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タイプライターゴールドバーグ著『世界ウソ読本』(岩瀬孝雄訳、文芸春秋社、一九九六)に面白い記述がある。「アメリカのクリストファー・レイサム・ショールズがタイプライターを発明したのは一八七三年のことだが、当初キーの配列はアルファベット順だったという。となると、現在の配列はいよいよ奇妙なことに思われるではないか。いったい何が起こったのだろうか。すべてのキーボードの配列が、QWERTY……となったのはどういうわけなのか。実はこういうわけだ。アルファベット順の配列だと、スピードの速いタイピストが打った場合、キーが絡まることがわかったのである。ショールズは数学の教師をしていた義兄に相談をした。義兄は、並んで使われることの多い文字を離すことにした。こうすればわずかながら文字を打つ間隔がのびて、キーが絡まることがなくなるだろうと考えたのだ。ショールズは義兄のアイデアを採用することにした。その結果、キーの配列がQWERTY…という奇妙なものになったのである。英国タイプライター博物館の館長で、『タイプライターの世紀』(セント・マーチンス・プレス、一九七四年)の著者であるウイルフレッド・A・ピーチングによれば、『指の動きを最小限にするための科学的配列』などというのは真っ赤な嘘であるという。どんなでたらめな配列でも、”科学的には”現行のものよりましだろうとさえいってる。しかし、ショールズの配列は定着してしまい、誰も……ライバル会社さえ……ショールズの説に反対を唱えなかった。驚くべきことに、ショールズの配列に従わないタイプライターを売出したライバル会社はどこも潰れてしまったのだ。ショールズの配列に代わるべきものはこれまでのところ現れていない―科学的に研究された配列にすれば、さらにスピードアップされるという研究がいくつも出されているのに―。いずれにせよ、嘘に基づく説が定着してしまい、われわれは奇妙奇天烈なキーボードを使わざるを得ないのである」キーなどからむ可能性などない現代のパソコンやワープロの時代になっても、QWERTY……である。
ショールズは数学の教師をしていた義兄に相談をした。
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犯人は巨人ファンでA型で眼鏡をかけている -- あるハッカー
『電子楽器産業論』(田中健次、弘文堂、一九九八) 8章4節 p.246 (スコア:0)
Re:補足 (スコア:0)
伝統的楽器の愛好者は、自らの既成概念から電子楽器を不自然・不快なものとして暴き立てる、
だが「因習的な諸楽器に課せられた制限の排除」にこそ電子楽器の重視する点があるはずだ、
箒と掃除機を比べれば、誰もが掃除機の(騒音性などマイナス面を見ずに)効率性を評価するように、
電子楽器が開いた可能性に目を向けられてしかるべきだ、しかし実際はタイプライターの既成概念
(キーパンチャーに配慮した配列)の例のように、既に科学的検証で否定されても一度出来た既成概念は
なかなか覆せず、まして19世紀までに人間の叡智で改良を尽くされた伝統的楽器というバラ色に映る過去と
20世紀に誕生した電子楽器との冷静な比較となると尚更障害が大きい。
と、まあそのような全体の主張の中で孫引きした個所になります。
#まるまる「世界ウソ読本」じゃねえか、というツッコミはあるでしょうが、それは承知の上で
#楽器の本で引用されている例として、世界ウソ読本の該当個所の電子メモとして写してみました。
ショールズの義兄 (スコア:1)