</sect3> @@ -1092,7 +1096,7 @@ がフリーでないソフトウェアを指すときに使用する用語) をなくすんだ! という道徳的な衝動にかられる人もいましたが、 単に技術的な興味からフリーソフトウェアを開発している人もいました。 - また、他人と共同作業をするのが楽しいとか、 + また、同じ趣味を持つ人と共同作業をするのが楽しいとか、 有名になりたいとかいう理由の人もいたことでしょう。 しかし、このように本質的に異なる動機を持った人たちが お互いに悪影響を及ぼしあうことはありませんでした。 @@ -1109,7 +1113,7 @@ superior to the nearest non-free alternative; in others, it was at least comparable, and of course it always cost less. While only a few people might have been motivated to run free software on strictly -philosophical grounds, a great many people were happy to run it + philosophical grounds, a great many people were happy to run it because it did a better job. And of those who used it, some percentage were always willing to donate their time and skills to help maintain and improve the software.</para> @@ -1123,8 +1127,8 @@ フリーソフトウェアの思想に厳密に従うためにフリーソフトウェアを使用するという人は あまり多くなかったかもしれません。多くの人たちは、 単にそちらのほうが高性能だからという理由でフリーソフトウェアを選択していました。 - そしてそのような人たちの中には、 - ソフトウェアの保守や改善のために力を貸してくれる人も見られるようになりました。 + そしてソフトウェアを使う人たちの中には、 + そのソフトウェアの保守や改善のために時間と力を貸してくれる人が常にある程度以上いたのです。 </para>
[patch] (スコア:1)
ていただければ幸いです。
「カネで愛は買えない」のセクションにもいくつか気になる部分がありますが、
それはまた後ほど書きます。
--- ch04.xml.orig 2009-03-13 13:41:53.000000000 +0900
+++ ch04.xml 2009-03-13 17:24:30.000000000 +0900
@@ -1230,11 +1230,11 @@
メーリングリストでの議論や既に有効になっている合意をベースにしていることを明示するようにしましょう。
実際に記録するときは、
[patch] ch01 (スコア:1)
--- ch01.xml.orig 2009-03-13 13:41:53.000000000 +0900
+++ ch01.xml 2009-03-21 15:43:05.000000000 +0900
@@ -54,7 +54,7 @@
また、いつ「プロジェクトが失敗した」と判断するのかがはっきりしないのも
私たちが失敗について聞くことがない理由のひとつでしょう。
「そのプロジェクトが消滅した瞬間」というのを特定することはできません。
- 徐々に動きが鈍くなっていき、いつのまにか止まってしまっているのです。
+ 参加者が少しずつ他へ移っていき、プロジェクトで作業するのをやめるだけなのです。
「プロジェクトに対して最後に変更が加えられたとき」を知ることはできますが、
実際にその変更を加えた人は「それがプロジェクトに対する最後のコミットとなる」
とは決して思っていなかったことでしょう。
@@ -66,7 +66,7 @@
現在参加しているプロジェクトを捨ててもうひとつのほうに移動したとしましょう。
そして移った先のプロジェクトをどんどん成長させていきました。
この場合、元のプロジェクトは「消滅した」のでしょうか?
- それとも「あるべき場所に移動しただけ」なのでしょうか?
+ それとも「引っ越しただけ」なのでしょうか?
