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スラドの諸兄諸姉を頼って初歩的な疑問をするのですが、シュレディンガーの猫って1時間に猫が死ぬ装置が作動する確率が50%として、1時間後ではなく、2時間後とか30分後とかを取り扱う場合はどうなるのですか?生きている確率25%と死んでる確率75%が重なり合ってる状態みたいな感じなんでしょうか。それと、アルファ線を感知する装置というのは、確率状態だったものがその状態を終え、確定した事実を観測する装置ではないのですか?人が直接的には見ていなくても、人が観測を目的に作った装置が無人で観測している状況はやはり観測という行為なのではないのですか?そうなら箱の中を誰も観測しなくても、装置がアルファ線を観測するか否かで箱の中の世界は常に決定されているのではないのでしょうか。そもそも観測という行為自体が量子の世界を捉え切れていない不完全な巨視的な世界における行為なのではないですか?そして人が量子の世界を完全には観測できないという事が巨視的な系で量子的な効果が破壊される要因と。仮に人が完全に量子の世界を観測できる、というか人が認識できる前提なら、(b)のような結論もありそうな気がします。その(b)を受け入れると、別の意味で、神はサイコロを振らない事になるのかもしれません。
やはりphasonさんの日記には場違いな恥さらしコメントだったかしら。
>1時間に猫が死ぬ装置が作動する確率が50%として、>1時間後ではなく、2時間後とか30分後とかを取り扱う場合はどうなるのですか?
「死んだ状態」と「生きている状態」が独立で,両者の間での行き来がない&外部からの影響で状態が変わらない,という事を仮定します.要するに,変なタイミングでの観測っぽいことが起きないし,死んだ状態と生きた状態との間で振動もしないとします.※「生きた状態と死んだ状態の間の振動」ってのは変なものですが,実際に実験可能な電子のスピンなどだと二つの状態間を振動する事があります.
半減期がTであるある粒子が崩壊すると装置が作動する,とするなら,単純に半減期の考え方を用いて,
装置が時刻tまでに作動していない確率P=exp(-t/T)作動している確率P'=1-exp(-t/T)
で表されます.ですので時刻tでの猫の状態としては,
猫(t)= √2 (√P 生きている猫 + √P' 死んでいる猫)
のような感じになるんじゃないかと.ですからおっしゃられている
>生きている確率25%と死んでる確率75%が重なり合ってる状態みたいな感じ
で良いかと思います.まあ細かい事を言うと,「死んでいる状態」はさらに「時刻1に死んだ状態」,「時刻2に死んだ状態」……などの重ね合わせになるはずですが.
>アルファ線を感知する装置というのは、確率状態だったものがその状態を終え、>確定した事実を観測する装置ではないのですか?
量子論の基本で言えば,ある粒子が崩壊したのか崩壊していないのかは観測するまで確定せず,「崩壊した状態」と「崩壊していない状態」の重ね合わせになります.ですので,「確定した事実を観測する」というよりは,「重なった状態として存在している系を,観測することにより『そのうちの一つの状態』に落とし込む」装置になります.
>人が直接的には見ていなくても、人が観測を目的に作った装置が無人で観測している状況は>やはり観測という行為なのではないのですか?
現代の物理学者の大部分はこれに同意していると思います.※かつては「(人の)意識」というものに特別視して,意識が見る事が「観測」である,というような人たちもいましたが,今ではかなり少数派だと思います.
>そうなら箱の中を誰も観測しなくても、装置がアルファ線を観測するか否かで>箱の中の世界は常に決定されているのではないのでしょうか。
これはその通りでもあり,そこが観測問題の難しいところです.装置は確かに観測により波束を収縮させますが,その装置自体も数多くの電子や原子核により構成されており,それらは量子論に従っているはずです.という事は「観測する装置自体も,観測されない限り状態が確定しないのではないか?」というのがこの手の思考実験が突きつけるポイントです.とすると無限の退行を引き起こしてしまい,じゃあ結局何がどうしていつ「観測」&「状態が確定」するのか?というのが問題点です.
>そもそも観測という行為自体が量子の世界を捉え切れていない不完全な巨視的な世界における行為なのではないですか?>そして人が量子の世界を完全には観測できないという事が巨視的な系で量子的な効果が破壊される要因と。
この辺は逆のような気がします.不完全にしか観測できなければ,複数状態間の重ね合わせは生き残るはずです.そうなると,完全なる確定には至らず,いくつもの状態が混ざり合ったものがずっと続く事になるのでは.結局,量子論の問題は「観測=巨視的な系相互作用すると,なぜ状態が一つに絞り込まれるのか?」というところになります.これが少数粒子からなる小さな系だと,それら少数粒子からなる系による「観測(っぽいもの)」以降も重ね合わせが継続する事が知られています.※例えば,ある粒子Aのスピンが↑なのか↓なのかを別な粒子Bが相互作用で見ると,出てくるのは「Aの↑と相互作用したB」と「Aの↓と相互作用したB」の「重ね合わせ状態」になり,一つの状態には収縮しない.
