アメリカでは貨物鉄道が大半の鉄道網を所有していて、
アムトラックは線路を借りて列車を走らせている、というのはそうですね。
長距離列車だとそこまで貨物鉄道と旅客鉄道の利害は衝突しないのですが、
今回問題のカルトレインなどは通勤鉄道的な側面があるので、
輸送力増強のためには旅客側は列車間隔を短縮して増発したい反面、
貨物鉄道にとっては1本の列車の輸送力を増強する方が良いので、
利害は一致しない面が出てきます。
もっとも、北東回廊と呼ばれるボストン-ニューヨーク-ワシントンDCの線路は、
アムトラックが直接所有しています。
1970年代の鉄道会社経営破綻の後処理でアムトラックに所有権が渡りました。
ヨーロッパの上下分離がアメリカや日本と違うのは、
ヨーロッパでは線路所有組織は自前での列車運行はせず、
所有と維持管理だけの機能を持つということです。
アメリカは貨物鉄道が線路を所有しているので自前で貨物列車を走らせており、
アムトラックに線路も貸します。
日本もJR旅客会社が線路を所有していて自前で旅客列車を走らせており、
一方でJR貨物に線路を貸します。
もっとも、日本でも若桜鉄道や青い森鉄道のように、線路所有だけの形態の
上下分離が一部で実施されるようになりました。
ヨーロッパではオープンアクセス、つまり線路を借りて自由に鉄道運行に参入できるようにしたので、
参入者を公平に取り扱うために、線路管理組織を分離しました。
線路管理組織が自前で列車運行をしていたら、参入者を不利に扱うことが予想されるからです。
ドイツはそれでも、ドイツ鉄道傘下のDBネッツが線路管理者で、分離が不完全だとフランスが批判していたのですが、
フランスは分離した組織の連絡不行き届きでトラブルがあったため、
結局ドイツと同じでフランス国鉄の傘下のSNCFレゾという組織が線路管理をするようになりました。
だから建前としては、旧国鉄系組織の子会社みたいなところに線路管理をさせることで、
上下分離されていますということになってます。
フランスが再統合したといっても、ドイツと同じモデルになったというだけです。