</para>
<!--
@@ -113,8 +113,8 @@
「どうやったら失敗するか」についても説明します。
それを知ることで、問題が発生したときに軌道修正ができるようになるでしょう。
本書を読み終えられた皆さんは、オープンソース開発において陥りがちな
- 落とし穴を避けるさまざまなテクニックを身に着けることでしょう。
- それにとどまらず、成功するプロジェクトの成長にかかわれるようになることを期待しています。
+ 落とし穴を避けるさまざまなテクニックだけでなく、
+ 成功しているプロジェクトの巨大化や保守をうまく扱うためのテクニックも身に着けていることでしょう。
成功というものはゼロサムゲームではありません。本書では、
いかにして競合プロジェクトを出し抜くかといったことは扱いません。
実際のところ、オープンソースプロジェクトを運営する上では
@@ -257,7 +257,7 @@
新参者がプロジェクトに参加しやすくするには、
ユーザー向けドキュメントや開発者向けドキュメントを整備したり
ウェブサイトを開いて初心者向け情報を掲載したり
- ソフトウェアのコンパイルをできるだけお手軽に行えるようにしたりといった作業が必要となります。
+ ソフトウェアのコンパイルやインストールをできるだけお手軽に行えるようにしたりといった作業が必要となります。
残念ながら、世の多くのプログラマーは
これらの作業を二の次にしてコードだけに注力しがちです。
理由はいくつかあります。
@@ -366,13 +366,13 @@
彼らは誰でもプロジェクトに参加しやすくなるような雰囲気作りを心がけています。
たとえ時にはそれが現在のメンバー間の連携を乱すことになったとしても。
彼らは何が失礼で何がそうでないのかをきちんとわかっています。
- そこが他のプロジェクトとは異なるところです。
+ その基準は他の文化におけるものとは大きく異なっているかもしれません。
最も重要なのは、長年そのプロジェクトに参加している人たちがこれらの考えを身に着けており、
プロジェクトがどうあるべきかという指針を大雑把につかんでいることです。
- 失敗するプロジェクトはたいてい、無意識のうちにこの基本から逸脱してしまいます。
- そして、デフォルトの振る舞いがどうあるべきかという共通認識を持つこともなくなります。
- こういう状態になると、いざ何か問題が起こったときにそれが急速に悪化してしまうようになります。
- これは、お互いの意見の相違を解決して何とかしようとする文化が確立されていないからです。
+ うまくいっていないプロジェクトはたいてい、無意識のうちにこの基本から逸脱しています。
+ また、デフォルトの振る舞いがどうあるべきかという共通認識を持っていないことが多いです。
+ こうなると、いざ何か問題が起こったときに状態が急速に悪化してしまうようになります。
+ 争いを解決するためのよりどころとなるべき確立された文化的行動様式を参加者が持ち合わせていないからです。
</para>
<!--
@@ -405,9 +405,9 @@
反対に、そのような背景を知らない人は、
プロジェクトを作成したりプロジェクトに参加したりする手続きを見て
非常に難しくてびっくりすることばかりだと感じられるでしょう。
- フリーソフトウェアの開発にかかわる人は飛躍的に増えてきていますが、
- その多くは後者 (つまり背景を知らない人) です。
- これは、ちょうど最近の移民文化と似ています。
+ フリーソフトウェアの開発にかかわる人は依然として飛躍的に増えつづけています。
+ したがって、後者に属する人 (つまり背景を知らない人) がたくさんいるのです。
+ つまり、主として新しい移民による文化だということです。
この傾向はもうしばらくは続くことでしょう。
もし自分も「背景を知らない人」のひとりだと思われるなら、
ぜひ次のセクションを読んでください。ここでは、
@@ -522,12 +522,13 @@
それよりも技術的な問題のほうが大きかったのです。
あるデータをどこかからどこかへ移動しようとすると、
現在に比べて非常に不便でやっかいでした。
- せいぜい、同じ研究室内や同じ会社の従業員同士で情報を共有するくらいが関の山だったのです。
- 目の前にいる人たちでなくみんなと情報を共有しようと思ったら、
- とたんに敷居が高くなってしまいました。
- この敷居を乗り越えるために、さまざまな手段が試みられました。
- 時にはディスクやテープを通常の封書でやりとりすることもありましたし、
- 時にはメーカー自身が間に入ってパッチのやりとりをしたりもしていました。
+ 研究所や企業によっては小さな構内ネットワークを持っており、
+ そこでは構成員の間で容易に情報を共有することができました。
+ しかし情報をどこの誰とでも共有しようと思ったら、
+ 高い敷居を乗り越えないといけませんでした。
+ 多くの場合、その敷居は実際に乗り越えられました。
+ 時にはグループ同士で連絡をとり、ディスクやテープを郵便でやりとりすることもありましたし、
+ 時にはメーカー自身が間に入り、パッチの取引所としての役割を果たすこともありました。
初期のコンピュータ開発者の多くが大学で働いていたことも幸いしました。
大学では、自分の得た知識をみんなに広めることがごく普通に行われていたからです。
