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50~60人が逮捕になるかも?ID・パスワードの不正利用」記事へのコメント

  • by oyaoya (3441) on 2001年09月29日 12時27分 (#25882)
    例えば火災報知機。業務妨害に使おうと思ったらいくらでも使えるものですが、たとえ実際にそういう使い方をされた場合でも設置者が罪に問われたことはない。包丁も山ほど殺人に使われていますが、包丁屋が捕まったことはない。それは結局、
    • (1) 違法な用途以外に正当な用途があり、そのために設置・作成等の必然性があるのか。
    • (2) 違法行為に利用されることの予見可能性と結果発生防止義務がどの程度認められるか。
    がポイントである、と言うことができると思います。抽象論としては、火災報知機も包丁も犯罪に利用され得ますが、合法的な用途に利用される可能性が非常に大きく、また設置/販売には必然性があります。従って一般的にはそれらを設置/販売することに違法性はない。こう言えるでしょう

    もし仮に、例えば「俺はこれから人を殺しにいこうと思っているのだが、包丁を売ってくれ」と告げられた場合のように違法行為発生の高度の具体的な予見可能性がある場合、にもかかわらず包丁を売れば幇助犯が成立する可能性があります(この場合、包丁を買った人間の意思の自由を奪ったりはしていないので、間接正犯ではなく従犯)。

    さて。

    設例ですが、第一の基準が「合法的用途の存在・必然性」にあるというのはおわかりいただけるかと思います。業務妨害に利用される可能性があるからといって火災報知機を設置しないわけにはいかない。これに従って考えると、前者の場合にはrootが自分の管理化のコンピュータで利用されているパスワードの脆弱性をチェックする場合など、正当な用途を想定することが一応はできます。これに対し、後者の場合は正当な用途が想像しがたく、また不正に利用された場合に違法な行為が生じることとその発生への認容が認められるので、「未必の故意」の存在を認定し、道具理論を使って間接正犯か、幇助犯を取ることになると思います。

    もちろん実際には、「合法的利用のために作ったものだ」と作る側は主張するわけですな。ちょうど高速道路のオービスの写真にナンバープレートが写らないようにするためのカバーのように(笑)。あれは「泥汚れ防止」とか言ってるんだっけ。しかし、法の世界においては常に理論構成と実質の双方が検証されるので、「建前としてどう言っていようが、実質的にはどうだったのか」が裁判では具体的証拠に基づいて検証されることになります。

    例えば、パスワード検証器を相手が特定の機械のrootであることを確認した上で、不正利用してはいけないことを理解したという誓約書に署名させた上で販売したような事例と、「決してクリックしてはいけません」と豆粒のような目立たない文字で書かれたウェブページ。幇助への故意の有り無しを認定するラインはこの中間に引かれるでしょうが、それこそ事実認定の問題なのでそれがどこなのかを事前に確定的に述べることはできません。あらゆる裁判について、事後に民主的プロセスを通じて結果を是正していくことは可能であり、それが「裁判への民主的統制」であるとだけ言っておきます(最高裁裁判官の司法審査も民主的統制の一つだけど、まあ機能したことないからねえ)。

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    Takehiro OHYA

長期的な見通しやビジョンはあえて持たないようにしてる -- Linus Torvalds

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