液体のりなどに使われるポリビニルアルコールをがんの放射線治療に活用する新手法 24
そういう手法があるのか 部門より
液体のりなどの主成分として使われるポリビニルアルコール(PVA)を使用するがん治療法を東京工業大学の研究者らが考案した(東京工業大学の発表、朝日新聞)。
がんの治療法の1つに、中性子捕捉療法というものがある。これはがん細胞にホウ素10(10B)を取り込ませた上でそこに中性子を照射することでホウ素の核反応を発生させ、それによって発生するエネルギーを使ってがん細胞を殺傷するという手法だが、現在この治療に使われているホウ素化合物のボロノフェニルアラニン(BPA)はがん細胞に長期的に留まることができないという課題があった。PVAを利用することでこの課題を解決できるという。
BPAは、がん細胞上に多く発現している「LAT1」というタンパク質を介してがん細胞内に取り込まれる。LAT1がBPAを取り込む際にはがん細胞内のアミノ酸が排出されるが、細胞外のBPA濃度が低下するとアミノ酸の代わりに細胞内のBPAを排出してしまう現象が起こるという。しかし、BPAをPVAに結合させたPVA-BPAを使用したところ、細胞内に取り込まれたPVA-BPAは エンドソーム・リソソームという細胞内小器官内に局在するようになり、その結果がん細胞内に取り込まれるホウ素量は3倍になり、またがん細胞内のホウ素濃度を高いまま長期的に維持できるようになったという。
PVAは安価であり、さらにPVA-BPAは簡単に合成できるという。がん細胞内のホウ素濃度を高く維持できることで、より深い部位にあるがん細胞に対しても中性子捕捉療法を適用できるようになるという。