しかし、データを共有するにあたって物理的な距離の隔たりが常に障害となりました。
@@ -564,12 +565,12 @@
strategy.</para>
-->
<para>
- 業界が成熟してくるにつれて、いくつかの変化が同時に発生しました。
+ 業界が成熟してくるにつれて、相互関係のあるいくつかの変化が同時に発生しました。
まず、さまざまなものがあったハードウェア設計が徐々に淘汰され、
いくつかの勝ち組に絞られていきました。
他より技術的に優れていたもの、他よりマーケティングが上手だったもの、
あるいはその両方を兼ね備えていたものなどが残ることとなったのです。
- と同時に (これは決して偶然とはいえないでしょうが)、
+ と同時に (これは全くの偶然というわけではありません)、
いわゆる「高級プログラミング言語」が台頭してきました。
これは、その言語で書いたプログラムを自動的に翻訳 (「コンパイル」)
し、さまざまなコンピュータ上で動かすことを可能とするものでした。
@@ -605,10 +606,10 @@
<para>
ここにきて、各メーカーはソフトウェアのコードに対する著作権を
より厳格に適用する必要に迫られることになったのです。
- もしユーザーが自由にコードを改変して周囲に配布しようとするなら、
+ もしユーザーが自分たちでコードを自由に共有し改変し続ければ、
今やハードウェアの「追加機能」として販売されるようになったものを
- 自前で再実装する必要が出てきました。
- 悪いことに、そのコードは競合他社の手に渡ってしまうかも知れません。
+ 自前で再実装してしまうかもしれません。
+ さらに悪いことに、そのコードは競合他社の手に渡ってしまうかも知れません。
皮肉にも、これらの出来事はちょうどインターネットが誕生したのと同じころに発生したのです。
ソフトウェアを共有する際の技術的な障害がようやく解消されたと思ったら、
そのときにはコンピュータ業界の常識が変わっていたというわけです。
@@ -816,14 +817,14 @@
-->
<para>
新しいオペレーティングシステムの開発のかたわら、Stallman
- は新しい著作権ライセンスの作成も行っていました。
- このライセンスは、コードが常に自由に扱えることを保証するものでした。
- GNU General Public License (GPL) は、法的な面からも賢明なものでした。
- コードの複製や変更には一切の制限を設けず、コピーしたものやその派生物
- (改造したものなど) も同じライセンスのもとで自由に配布できます。
- 何か制限が付加されることはありません。
- これは著作権法の形をとっていますが、
- 実際にはこれまでの著作権法とは正反対の効果を狙ったものです。
+ は新しい著作権ライセンスを考案しました。
+ 自分のコードが永久に自由であることを保証するためです。
+ GNU General Public License (GPL) は、法律における見事な柔術です。
+ コードの複製や変更には一切の制限を設けません。コピーしたものやその派生物
+ (改造したものなど) の配布は同じライセンスのもとで行われなければならず、
+ いかなる制限も付加されてはいけません。
+ このライセンスは著作権法を利用していますが、
+ 狙っている効果は伝統的な著作権とは正反対のものなのです。
つまり、ソフトウェアの再配布を制限するのではなく、たとえ作者であっても
<emphasis>再配布を制限すること</emphasis> 自体を禁止しているのです。
Stallman にとって、自分のコードを単にパブリックドメインにするよりも
@@ -834,8 +835,8 @@
そうされたところで元のコードは自由なままで残り続けるわけですが、
でも結局は Stallman の努力した結果が敵陣営
—独占的ソフトウェア—に利益をもたらすことになってしまいます。
- GPL は、フリーソフトウェアを保護主義的に守ろうとして考え出されたものです。
- そのため、自由でないソフトウェアが GPL のコードから一切の恩恵を受けられないようになっています。
+ GPL は、フリーソフトウェアに対する保護主義の一形式と考えることができます。
+ というのは、自由でないソフトウェアが GPL のコードを完全に好きなように利用することはできないからです。
GPL とその他のフリーソフトウェアライセンスとの関係については、
<xref linkend="legal"/> で詳しく説明します。
</para>
@@ -936,10 +937,12 @@
フリーなオペレーティングシステムを作ろうとしていたのは GNU だけではなかったのです
(たとえば、後に NetBSD や FreeBSD となるコードはこの時点ですでに開発が進められていました)。
Free Software Foundation の存在意義は、
- 彼らが書いたコードだけではなくその政治的な立場にもありました。
- フリーソフトウェア運動について語る際に、
+ 彼らが書いたコードだけにあるのではありません。
+ 彼らは政治的メッセージを言葉巧みに伝えました。
+ 利便性ではなく、信条としてのフリーソフトウェアを語ったのです。そのため、
