広島県のEM菌水質浄化実証試験結果報告書やEM菌推進論者への対応などが開示される 62
科学的な対応 部門より
広島県が2003年までに「EM菌による水質浄化実証試験」を行っていたそうだ。サイエンスライターの片瀬久美子氏が情報開示請求を行ってこの試験結果報告書を入手、公開している(広島県「EM菌による水質浄化実証試験結果報告書」)。
この実験では「EM活性液」や「EM団子」などの、一部の団体が効果を主張している製剤を用いた水質改善効果を評価しているが、報告書によるとこれらの投入によるpHの変化は確認されたものの、BOD(生物化学的酸素要求量)の改善やCOD(化学的酸素要求量)の減少といった水質改善効果は見られず、全窒素(T-N)濃度の変化、全リン(T-P)濃度の変化についても特にEM菌の影響は見られないという結論となっている。
藻類の増殖抑制効果や底質改善効果についても有為な結果は見られず、総評として「EM活性液及び EM団子を使用することによる水質改善効果、藻類増殖抑制効果及び底質の改善効果は認められなかった」と記されている。
また、EM研究機構という組織がこの研究結果にクレームを入れたそうなのだが、広島県がどのようにこれに対処したのかを記した文章についても片瀬氏は開示請求を行って入手、その経緯を紹介している。
EM研究機構は調査を行った広島県保健環境センターに対し、実証試験結果に対し疑問を呈する照会文書を3回提出したという。一方広島県側は実証試験に不備はないとし、科学的評価についても報告書にすべてまとめられているとして特別な対応を行わなかったという。また、広島県知事は「実証試験の結果は説明しているのに、いまさら質問されても、その回答に誠意がないと言われても困りますね」「放っておきましょう」などと対応したそうだ。さらに「実験室では効果は現れない」といった反論に対する「想定問答集」も用意していたそうだ。