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S.Ina, N.Tsunekawa, A.Nakamura, T.Noce, Expression of the mouse Aven gene during spermatogenesis, analyzed by subtraction screening using Mvh-knockout mice Gene Expression Patterns 3(2003)635–638
#細胞の話は泣きたくなるほどわからない....
Katuragiさんの日記 [srad.jp]経由のHotWiredの記事 [hotwired.co.jp]によると、「今回の研究の結果は、『米国科学アカデミー紀要 [pnas.org]』(PNAS)オンライン版に今週掲載される」ということだそうです。
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普通のやつらの下を行け -- バッドノウハウ専門家
原報どこだ? (スコア:5, 参考になる)
マウスの場合、ES細胞から最終的に個体発生まで行うことが可能なので、少なくとも原理的には「マウスES細胞は分化全能性」であるといわれてきました.しかしこれまでは生殖系の細胞にin vitroで分化させることに成功した人はいませんでした.それをブレイクスルーしたのが、"Derivation of Oocytes from Mouse Embryonic Stem Cells"、ペンシルバニア大の卵子形成の論文です。これは Science vol 300, 2003 May 23, p1251- [sciencemag.org]にarticleとして報告され、同号の表紙を飾ってます.原理的には今回のものと同じ考え方(というより今回のが真似たのでしょうが)で、生殖細胞の分化の過程でのみ働くエンハンサー(近隣の遺伝子の発現を増強するための遺伝子配列、前報ではOct4遺伝子のdistal enhancer)にGFPを結合させたものをES細胞に導入し、それを指標にして細胞を回収しています.Oct4とVasaでは発現の時期に差があるのでもしかしたら、そこらへんが今回の精子の報告では肝だったのかもしれません.
で、卵子の場合ですが、その後マウスの体内に戻すことなく、完全に培養ディッシュ中(in vitro)で卵母細胞形成まで持って行ってます.また(発生の専門家ではないので確認できないのですが)卵子が正常に分化する過程で見られる形態的な特徴(透明体の形成)なども正常に見られているとのことです.
さらに面白いことに、もともと卵細胞は受精以外の刺激によっても卵割を起こすことが知られてますけど(当然、受精してないから発生はしない)、このES由来卵細胞にも培養の過程で卵割を起こした(もっとも原報では「卵割に似た形態」と厳密な表現をしてますが)ものが見つかってるそうです.ただし、本当に受精して発生にまでいたるかどうかはまだ判っていませんけど.
精子に関しても、これがin vitroで行って、「あの」精子の形が形成されたのならば、もっとインパクトは大きかったのではないかと思います。ただ精子の分化は卵子よりもちょっとステップが複雑だそうなので、もしかしたら分化可能な培養条件が見つからず、それがネックになったのかもしれません.ただし、もちろんこれに生殖能力があるとなれば、とてもインパクトのある話になることは間違いありませんけど.
Re:原報どこだ? (スコア:1)
S.Ina, N.Tsunekawa, A.Nakamura, T.Noce, Expression of the mouse Aven gene during spermatogenesis, analyzed by subtraction screening using Mvh-knockout mice Gene Expression Patterns 3(2003)635–638
#細胞の話は泣きたくなるほどわからない....
Re:原報どこだ? (スコア:2, 参考になる)
いや、本当にもしESから精子が出来たことが証明できたならば、やっぱり(卵子には遅れたとはいえ)かなり注目される論文になっておかしくないと思います。話題性ではscience、natureあたりも狙えるかと。
ただそれゆえにかなり厳密な証明が要求されるでしょう。私もこの分野は耳学問なのですが、一つ気になるのは、本当にその精子がES細胞が単独で分化してできたものなのか、という点です。
というのは、幹細胞移植についてまだ議論されていることの一つなのですが、移植したときに「分化して出来た」と報告されていた細胞の中には、実はそうではなくて移植した細胞と宿主細胞が細胞融合して生じた倍数体があったという報告があります。
今回の実験はin vivoで行っているため、そういう幹細胞移植の問題点も考慮した上での評価が必要になるかと。特に、導入した外来遺伝子をマーカーにしていますが、その遺伝子が精子で発現するというのは、細胞融合でも起こりうることだと思います。そのためにも染色体のチェックが不可欠で、そのデータがあるのとないのではずいぶんと意味合いが違ってくると思いますね。
#まぁそこまで来たら生殖能力までチェックして併せて出す方が…ってライバル多いだろうし、そこまでは待てないか (^^;
Re:原報どこだ? (スコア:1)
Katuragiさんの日記 [srad.jp]経由のHotWiredの記事 [hotwired.co.jp]によると、「今回の研究の結果は、『米国科学アカデミー紀要 [pnas.org]』(PNAS)オンライン版に今週掲載される」ということだそうです。
Re:原報どこだ? (スコア:1)
おお、始原生殖細胞までの分化はin vitroで成功してるのですね。だったら、もう十分な成果だと言ってもいいかも。
#それでもPNAS止まりというのはちょっと個人的な評価が高すぎたか:-P
下の方ではあまり詳しく書かなかった「精子の方がちょっと複雑」というのと関連した話になりますけど、卵子と精子では最終的な分化が起こる時期に差があるんですよね。
卵子の方は母親から生まれる前にもう卵細胞としての分化は終わっててもうそれ以上増えることはなく、あとは思春期にホルモンによって成熟し、一生をかけて排卵されていきます。
一方、精子の方は最後の分化が起きる手前の段階で止まった状態で生まれてきて、思春期になるとそこから最終的に分化して精子が出来る、と。こっちの方は生まれた後でがんがん作ることが出来るようになってます。でなきゃ一回に数億匹なんてまかないきれませんから(笑
そのこともあって、下では「in vitroで精子が出来たら」と書いてはいましたが、内心、vitroだけでは無理だろうなぁ、とも思ってました。多分、ホルモンだけでなく周囲の細胞環境自体も精子形成には関わってるんじゃないかと。
で、改めて今回のESからの精子形成ですが、精子で始原細胞が出来たというのは、卵子でいうと卵母細胞が出来た程度には相当することです。実はそれよりも分化の程度は低いのですが、そもそも精子自体、生まれるまでに分化しおわってしまうわけではないので、そこまで分化したというだけでも精一杯なのでしょうから。