さくらインターネットの新しい基本約款(新旧対照表)は、
xxii. 中華人民共和国(以下、「中国」といいます)の法令が適用される利用者については、以下の行為
ア 中国の法令が規制するコンテンツを掲載する行為
イ 中国の法令にて特別な許可証を必要とする事業を営む場合において、当該許可証を有さずにコンテンツを掲載する行
為
ウ 中国に対する反体制的な意見のコンテンツを掲載する行為
エ 中国の文化・習慣に対する過激な意見のコンテンツを掲載する行為
オ 中国の機密・安全を脅かす恐れのあるコンテンツを掲載する行為
カ 帝国主義的・封建主義的な思想や迷信を発表する行為
という部分が印象的なので、あちこちで引用されて話題になっているようです。
ここだけ見ると、日本からの利用だとあまり関係ないように思えますが、全体を読んでみると日本国籍の日本居住者であっても中国政府の言いなりで表現の自由が制限され、かつ通信の秘密も守れれない(中国政府に情報が公開される)という最悪の約款 であることが分かります。
例えば、中国政府にとって都合の悪い記事をWebサイト等に公開したい場合や、専用サーバやVPSに中国政府が欲しい機密情報が含まれている場合に、情報の公開停止や個人情報・機密情報の提供を中国政府によって求められる恐れがあります。
その際に、中国政府の要請に応じないと「当社の指定国における許可証その他関連資格が取り消される可能性がある」とさくらインターネットが判断した場合に、「利用者の通信の秘密に属する情報」が中国政府に提供される恐れがあります。
また、さくらインターネット株式会社の選択により、正式裁判ではなく仲裁によって紛争を解決することを強制され、しかも上訴の権利(正式裁判に訴える権利)すらないとされています。しかも、仲裁の際の仲裁人の選任権がさくらインターネットにあるという極めて不平等な約款です。
正式裁判で争う権利すらないという条項が有効なのか……、と疑問に思う人も多いかもしれませんが、(特に法人間の契約では)こういった仲裁条項は、予め当事者間の契約の中で仲裁合意がある場合には有効とされます。ただし、一般消費者の場合は、消費者契約法第10条によって無効を主張できる可能性があります。仲裁人の選任権がさくらインターネットにあるのならば、さくらインターネット側に有利な決定がなされる可能性が高いので、例えば一般の裁判では認められないような高額の賠償金をさくらインターネットに対して行わなければならないという決定がなされる恐れもあり極めて危険です。最悪の場合、さくらインターネットが選任した仲裁人が、おたくが中国政府によって都合の悪いコンテンツを発信したせいで、中国における許可証その他関連資格が取り消されたので、その損害として○億円支払えといった決定をする可能性だってあるわけです。
こういった約款は企業側に有利に書かれていることが多いですが、ここまで酷いレンタルサーバの約款は今まで見たことがありません。普通のレンタルサーバ・専用サーバ・VPSの約款には、正式裁判で争う権利を剥奪するような仲裁条項は存在しません。 同業他社の約款を見れば分かりますが、「本規約等に関連又は起因して会員と当社の間に生じた一切の紛争の解決については、その訴額に応じて、東京簡易裁判所又は東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とします。」などと正式裁判で争う権利があるのが一般的です。
第16条(禁止事項)
1.利用者は、次の各号に該当する行為を行ってはなりません。
(中略)
xxv. 利用者の行為(不作為を含みます)により、当社の指定国における許可証その他関連資格が取り消される可能性が
あると当社が判断したとき
第21条(通信の秘密の保護)
(中略)
3.当社は、利用者が第16条各項のいずれかに該当する禁止行為を行い、本サービスの提供を妨害した場合、本サービ
スの円滑な提供を確保するために必要と当社が認める範囲で利用者の通信の秘密に属する情報の一部を第三者に提供
することができます。
第35条(紛争の解決)
(中略)
2.(中略)当社の選択により、裁判所への提訴に代
えて、日本の東京における日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って行われる仲裁により解決することができ、利用者
はこれに同意します。当該仲裁は、当社によって選任される1名の仲裁人により行われ、仲裁手続の言語は日本語としま
す。当該仲裁における判断は上訴の権利を伴わず、利用者及び当社を拘束します。