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にわかな奴ほど語りたがる -- あるハッカー
なぜ毒性が強くなった? (スコア:4, 興味深い)
弱まる方向へも同様な変異が可能だったと思うのですが、
その辺がわかれば面白い気がします。
Re:なぜ毒性が強くなった? (スコア:2, 参考になる)
本質的には宇宙環境は過酷な放射線被爆環境なので、DNA損傷による変異導入が増加した結果だと思います。変異そのものは中立的に発生し、個体レベルでは致死的になったり、何も変わらなかったりしますが、集団として感染率増加という形質変化を獲得したことが偶然の結果に残ったものなのか、それとも何らかの理由で選択されたものなのか、が興味深いです。
#『きぼう』による追試を希望するよ〉Y君
Re:なぜ毒性が強くなった? (スコア:2, 参考になる)
>バイオフィルム形成に関わる細胞外分泌物が増えていたよ
基本的には、これだけで「毒性が強まる」ことの説明は一応は可能です。
あくまで一般論として話しますが、感染症の患者(や動物)から分離してきたばかりの病原菌(臨床株)のうち、強毒性の株であっても、それを実験室で、細菌培養用の培地で繰り返し培養(継代培養)していくと、毒性が弱くなる現象というのは珍しいものではありません。そもそも、病原菌の「毒性」を決める因子というのは、例えばその菌が作り出す特定の毒素のようなものだけではなくて、その細菌が宿主の体内に定着し、食細胞や抗体による排除(免疫)を回避して、増殖するために働くような機構というものも大きく関与します。
例えば、ある種の病原菌(淋菌など)が持つ、細胞表面の短い毛状機関である線毛(繊毛ではない)は、ちょうどマジックテープのようなイメージで、宿主の細胞表面と接着し、機械的に排除されるのを防ぐ働きがあると言われます。また莢膜 [wikipedia.org]と呼ばれる細胞外分泌物は、白血球による食作用を回避する役割があると言われています。バイオフィルムも莢膜とよく似た分泌物であり、食作用を回避する役割があるほか、粘性が高いために組織表面に結合して、機械的な排除を防ぐ働きを担ってます。
一般に、これらの線毛や莢膜、バイオフィルムなどは培養条件によっても産生する/しないが左右され、臨床から分離して間もない強毒株や、あるいはそれを実験動物などの生体内で培養していった場合には保持されますが、一方で、実験室で継代培養すると比較的容易に失われることが知られてます(なので、それを利用して、弱毒菌を作成してワクチンを作るという技術もあるわけですが)
なお線毛や莢膜などが失われて弱毒株化した場合、比較的、非可逆的になる(強毒株には復帰しない)ケースが多いです。ただし、バイオフィルムはそもそもクオラムセンシング [wikipedia.org]と呼ばれる機構などにより、細菌の生育環境に応じてその産生が制御されているものです。なので、その産生が宇宙空間によって何らかの影響を受ける、というのは、それほど不思議な話ではないと思います。ただし、実際に「産生が促進される方向」に制御されるのか、その逆なのかは分からなかったわけで、今回の報告は、それを明らかにしたということで興味深いものだと思います。