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論文はまず,よく知られたロータス効果(表面に微細な突起を多数作り空気を抱え込むことで,液体をはじく)による表面加工にはいくつか弱点がある,という指摘から始まります.挙げられているのは例えば
と言った点です.そしてこれらを解決する構造として提出しているのが今回の手法になります.
考え方はある意味非常に単純で,例えば油をはじきたいと考えたとき,水の上に1滴落とした油滴を考えると,こいつは水面の上をほとんど抵抗なくスルスルと移動できます.だからこれと同じ事を物体表面で行ってやればいい,と言うことになるわけです.
実際の構造としては,何でも良いから微細な孔のたくさんあるポーラスな構造を持ってきます.スポンジみたいなものでも良いですし,蜂の巣のように穴がいくつも空いた構造でもかまいません(ただし当たり前ですが,これらの穴のサイズは非常に小さい必要がある).で,ここに,はじきたい液体と混ざらない溶液を染みこませておく,と.例えば油をはじくために,スポンジ状のコーティング剤に水を染みこませた状況を考えましょう.当然ながら,スポンジ状の物質の表面は,化学的に水と親和性の良い置換基で修飾しておく必要があります(そうしないと,穴の中に水が入らない).
この構造は,微視的に見れば,穴がいっぱい空いてぼこぼこした構造の上に,水の膜が厚く張った状態となります.そのため,下のスポンジ状の構造が多少でこぼこしてようがなんだろうが,表面には影響がありません.従って,コーティング剤部分の作り方は多少ラフでもかまわないわけです.
さて,このコーティング剤+水の上に,油滴を垂らします.微視的に見れば,水の膜の上に油がのっているわけですから,当然上の油ははじかれます.そのため油滴は物体の表面にくっつかず,流れ落ちることになります.極端な言い方をすれば,「池の上から油を垂らしても,水槽の底には油がくっつかず,水面の上を漂って流れてくだけだよね」と言うようなものです.水をはじきたければ,表面のスポンジ状の構造の最表面を親油性に加工して,そこに油を染みこませておけばいいわけです.水を垂らしても,油が間に入っているんで表面にはくっつかず,油膜の上を水が滑って転がっていく,と.
水も油もはじきたい場合は,論文で行われているように,水とも通常の炭化水素類とも混じらないフロリナートのような液体を用いればOK.パイプラインの内張に使うのなら,輸送したい液体と混ざらないものを選ぶ必要があります.だからまあ同じ表面加工が全ての液体に対し使えるわけではありませんが,はじきたい対象さえ決まっていれば,それに応じた表面を作ることができるよ,と.
この手法の優れている点は,
などです.
一番最後の,蟻とジャムがずり落ちてく実験って必要なのかなあ……いや,面白いから良いんですけど.
で,ここに,はじきたい液体と混ざらない溶液を染みこませておく,と.
って事は逆に水滴を回避する構造も出来るんですかね。親水性のスポンジ構造を窓ガラス表面に構築しておけば、水滴にならずに広がって視界を確保しやすくなるとかそういう奴が。The Telegraphの動画の一番最後に乾燥した面が出てたけど、一旦馴染んだら滴を作らずに上手く受け流してるっぽいし…ああでも、揮発性の液体だとダメな気がする。親水性の不揮発溶液…も馴染んだ後に置換されて揮発するからダメだろうし、はじく種類の加工じゃないと制限が激しそうだ。
>親水性のスポンジ構造を窓ガラス表面に構築しておけば、水滴にならずに広がって視界を確保しやすくなるとかそういう奴が。
そういう構造は超親水性コーティングの一種として知られておりまして,例えば水酸基(-OH)を結構持つような分子やナノ粒子からなるコーティング剤などがあります.#多分スポンジ状にはしなくても良い……と思います.
こういう構造ですと,表面に突き出た多数の水酸基が水分子と非常に親和性が高いため,空気中の水分子を取り込み表面に薄い膜となっていて防汚効果があるとか,水がかかった際に薄い膜として広がるため視界を遮らない,といった特徴があり,窓材だとかそういうものに使われています.光が当たった際のTiO2なんかもそうですね.紫外線が当たると光励起で表面に水酸基か何かが一時的にできて,しばらくは超親水性を示すとかそんなメカニズムで.
車のワイパーが要らなくなるとか、雨の中でスポーツしても視界が保てるメガネとか、過酷な状況でもバッチリ写せるカメラ/ビデオのレンズとか、夢が広がリング技術?
海やプールでメガネ着用してても違和感の無い世界キタコレ?#銭湯や温泉でメガネ着用だとアッーの人に思われたり
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クラックを法規制強化で止められると思ってる奴は頭がおかしい -- あるアレゲ人
概要 (スコア:5, 参考になる)
論文はまず,よく知られたロータス効果(表面に微細な突起を多数作り空気を抱え込むことで,液体をはじく)による表面加工にはいくつか弱点がある,という指摘から始まります.
