プレスリリースの「high スピン」の説明では「d 電子が一つづつ d 軌道に入る」と書いてあるから、この d 電子が配位子に供与されるとも配位子の電子対が d 軌道に入るとも思えない。 つまり、high スピン状態では配位結合があるとは読めない。 (d 電子が一つづつの状態で配位子に供与されるなんてことがあるのか? その場合でも、d 軌道に入ってるとは言わんだろう) low スピンでも d 電子は d 軌道に入ってると書いてるから、供与されてるとは読めないが、空の d 軌道もあるから配位結合は可能。(それとも字句どおりに解しすぎで、d 電子は配位子に供与されてるのか?)
で、結局「使ってます」と言うのはどちらの意味? 素人が「日本語として字句どおりに」解釈するのは間違いで、どちらのスピン状態でも d 電子を配位結合に使っているのか、それとも low スピンだけ配位結合の解釈で良いのか?
d 電子 (スコア:1)
逆に、窒素が価電子を元に戻そうと引っ張るから、さっさと高スピン状態が解除されるとか。
(こういう推理って、いまいち信用できないな)
the.ACount
Re:d 電子 (スコア:2, 興味深い)
なんでも何も,元よりd電子とd軌道は配位結合の主役ですが.
#むしろ何でこれらが関係ないと思ったのかの方が不思議です.
窒素との結合 (スコア:0)
d 軌道を窒素との配位結合に使っているのなら、プレス説明にある低スピンとか高スピンの説明って何?(まるで、使ってないみたいに読める)
低スピンの時にしか配位結合に使えないって事なら、説明にそう書いてもらいたいな。
Re:窒素との結合 (スコア:2, 興味深い)
なぜ使っていないと読めるのかは謎ですが,使ってます.
#結合に使っているからと言って,それがすなわち電子対を作って非磁性化することは
#意味しません.
一般に,d系の電子と空軌道を持つ金属イオンと,配位子との間での相互作用は
・配位子の電子対から金属の空の軌道への電子供与による結合
・金属のd軌道から配位子の空のπ*軌道への電子供与による結合
・d電子と配位子の電子対のクーロン反発
が効きます.
highスピンとlowスピンでは使える軌道やらクーロン反発やらが変わるんで結合距離が
変わります.
配位結合 (スコア:1)
つまり、high スピン状態では配位結合があるとは読めない。
(d 電子が一つづつの状態で配位子に供与されるなんてことがあるのか? その場合でも、d 軌道に入ってるとは言わんだろう)
low スピンでも d 電子は d 軌道に入ってると書いてるから、供与されてるとは読めないが、空の d 軌道もあるから配位結合は可能。(それとも字句どおりに解しすぎで、d 電子は配位子に供与されてるのか?)
で、結局「使ってます」と言うのはどちらの意味?
素人が「日本語として字句どおりに」解釈するのは間違いで、どちらのスピン状態でも d 電子を配位結合に使っているのか、それとも low スピンだけ配位結合の解釈で良いのか?
the.ACount
Re:配位結合 (スコア:1)
「d電子が一つずつd軌道に入る」というのはあくまでも近似です.
正確に言うと,「d軌道と配位子の軌道から作られる多数の混成軌道のうち,d軌道の性格を
強く残している方の5つの軌道にd電子が1つずつ入る」となります.実際にはこの段階で既に,
配位子の軌道との混成が起こっています.これは別の言い方をすればd電子が配位子の側の
軌道へと供与されている(供与=微妙に提供されている,であって,完全に移動している
わけではない)ということになります.
>d 電子が一つづつの状態で配位子に供与されるなんてことがあるのか?
あります.
例えば単純にあるd軌道と配位子の軌道一つずつから,結合性の軌道一つと反結合性軌道一つが
生成します.通常の結合様式では結合性軌道は配位子の軌道の性質を強く残し,反結合性軌道は
d軌道の性質を強く残しています.ここに,配位子からの電子2つとd電子1つを置けば,結合性
軌道に電子が2つ,反結合性軌道に電子が1つ配置された状況になります.
この状況では,「d軌道多め,配位子の軌道少なめ」というところに1つ電子が入っているわけで,
配位子側の軌道への供与(寄与)があります.(供与≠配位子の軌道に丸ごと入る)
>その場合でも、d 軌道に入ってるとは言わんだろう
キャラクターとしては非常にdの性格が強いので,こういう電子は通常そのまま「d電子」として
扱います.(単純にエネルギーが変わっただけのd電子として扱う)
> d 軌道に入ってると書いてるから、供与されてるとは読めないが
ある軌道Aに入っていて,別の軌道Bに少し行っている場合で「供与」という言葉はよく使います.