この辺を打破しようと,「波動関数が非常に自由度の大きい系(例えば非常に粒子数の多い巨視的な系)と相互作用すると,状態が自発的に一つに絞り込まれる」という事を理論的に示そうという試みは結構あるのですが,完全な成功には至っていません.#ある程度それっぽい事は見えるが,穴が残る.
丁寧でわかりやすい解説ありがとうございました。phasonさんの貴重な時間をいただいてしまうとは……。以下は独り言です。せっかく解説いただいたのですから拙くてもフィードバックくらいはしないと……。
> 観測する装置自体も,観測されない限り状態が確定しないのではないか?
なぜ人の観測を特別視するのかがよくわかりません。もし人が箱の中を常に観測していたとして、途中から退屈凌ぎにはじめた思考実験に没頭してしまい、その観測者が目の前の、見えているはずの猫の生死を把握できない状態になったとします。(観測者は猫が死ぬ時の気配も感じとれないものとします)。
また独り言です。猫の死が視覚~脳~意識と伝わっていくと考えた時(上の例では可視化していますが、普通に箱を開けても視覚~脳~意識と伝わる間のラグはあるはずです)、脳がキーポイントだとすると脳の量子論的な部分が相互作用の要素なのかもしれません。そもそも意識というものを問わなければ、猫の死というのは人のみが認識するものではない気もします。呼吸や心拍、瞳孔を確認するような事は人しかしないでしょうが、動物だって箱の中の猫が動かない事は確認できるでしょう。また死臭のようなものが漂えば、昆虫やバクテリアだって猫の死体の存在を認識するでしょう。脳(バクテリアまで考えるなら……わかりません)自体に量子論的な意味を見いだすなら、世界はあらゆる生命によって観察されている事になるんじゃないでしょうか。というか……シュレディンガーの猫というのは、箱の中の猫=世界の一観察者の死のタイミングで世界が確定されているのではないでしょうか。
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Stableって古いって意味だっけ? -- Debian初級
ド文系です (スコア:0)
スラドの諸兄諸姉を頼って初歩的な疑問をするのですが、
シュレディンガーの猫って1時間に猫が死ぬ装置が作動する確率が50%として、
1時間後ではなく、2時間後とか30分後とかを取り扱う場合はどうなるのですか?
生きている確率25%と死んでる確率75%が重なり合ってる状態みたいな感じなんでしょうか。
それと、アルファ線を感知する装置というのは、確率状態だったものがその状態を終え、
確定した事実を観測する装置ではないのですか?
人が直接的には見ていなくても、人が観測を目的に作った装置が無人で観測している状況は
やはり観測という行為なのではないのですか?
そうなら箱の中を誰も観測しなくても、装置がアルファ線を観測するか否かで
箱の中の世界は常に決定されているのではないのでしょうか。
そもそも観測という行為自体が量子の世界を捉え切れていない不完全な巨視的な世界における行為なのではないですか?
そして人が量子の世界を完全には観測できないという事が巨視的な系で量子的な効果が破壊される要因と。
仮に人が完全に量子の世界を観測できる、というか人が認識できる前提なら、(b)のような結論もありそうな気がします。
その(b)を受け入れると、別の意味で、神はサイコロを振らない事になるのかもしれません。
やはりphasonさんの日記には場違いな恥さらしコメントだったかしら。
Re:ド文系です (スコア:1)
>1時間に猫が死ぬ装置が作動する確率が50%として、
>1時間後ではなく、2時間後とか30分後とかを取り扱う場合はどうなるのですか?
「死んだ状態」と「生きている状態」が独立で,両者の間での行き来がない&外部からの影響で状態が変わらない,という事を仮定します.
要するに,変なタイミングでの観測っぽいことが起きないし,死んだ状態と生きた状態との間で振動もしないとします.
※「生きた状態と死んだ状態の間の振動」ってのは変なものですが,実際に実験可能な電子のスピンなどだと二つの状態間を振動する事があります.
半減期がTであるある粒子が崩壊すると装置が作動する,とするなら,単純に半減期の考え方を用いて,
装置が時刻tまでに作動していない確率P=exp(-t/T)
作動している確率P'=1-exp(-t/T)
で表されます.ですので時刻tでの猫の状態としては,
猫(t)= √2 (√P 生きている猫 + √P' 死んでいる猫)
のような感じになるんじゃないかと.ですからおっしゃられている
>生きている確率25%と死んでる確率75%が重なり合ってる状態みたいな感じ
で良いかと思います.