挙げられているのは例えば
と言った点です.そしてこれらを解決する構造として提出しているのが今回の手法になります.
考え方はある意味非常に単純で,例えば油をはじきたいと考えたとき,水の上に1滴落とした油滴を考えると,こいつは水面の上をほとんど抵抗なくスルスルと移動できます.だからこれと同じ事を物体表面で行ってやればいい,と言うことになるわけです.
実際の構造としては,何でも良いから微細な孔のたくさんあるポーラスな構造を持ってきます.スポンジみたいなものでも良いですし,蜂の巣のように穴がいくつも空いた構造でもかまいません(ただし当たり前ですが,これらの穴のサイズは非常に小さい必要がある).
で,ここに,はじきたい液体と混ざらない溶液を染みこませておく,と.例えば油をはじくために,スポンジ状のコーティング剤に水を染みこませた状況を考えましょう.当然ながら,スポンジ状の物質の表面は,化学的に水と親和性の良い置換基で修飾しておく必要があります(そうしないと,穴の中に水が入らない).
この構造は,微視的に見れば,穴がいっぱい空いてぼこぼこした構造の上に,水の膜が厚く張った状態となります.そのため,下のスポンジ状の構造が多少でこぼこしてようがなんだろうが,表面には影響がありません.従って,コーティング剤部分の作り方は多少ラフでもかまわないわけです.
さて,このコーティング剤+水の上に,油滴を垂らします.微視的に見れば,水の膜の上に油がのっているわけですから,当然上の油ははじかれます.そのため油滴は物体の表面にくっつかず,流れ落ちることになります.
極端な言い方をすれば,「池の上から油を垂らしても,水槽の底には油がくっつかず,水面の上を漂って流れてくだけだよね」と言うようなものです.
水をはじきたければ,表面のスポンジ状の構造の最表面を親油性に加工して,そこに油を染みこませておけばいいわけです.水を垂らしても,油が間に入っているんで表面にはくっつかず,油膜の上を水が滑って転がっていく,と.
水も油もはじきたい場合は,論文で行われているように,水とも通常の炭化水素類とも混じらないフロリナートのような液体を用いればOK.
パイプラインの内張に使うのなら,輸送したい液体と混ざらないものを選ぶ必要があります.だからまあ同じ表面加工が全ての液体に対し使えるわけではありませんが,はじきたい対象さえ決まっていれば,それに応じた表面を作ることができるよ,と.
この手法の優れている点は,
などです.
一番最後の,蟻とジャムがずり落ちてく実験って必要なのかなあ……
いや,面白いから良いんですけど.
Re:概要 (スコア:1)
で,ここに,はじきたい液体と混ざらない溶液を染みこませておく,と.
って事は逆に水滴を回避する構造も出来るんですかね。
親水性のスポンジ構造を窓ガラス表面に構築しておけば、水滴にならずに広がって視界を確保しやすくなるとかそういう奴が。
The Telegraphの動画の一番最後に乾燥した面が出てたけど、一旦馴染んだら滴を作らずに上手く受け流してるっぽいし…
ああでも、揮発性の液体だとダメな気がする。
親水性の不揮発溶液…も馴染んだ後に置換されて揮発するからダメだろうし、はじく種類の加工じゃないと制限が激しそうだ。
Re:概要 (スコア:2)
>親水性のスポンジ構造を窓ガラス表面に構築しておけば、水滴にならずに広がって視界を確保しやすくなるとかそういう奴が。
そういう構造は超親水性コーティングの一種として知られておりまして,例えば水酸基(-OH)を結構持つような分子やナノ粒子からなるコーティング剤などがあります.
#多分スポンジ状にはしなくても良い……と思います.
こういう構造ですと,表面に突き出た多数の水酸基が水分子と非常に親和性が高いため,空気中の水分子を取り込み表面に薄い膜となっていて防汚効果があるとか,水がかかった際に薄い膜として広がるため視界を遮らない,といった特徴があり,窓材だとかそういうものに使われています.
光が当たった際のTiO2なんかもそうですね.紫外線が当たると光励起で表面に水酸基か何かが一時的にできて,しばらくは超親水性を示すとかそんなメカニズムで.
Re: (スコア:0)
車のワイパーが要らなくなるとか、雨の中でスポーツしても視界が保てるメガネとか、過酷な状況でもバッチリ写せるカメラ/ビデオのレンズとか、夢が広がリング技術?
Re: (スコア:0)
海やプールでメガネ着用してても違和感の無い世界キタコレ?
#銭湯や温泉でメガネ着用だとアッーの人に思われたり