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ペスト菌の DNA、600 年間で変化なし」記事へのコメント

  • http://dx.doi.org/10.1038/nature10549 [doi.org]

    記事の内容に関してですが、逆転写を行う上に細胞内で増殖するインフルエンザウィルスと比べるのはちょっとどうかと思います。逆転写はエラーが生じやすいし、ウィルスなら細胞内で異なる系統のゲノムが出会いやすいでしょう。細菌だと多重感染して宿主体内で出会っても、細胞壁という超えなくてはならない壁がありますので、系統間ゲノム組換えの難易度ははるかに高いはず。とは言え、大腸菌やその他細菌と比べても遅いとは思うので、重要な結果だと思います

    • ちょっと誤解があるようなのでコメントを.
      まずインフルエンザは逆転写を行いません.またペスト菌の変異率が大腸菌よりも際立って遅いということもありません.
      1系統しかない,というのは今回複数のサンプルを集めた中で,現在知られているペスト菌が14世紀のペスト菌の祖先であるという意味です.DIfferent lineageについての言及はペスト菌でみられた染色体レベルの大きな変異は他の系統の染色体を取り込んだりした(水平移行,例えば赤痢菌毒素を取り込んだO157のように)のではなく,同じ系統の細胞同士あるいは同じ細胞の中で起きたものであるという意味で,今回解読したペスト菌との関係で述べたものではありません.
      また変異箇所ばかりあつめている,というのは正確な言い方ではなく,今回の研究ではゲノム全体を解読しており,現在のペスト菌ゲノムとの系統関係を調べるときに違いのある場所だけを集めて系統樹作成用のソフトウェアにかけたということです.共通している部分は計算する意味がないですから.

      --
      kaho
      • by Anonymous Coward on 2011年10月15日 17時21分 (#2035113)

        誤解があるようですが、共通している部分を計算することに意味はあります。変異箇所を集めて系統解析を行うと、必ず分岐の信頼性は過大評価になる、という性質があるからです。まぁそんな性質は一部の系統学者しか知らないでしょうが、ブートストラップリサンプリングの際に各変異が100%サンプルされるようになるので当たり前ですね。ただMCMCのときにはそういうわけではないですが、MCMCによる系統推定では変異箇所だけを集めなくても信頼性が過大評価されるという性質が知られていますので、今回の場合は変わりません。

        それはさておき、インフルエンザはRNAからRNAを合成するタイプでしたか。ご指摘ありがとうございます。てっきり逆転写でDNAを作るタイプだとばかり思っていました。RNAからRNAを合成する酵素のエラー率はどの程度なのか気になるところです。

        different lineagesという表現は、人感染型ペストのbranch 1と2に対して著者達は用いており、少なくとも著者達は1系統しかない、という認識ではないでしょうね、ということです。たぶん記者は分かりやすくするつもりでそういう表現にしたのでしょうけど。「現在知られているペスト菌が14世紀のペスト菌の祖先」は「現在知られている(人に感染する)ペスト菌が14世紀のペスト菌の子孫」の書き間違いでいいですかね? しかしまぁ論文に書いてあることは「系統間の組換えがない」って点ですよね。組換えがない理由が相手となる「別系統」がないからだという書き方は明らかに誤解を生むでしょう。論文にはそんな記述はないはずです。

        親コメント
        • 系統樹作成の方法について解説有り難うございます.

          >組換えがない理由が相手となる「別系統」がないからだという書き方は明らかに誤解を生むでしょう。

          私はそう書いたつもりはありませんが,ここで言う「系統」というのがこのストーリーで言っている「系統」か,論文で触れられている現在のペストの「系統』かで整理しないと話が通じませんね.
          正確ではないでしょうが前者は種で後者は亜種と言い換えれば恐らくお互い誤解はなくなると思います.
          私が言ったのは亜種間での組換えの証拠はないという論文の記述であり,原因ではなくただの観察の結果です.

          --
          kaho
          親コメント

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