プログラマーは政治的な面を気にせざるを得ないようになってきました。
- FSF の考えに異を唱える人でさえも、それを表明する必要がありました。
+ FSF と意見が異なる人でさえ、立場が違うということを明確にするためには、
+ 政治的な問題に足を突っ込まざるを得なかったのです。
FSF は、彼らのコードに GPL やその他のテキストを同梱することで彼らの思想を効率的に広めました。
彼らの書いたコードが広まれば広まるほど、
彼らのメッセージも広まることになりました。
@@ -979,7 +982,7 @@
ほとんどありませんでした。その中でも最も重要なもののひとつが
<firstterm>Berkeley Software Distribution</firstterm> (<firstterm>BSD</firstterm>)
でしょう。これは、徐々に Unix オペレーティングシステム
- —1970 年代後半時点では AT&T の研究プロジェクトとして独占化されていました—
+ —1970 年代の終わり頃まで AT&T における半ば独占的な研究プロジェクトでした—
を再実装しようという動きで、カリフォルニア大学バークレー校のプログラマーがはじめました。
BSD グループは「プログラマー同士お互いに手を取り合って団結しなければならない」
といった政治的な声明は出しませんでした。
@@ -987,9 +990,10 @@
さまざまな場所に散らばった開発者たちが協力し、Unix
のコマンドラインユーティリティやコードライブラリ、
そしてオペレーティングシステムのカーネル自体についても1から書き直していきました。
+ そのほとんどはボランティアによるものでした。
BSD プロジェクトは、イデオロギーを前面に押し出さないフリーソフトウェアプロジェクトとして
最も有名な例です。また、
- オープンソースの世界に参加しようとする開発者にとってもよい訓練の場となりました。
+ その後オープンソースの世界に残って活躍することになる多くの開発者のための訓練の場としての役割も果たしました。
</para>
<!--
@@ -1022,7 +1026,7 @@
world when done.</para>
-->
<para>
- 別の共同開発の例としては <firstterm>X
+ 別の盛んな共同開発の例としては <firstterm>X
Window System</firstterm> があります。これは
フリーでネットワーク越しに使用できるグラフィック環境で、
1980 年代半ばに MIT とハードウェアベンダーが共同で開発しました。
@@ -1040,6 +1044,7 @@
</para>
</footnote>
自体はフリーソフトウェアですが、
+ その主な目的は、いわば競争する参加企業間の試合の場をならすことであり、
独占的ソフトウェアの支配を終わらせるといった意図はありませんでした。
もうひとつの例を挙げましょう。GNU プロジェクトの数年前に開発が始まった TeX
です。これは、Donald Knuth によるフリーで高品質な組版システムです。
@@ -1051,8 +1056,7 @@
特に立場を表明していませんでした。彼は、単に
<emphasis>真の</emphasis> 目的 (コンピュータプログラミングに関する書籍の出版)
を達成するためのまともな組版システムがほしかっただけなのです。
- そして、自分の作ったものを一般に公開しないなどということは、
- 彼にとってはありえないことだったのです。
+ そして彼にとって、自分の作ったシステムを一般に公開しない理由はなかったのです。
</para>
</sect3>
@@ -1092,7 +1096,7 @@
がフリーでないソフトウェアを指すときに使用する用語) をなくすんだ!
という道徳的な衝動にかられる人もいましたが、
単に技術的な興味からフリーソフトウェアを開発している人もいました。
- また、他人と共同作業をするのが楽しいとか、
+ また、同じ趣味を持つ人と共同作業をするのが楽しいとか、
有名になりたいとかいう理由の人もいたことでしょう。
しかし、このように本質的に異なる動機を持った人たちが
お互いに悪影響を及ぼしあうことはありませんでした。
@@ -1109,7 +1113,7 @@
superior to the nearest non-free alternative; in others, it was at
least comparable, and of course it always cost less. While only a few
people might have been motivated to run free software on strictly
-philosophical grounds, a great many people were happy to run it
+ philosophical grounds, a great many people were happy to run it
because it did a better job. And of those who used it, some
percentage were always willing to donate their time and skills to help