(ψ=0.95A+0.3B というような軌道の場合,Aのキャラクタが0.95^2=0.9ですのでほとんどAの
ままです.でもこの場合,Aの軌道にいた電子がBの軌道へ供与され,等とも言います)
>で、結局「使ってます」と言うのはどちらの意味?
文字通り,highスピンでもlowスピンでも配位結合には関与しています.
ただ,highスピンの場合反結合性の軌道(d軌道のキャラクタが強いが,d軌道と配位子の軌道の
混成から作られる軌道)に入っているため結合強度が変わります.
>素人が「日本語として字句どおりに」解釈するのは間違いで
文字通り解釈するのが間違いというわけではなく,
・d電子である(d軌道に入っている)
・配位結合を作っている(配位子とd軌道との混成軌道に入っている)
という2つの主張は対立しない,というだけです.
配位結合に関与している軌道の中でもdのキャラクタの非常に強いものはd軌道と呼びますので.
Re:もうちょい補足 (スコア:2, 興味深い)
配位結合を作る配位子として,良くありがちな電子対で配位して,かつ配位子のπ*軌道への
バックドネーションのある系と,d軌道を持つ遷移金属との6配位錯体を考えます.
#たとえばシアノ錯体とかそういった系列です.
まずは金属のs軌道,p軌道3つ,d軌道5つと,配位子の電子対がいる軌道p'(1*6の計6つ)が存在します.
d軌道は6配位の場合はその対称性によってまずdy 2とdx 2 -y 2,それとは別の組のdxy,dyz,dxzの2種類に分類できます.
配位子の6つの軌道も対称性を満たすように6つの軌道が組み合うことでEgが2つ,A1gが1つ,T1uが3つの3種類となります.
互いの対称性によって軌道が混成できるかどうかが決まりまして,金属の(空の)s軌道は配位子群のつくるA1gと混成して
a1gの結合性軌道とa1g*の反結合性軌道を作り,前者はもっとも安定な軌道となります.
金属の(空の)p軌道は配位子群の作るT1uと混成して結合性のt1uと反結合性のt1u*を作り,前者はこちらもかなり安定です.
最後に配位子群の作るEgはdのdy 2およびdx 2 -y 2と混成して,結合性のeg軌道と,
反結合性のeg*軌道を作ります.前者は配位子の軌道の要素が強く,近似的には配位子の軌道とみなせます.
で,後者はエネルギーの高いd軌道とみなせます.(厳密には配位子の軌道との混成で生じているまったく新しい軌道
なのでd軌道ではないが,dに近いのでd軌道と呼ぶ)
一方のdxy,dyz,dxzの3つは対称性の関係から配位子の軌道とは相互作用できず,
そのまま居残ってきます(エネルギーの低い方のd軌道).
ここまでがバックドネーションを無視した状況で,
1.配位子群の軌道+金属のs軌道からなる結合性軌道a1g(配位子のキャラクターが強い)
2.配位子群の軌道+金属のp軌道からなる結合性軌道t1u(配位子のキャラクターが強い)
3.配位子群の軌道+金属のd軌道からなる結合性軌道eg(配位子のキャラクターが強い)
4.配位子群の軌道+金属のd軌道からなる反結合性軌道eg*(d軌道のキャラクターが強い)
の4種類の配位結合ができ,1-3は結合を強める方向,4は結合を弱める方向に働きます.また,4はdのキャラクターが
強いので,(実際には混成軌道であるにもかかわらず)そのままd軌道として扱います.
#上記と,結合に関与していない3つのd軌道以外の,エネルギーの高い他の軌道には,電子が足りないので
#なにも入りません.
さて,バックドネーションですが,ここでは今までの議論ではエネルギーの変わらなかったdxy,dyz,dxz
の軌道が,配位子の(配位子内での反結合性の)π*軌道と相互作用することで結合性のt2g軌道と反結合性のt2g*軌道を
生み出します.配位子のπ*が空いていれば,トータルではt2gに入る電子が多いために安定化する方が多くなり
ますので,結合を作ります.
このt2gはd軌道の性質が強いので,こちらも通常はそのまま(エネルギーだけ違う)d軌道とみなして扱います.
ReRe:配位結合 (スコア:1)
しかし、ちょい前の放送大学 TV で「配位子内での反結合性軌道も使われる (バックドネーション)」なんて話を聞いてオドロイた時に「配位結合はヤヤコシイ!」と実感したのが、また更に複雑怪奇で説明を読むだけでも大変!
コピー&編集して読み直さなければ・・・
the.ACount