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#個人的な素朴な疑問ですが『「本当ならice-VIII'相になりたいのに,そのためには水素結合ネットワークの大規模な再構築が必要になって,~』というところがすごく奇妙に見えます。
プルシャンブルーのような配位結合の組み換えが大変なのは分かるのです。配位結合は原子間距離が共有結合並みに接近しているから、隣接原子との干渉や原子軌道の方位などが絡んで、配位子側の結合の方向が一定になる、共有結合並みに接近した結合を切るには、より配位しやすい配位子が隙間から入り込めないといけない。
水素結合は電気の分極から生じる緩い結合じゃないですか。それなのに高圧化でもO-H-Oの角度が180度になるのが安定という不思議。周りにOがいっぱいあるなら、分極だけで結合しているなら、ホイホイ乗り換えできても良さそうなのに。
>水素結合は電気の分極から生じる緩い結合じゃないですか。
水素結合も結構強いですよ.配位結合の典型的な強さ(これもまあ,何の配位かによって大きな差がありますが)が確か40-60 kJ/mol程度なのに対し,水中での水の水素結合の強さが20 kJ/mol程度ですので,同じオーダー程度の強さはあったかと.
また距離に関しても,例えば手元のMn3+にNCS-が配位しているような錯体でMn-Nの結合長が2.14 Åぐらいと,Mn3+のイオン半径0.78 Åと窒素原子のファンデルワールス半径1.55 Åの和2.33 Åより0.2 Å短い程度ですが,氷(Ih)におけるO-H-Oの結合長は2.76 Åと,酸素原子だけのファンデルワールス半径の和3.04 Åよりも0.3 Å程度も短くなっています.実際にはその間に水素原子もあるわけで,かなりギチギチに詰まっています.
また,水素結合は単なる分極間の引力ではなく,複数の効果の合わさったものです.例えば水素原子の量子性や,水素を介した三原子間での共有結合(3中心結合),軌道間の反発,そして古典的な分極による引力などが結びついた結果として生じるものです.このため,結合方向にそこそこ強い制約がかることが知られています.(この辺は,計算精度の向上もあり今でもちょくちょく議論が出ています)
あとはまあ,この実験自体が低温で行われており,運動エネルギーが小さいという点,連続した一つのネットワークが,分断され交差した2つのネットワークという対称性的にも大きく異なるものに転移することが難しい点などが効いているのかと.
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ice-VIII'相の二重ネットワークが謎 (スコア:1)
#個人的な素朴な疑問ですが
『「本当ならice-VIII'相になりたいのに,そのためには水素結合ネットワークの大規模な再構築が必要になって,~』
というところがすごく奇妙に見えます。
プルシャンブルーのような配位結合の組み換えが大変なのは分かるのです。
配位結合は原子間距離が共有結合並みに接近しているから、隣接原子との干渉や
原子軌道の方位などが絡んで、配位子側の結合の方向が一定になる、
共有結合並みに接近した結合を切るには、より配位しやすい配位子が
隙間から入り込めないといけない。
水素結合は電気の分極から生じる緩い結合じゃないですか。
それなのに高圧化でもO-H-Oの角度が180度になるのが安定という不思議。
周りにOがいっぱいあるなら、分極だけで結合しているなら、ホイホイ乗り換えできても
良さそうなのに。
Re:ice-VIII'相の二重ネットワークが謎 (スコア:2)
>水素結合は電気の分極から生じる緩い結合じゃないですか。
水素結合も結構強いですよ.
配位結合の典型的な強さ(これもまあ,何の配位かによって大きな差がありますが)が確か40-60 kJ/mol程度なのに対し,水中での水の水素結合の強さが20 kJ/mol程度ですので,同じオーダー程度の強さはあったかと.
また距離に関しても,例えば手元のMn3+にNCS-が配位しているような錯体でMn-Nの結合長が2.14 Åぐらいと,Mn3+のイオン半径0.78 Åと窒素原子のファンデルワールス半径1.55 Åの和2.33 Åより0.2 Å短い程度ですが,氷(Ih)におけるO-H-Oの結合長は2.76 Åと,酸素原子だけのファンデルワールス半径の和3.04 Åよりも0.3 Å程度も短くなっています.実際にはその間に水素原子もあるわけで,かなりギチギチに詰まっています.
また,水素結合は単なる分極間の引力ではなく,複数の効果の合わさったものです.
例えば水素原子の量子性や,水素を介した三原子間での共有結合(3中心結合),軌道間の反発,そして古典的な分極による引力などが結びついた結果として生じるものです.このため,結合方向にそこそこ強い制約がかることが知られています.
(この辺は,計算精度の向上もあり今でもちょくちょく議論が出ています)
あとはまあ,この実験自体が低温で行われており,運動エネルギーが小さいという点,連続した一つのネットワークが,分断され交差した2つのネットワークという対称性的にも大きく異なるものに転移することが難しい点などが効いているのかと.