maintain and improve the software.</para>
@@ -1123,8 +1127,8 @@
フリーソフトウェアの思想に厳密に従うためにフリーソフトウェアを使用するという人は
あまり多くなかったかもしれません。多くの人たちは、
単にそちらのほうが高性能だからという理由でフリーソフトウェアを選択していました。
- そしてそのような人たちの中には、
- ソフトウェアの保守や改善のために力を貸してくれる人も見られるようになりました。
+ そしてソフトウェアを使う人たちの中には、
+ そのソフトウェアの保守や改善のために時間と力を貸してくれる人が常にある程度以上いたのです。
</para>
<!--
@@ -1211,7 +1215,7 @@
無料のソフトウェアがすべてフリー (自由) であるとは限りません。
たとえば、1990 年代のブラウザ戦争の際に
Netscape と Microsoft はともにブラウザを無償でばらまき、
- それによって市場のシェアをかき乱そうとしました。
+ 市場のシェアを獲得しようと躍起になりました。
このどちらのブラウザも、"自由なソフトウェア" という意味でのフリーではありませんでした。
そのソースコードを見ることができなかったり、
あるいはたとえ見ることができたとしてもそれを改造して再配布する権利がなかったりしたのです。
@@ -1254,14 +1258,14 @@
しかし、英語がインターネット上での標準言語として使われている現状では、
英語の問題は、ある意味ではすべての人たちの問題であるともいえます。
この「フリー」という言葉の意味の履き違えがあまりにも広まってしまったので、
- フリーソフトウェア開発者は公式な声明を出すことにしました。
+ フリーソフトウェア開発者は決まり文句をつくり出しました。
"<emphasis>フリー (free)</emphasis> とは、<emphasis>自由 (freedom)</emphasis>
のことです。つまり、<emphasis>フリースピーチ (言論の自由)</emphasis>
というときの「フリー」であり、<emphasis>フリービール (無料のビール)</emphasis>
というときの「フリー」とは違います。"
しかし、何度も何度もこれを説明しなければならないのは大変です。
多くのプログラマーが、この「フリー」というあいまいな単語のせいで
- 自分たちのソフトウェアが正しく理解されないと感じるようになりました。
+ 自分たちのソフトウェアが世間に正しく理解されないと感じるようになりました。
</para>
<!--
@@ -1279,11 +1283,11 @@
<para>
しかし、問題はもっと深いところにありました。
「自由」という言葉には道徳的な意味が含まれています。
- 自由であることが目的なのならば、フリーソフトウェアがよりよいものになるのか
- 特定の状況において特定のビジネスで有益になるのか
- といったことはどうでもよかったのです。
- 単にその動機にちょっとしたよい副作用があっただけで、
- 基本的には技術的でも商業的でもなく、道徳的なものでした。
+ 自由であることが目的なのならば、フリーソフトウェアがよりよいものになろうが
+ 特定の状況において特定のビジネスで有益になろうが、
+ そんなことはどうでもよかったのです。
+ 単にその動機にちょっとしたよい副作用があっただけです。
+ 心底は技術的でも商業的でもなく、道徳的な動機だったのです。
さらに「自由という意味のフリー」という立ち位置は、
フリーなプログラムのサポートもしたいが別の独占的ソフトウェアの商売も続行したい
という企業にとってはちょっと不便なものでした。
@@ -1356,8 +1360,8 @@
OSI のウェブページは <ulink url="http://www.opensource.org/"/> です。
</para>
</footnote>
- OSI は、「フリーソフトウェア」という言葉そのものももちろん、
- 特に「フリー」という言葉に混乱の原因があるのではと考えました。
+ OSI は、「フリーソフトウェア」という言葉が混乱の元であるというだけでなく、
+ 「フリー」という単語が、より全般的な問題の徴候のひとつであると考えました。
フリーソフトウェア運動をより広めるためには、
何らかのマーケティング戦略が必要です。しかし、
道徳だの社会全体の利益だのといった言葉は
@@ -1375,10 +1379,10 @@
-->
<para><emphasis>
Open Source Initiative はフリーソフトウェアのマーケティングプログラムです。
- 「フリーソフトウェア」を、イデオロギーの小さな枠の中だけでなく
- 現実の世の中に広めるために存在します。
- 目指すところは変わりませんが、
- 負け犬的な考え方や象徴主義はありません。……
+ イデオロギーについて熱弁をふるうのではない、
+ 手堅く実際的な立場において「フリーソフトウェア」を広めるためのものです。
+ 勝算のある中身はそのまま、
+ 勝ち目の無い態度や象徴主義を変えたのです。……
</emphasis></para>
