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2sと2pのズレって、静電ポテンシャルが逆二乗則からズレてるって事かな?真空偏極でズレるだけでなく、陽子の大きさでズレるってのもあるんか。
>真空偏極でズレるだけでなく、陽子の大きさでズレるってのもあるんか。
そりゃもちろん効いてきます。そもそもラムシフトの精密な計算は数十以上の高次項の足し合わせであり、単一の起源のものではありません。今回の例で行けば、ミュオン、プロトン、仮想光子、仮想電子-陽電子対などとの間の相互作用(それも多重の相互作用である高次項も含む)の寄与がありますから、プロトンの電荷分布(rp)を含む項もいくつか(本当に高次項を考えるならそれこそ無限に)存在します。
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流し読み (スコア:5, 参考になる)
(理論的に計算した値とつきあわせることで,理論の正しさなどが検証できる)
ラムシフト(低次の近似ではエネルギーの等しくなる2sと2pの準位が量子電磁力学(Quantum ElectroDynamics:QED)的な補正項により微妙にエネルギーがずれる現象)には陽子の大きさ(的なもの)に依存する項があるから,ラムシフトを正確に測定することで大きさ(的なもの)の情報を得ることが出来る.
通常の水素原子に比べ,ミューオン水素(水素原子の電子の代わりに,ミューオン(電子の世代違いで,質量が200倍ほどな事以外は電子と同じ性質の素粒子)がプロトンの周りを回っている原子)を使った方が,質量が大きいためプロトンに近いところを回ってることにより効果が大きく見えるだろう.
だからミューオン水素の分光でラムシフトを測定し,QEDでの計算結果と比較.
そうしたら微妙にずれていた.
可能性としては,
・計算のもととなっている過去の実験結果の誤差
・計算に入れていない高次補正項の効果
(この辺の計算は非常に複雑かつ解析的に解けないので,適当な次数までの摂動計算ぐらいしかできない.得られる計算結果は厳密解ではないので,高次の項が効いてくるような現象ではもととなる理論が正しくとも計算の打ち切りの効果で結果にずれが生じる)
・実はQEDの不完全さが見えている
とかが考えられるね ←今ここ
とかそんな感じで.
可能性としては高次補正項とかその辺が大きい(ミューオン使ったことで高次項が見えやすくなった)けど,万一QEDとかが違ってたら面白いよね(多分そんなことはないけど),とかそんな感じかと.
以下余談.
背景としてはいろいろありますが,
1. QEDはどこまで正しいのか?
2. 計算手法はどの程度妥当性があるのか?
といったものがあります.
まず1に関してですが,QEDはその定量性も含め凄まじい精度で検証されており,今のところ物理理論の中で最も精度良く検証されている理論です.しかしながらQEDが完全な理論でないというのは多くの人の認めるところでもあります.それはQEDが電磁気力を扱うものであり(電弱理論によりさらに弱い力が統一されます),世界の基本となる残り二つ,核内の強い力と重力とが同じ理論の一部としては統一できていないからです.
不完全な理論であることから,物理学者はQEDがどこかで現実世界からずれてくるのではないか,という期待を持っています.理論物理学者の多くが信念として持っている(まあ,必ずしも正しいとは限らないのですが,今のところ正しいと考えても良さそうな雰囲気の漂っている)「4つの基本的な力がある一つの理論で説明できる」(4つあるように見えるけど,ある一つのものの違う側面が現れているだけである),という観点に立てば,電磁気的な相互作用であっても,他の力と関係する影響が微妙には存在しても良いはずです.そのため,精度をぐんぐん上げながらどこかで理論と実験がずれる日を心待ちにしているわけです.
これは過去の多くの物理の発見がそうであったように,新しい・より上位の完成された理論は,古い理論が破綻して現実とずれてくる,そういう発見に始まるためです.
(理論と現実がずれると言うことは理論がどこかおかしいと言うことだから,実験結果を説明できる新しい理論が必要になる.勘違いされることも多々ありますが,実は物理学者は,理論に合わない(実験上のミスではない)実験結果が大好きです)
一方2に関してですが,最近の理論はごちゃごちゃしているうえに,きっちりと正確な結果が算出できるものなどほとんどありません.ほぼ全ては,何らかの仮定をおいて計算量を減らしたり,適当な次数で近似を打ち切ったりした暫定的な値です.ここで問題になるのは,果たしてこういった計算手法が正しいのか否か,という点です.それを検証するために,非常に基本的な系で実験を行った結果と,ある簡略化した手法で計算した結果をつきあわせて,その簡略化の妥当性を検討します.そうしてある程度妥当性があると思えるようになれば,その手法をもうちょっと複雑な系に適用して欲しい答えを算出する,というようなことになります.そのため,どういったときにその計算法がずれてくるのか,とか,そもそも正確に計算できているのか,などの検証は常に続けられることとなります.
Re:流し読み (スコア:2, 興味深い)
「サーファー物理学者」の新たな統一理論に注目集まる [wiredvision.jp]
An Exceptionally Simple Theory of Everything [wikipedia.org]
Re:流し読み (スコア:1)
2sと2pのズレって、静電ポテンシャルが逆二乗則からズレてるって事かな?
真空偏極でズレるだけでなく、陽子の大きさでズレるってのもあるんか。
the.ACount
Re: (スコア:0)
>真空偏極でズレるだけでなく、陽子の大きさでズレるってのもあるんか。
そりゃもちろん効いてきます。
そもそもラムシフトの精密な計算は数十以上の高次項の足し合わせであり、単一の起源のものではありません。
今回の例で行けば、ミュオン、プロトン、仮想光子、仮想電子-陽電子対などとの間の相互作用(それも多重の相互作用である高次項も含む)の寄与がありますから、プロトンの電荷分布(rp)を含む項もいくつか(本当に高次項を考えるならそれこそ無限に)存在します。