まあ細かい事を言うと,「死んでいる状態」はさらに「時刻1に死んだ状態」,「時刻2に死んだ状態」……などの重ね合わせになるはずですが.
>アルファ線を感知する装置というのは、確率状態だったものがその状態を終え、
>確定した事実を観測する装置ではないのですか?
量子論の基本で言えば,ある粒子が崩壊したのか崩壊していないのかは観測するまで確定せず,「崩壊した状態」と「崩壊していない状態」の重ね合わせになります.
ですので,「確定した事実を観測する」というよりは,「重なった状態として存在している系を,観測することにより『そのうちの一つの状態』に落とし込む」装置になります.
>人が直接的には見ていなくても、人が観測を目的に作った装置が無人で観測している状況は
>やはり観測という行為なのではないのですか?
現代の物理学者の大部分はこれに同意していると思います.
※かつては「(人の)意識」というものに特別視して,意識が見る事が「観測」である,というような人たちもいましたが,今ではかなり少数派だと思います.
>そうなら箱の中を誰も観測しなくても、装置がアルファ線を観測するか否かで
>箱の中の世界は常に決定されているのではないのでしょうか。
これはその通りでもあり,そこが観測問題の難しいところです.
装置は確かに観測により波束を収縮させますが,その装置自体も数多くの電子や原子核により構成されており,それらは量子論に従っているはずです.という事は「観測する装置自体も,観測されない限り状態が確定しないのではないか?」というのがこの手の思考実験が突きつけるポイントです.
とすると無限の退行を引き起こしてしまい,じゃあ結局何がどうしていつ「観測」&「状態が確定」するのか?というのが問題点です.
>そもそも観測という行為自体が量子の世界を捉え切れていない不完全な巨視的な世界における行為なのではないですか?
>そして人が量子の世界を完全には観測できないという事が巨視的な系で量子的な効果が破壊される要因と。
この辺は逆のような気がします.
不完全にしか観測できなければ,複数状態間の重ね合わせは生き残るはずです.そうなると,完全なる確定には至らず,いくつもの状態が混ざり合ったものがずっと続く事になるのでは.
結局,量子論の問題は「観測=巨視的な系相互作用すると,なぜ状態が一つに絞り込まれるのか?」というところになります.これが少数粒子からなる小さな系だと,それら少数粒子からなる系による「観測(っぽいもの)」以降も重ね合わせが継続する事が知られています.
※例えば,ある粒子Aのスピンが↑なのか↓なのかを別な粒子Bが相互作用で見ると,出てくるのは「Aの↑と相互作用したB」と「Aの↓と相互作用したB」の「重ね合わせ状態」になり,一つの状態には収縮しない.
この辺を打破しようと,「波動関数が非常に自由度の大きい系(例えば非常に粒子数の多い巨視的な系)と相互作用すると,状態が自発的に一つに絞り込まれる」という事を理論的に示そうという試みは結構あるのですが,完全な成功には至っていません.
#ある程度それっぽい事は見えるが,穴が残る.
Re: (スコア:0)
丁寧でわかりやすい解説ありがとうございました。
phasonさんの貴重な時間をいただいてしまうとは……。
以下は独り言です。せっかく解説いただいたのですから拙くてもフィードバックくらいはしないと……。
> 観測する装置自体も,観測されない限り状態が確定しないのではないか?
なぜ人の観測を特別視するのかがよくわかりません。
もし人が箱の中を常に観測していたとして、途中から退屈凌ぎにはじめた思考実験に没頭してしまい、
その観測者が目の前の、見えているはずの猫の生死を把握できない状態になったとします。
(観測者は猫が死ぬ時の気配も感じとれないものとします)。
Re: (スコア:0)
また独り言です。
猫の死が視覚~脳~意識と伝わっていくと考えた時
(上の例では可視化していますが、普通に箱を開けても視覚~脳~意識と伝わる間のラグはあるはずです)、
脳がキーポイントだとすると脳の量子論的な部分が相互作用の要素なのかもしれません。
そもそも意識というものを問わなければ、
猫の死というのは人のみが認識するものではない気もします。
呼吸や心拍、瞳孔を確認するような事は人しかしないでしょうが、
動物だって箱の中の猫が動かない事は確認できるでしょう。
また死臭のようなものが漂えば、昆虫やバクテリアだって猫の死体の存在を認識するでしょう。
脳(バクテリアまで考えるなら……わかりません)自体に量子論的な意味を見いだすなら、
世界はあらゆる生命によって観察されている事になるんじゃないでしょうか。
というか……シュレディンガーの猫というのは、箱の中の猫=世界の一観察者
の死のタイミングで世界が確定されているのではないでしょうか。