<!--
@@ -1443,6 +1447,7 @@
-->
<para><emphasis>
ハッカーたちにとっては、これは信じがたいことでしょう。
+ 技術者というのは、具体的で中身のあるものに置き換えて考える傾向があるからです。
しかし、何かを売るときにはイメージというものが重要なのです。
</emphasis></para>
@@ -1455,8 +1460,10 @@
-->
<para><emphasis>
マーケティングにおいては、見た目が重要となります。
+ 私たちが進んでバリケードを取り壊し、
+ 喜んで産業界と一緒に仕事をしようとしているように見せることは、
私たちの実際の振る舞いや信念、そしてソフトウェア自体と同じくらい
- 見た目も重視されるのです。
+ 価値のあることなのです。
</emphasis></para>
<!--
@@ -1492,14 +1499,14 @@
この文には、さまざまなツッコミどころがあります。
まず、「私たちの信念」とは書かれていますが、
その信念とはいったい何なのかということは巧妙に省略されています。
- ある人にとっては、よりよいコードを生み出すことが目的となるでしょうし、
+ ある人にとっては、オープンソースの手法はよりよいコードを生み出すという信念かもしれません。
あらゆる情報を共有すべきだという信念の人もいるかもしれません。
「盗人」という言葉は、(おそらく) 違法コピーのことを指しているのでしょう。
この言い方には異議がある人も多いことでしょう。
元の所有者がまだそれを保持しているのだから
「盗人」はおかしいのではないかと思われるかもしれません。
フリーソフトウェア運動が反商業主義だと非難される可能性については説明していますが、
- それが何かの事実にもとづくものなのかどうかには触れていません。
+ その非難が何かの事実にもとづくものなのかどうかには触れていません。
</para>
<!--
@@ -1514,8 +1521,9 @@
-->
<para>
別に、OSI のウェブサイトが矛盾していて紛らわしいと言っているわけではありません。
- そうじゃないんです。OSI が言っているのは、
- これまでのフリーソフトウェア運動が忘れていたことのひとつ、つまり「よいマーケティング」です。
+ そうじゃないんです。
+ これまでのフリーソフトウェア運動が欠いてきたものだと OSI が主張する、まさにそれの例になっているんです。
+ そう、「よいマーケティング」です。
「よい」とは、「業界で生き残っていける」という意味です。
Open Source Initiative は、多くの人々に彼らが待ち望んでいたものを与えました。
道徳的な十字軍ではありません。
@@ -1566,8 +1574,8 @@
Debian プロジェクトは 100% フリー (もちろん「自由」という意味です)
なコンピュータ環境を作ることを目標としていますが、
このように政治的な態度を明確に打ち出している組織でさえも、
- フリーでないコードも提供しています。これにより、
- 方向性が完全に一致しているわけではないプログラマーとも共同作業ができるようにしています。
+ フリーでないコードも提供しています。また、
+ 方向性が完全に一致しているわけではないプログラマーとも共同作業をしています。
</para>
</sect1>
@@ -1595,12 +1603,12 @@
フリーソフトウェアプロジェクトを運営するにあたって、
このような重い哲学的な内容を日々の作業で意識する必要はありません。
プログラマーも「みんなこの思想に同意すべきだ」なんていうように主張することはありません
- (いきなりそんなことを言い出すプログラマーは、
- どんなプロジェクトであってもうまくやっていけないでしょう)。
+ (そんなことを言うプログラマーは、
+ 自分がどんなプロジェクトでもうまくやっていけないことにすぐ気づくでしょう)。
しかし「フリー」と「オープンソース」の違いという問題があるということは意識しておきましょう。
- 参加者どうしがいざこざを起こす可能性を少なくしたり、
- 開発者の動機をよりよく理解したりし、
- プロジェクトをうまく取りまとめられるようになります。
+ ひとつには、参加者に反目するような内容の発言を避けるためです。
+ また、開発者の動機を理解するというのは、
+ プロジェクトをうまく取りまとめるための最良の方法 (ある意味、唯一の方法) だからです。
</para>
<!--
@@ -1689,7 +1697,7 @@
カネの問題は、プロジェクトが失敗する要因のうちのほんのひとつでしかありません。
どんな開発言語を選択するか、どんなライセンスを選択するか、
開発手順はどうするか、どんなツールを使用するか、
- あるいはプロジェクトをどのように宣伝するかなど、
+ あるいは新しいプロジェクトをどのように宣伝するかなど、
さまざまな要因がほかにも考えられます。
では、実際にプロジェクトを開始するにはどうしたらいいのか。
それを <link linkend="getting-started">次の章</link> で取り上げます。
Re:[patch] ch01 (スコア:1)
TAKAGI Masahiro a.k.a. m-takagi