道弾を、高高度で「破壊」するためのものです。具体的には、タングステン製の「キル・ビークル」と呼ばれる高速直撃弾によって、飛来する核弾頭に慣性で直撃して破壊するもので、技術的には非常に困難と言われています。例えるならば、通常の迎撃ミサイルはショットガンでダチョウを狙うようなものですが、THAADはライフル銃で100M離れた所にあるタバコの先端を狙うようなものです。
もちろん、核弾頭には一般的にバルーンと呼ばれるダミー弾頭を複数搭載しているので、オトリを識別する能力が必要です(ここは地上の支援レーダーがやる仕事ですが)。実際の実験では、第二世代のミニットマンミサイルにバルーンと模擬弾頭を搭載して実験を行っています。
NMDは建前的には北朝鮮などの「ならずもの国家」が配備する長距離弾道弾を迎撃する目的のもので、ロシアなどが配備する第三世代弾道弾の迎撃を主体にしたものではありません(そんなことをすれば相互確証破壊理論=MADを否定してしまう)。第三世代以降は、MIRV(個別誘導型多弾頭弾)と呼ばれる1基のミサイルに複数の誘導弾を搭載したミサイルを迎撃しなければならないので、現実的ではありません。が、将来的にもそれらを視野に入れているというのがEU諸国やロシア、中国の懸念です。
過去にも、アメリカは核迎撃手段を構築しようとしています。例えば1970年代のABM(対弾道弾迎撃ミサイル)計画、80年代のSDI(戦略防衛構想)などです。ABMは10ギガトンクラスの超水爆を搭載した超高速ミサイルで、核弾頭を核爆発で吹き飛ばすもので、SDIは宇宙空間に配備したレールガンや炭酸ガスレーザーガンを使用して弾頭を打ち落とすものです。というわけで、TMD/NMD(どちらも運用主体はSDI局の後継のBMDO=弾道弾防衛局)は三度目の正直を狙ってるみたいですけど・・・。