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日記

akiraaniの日記: 書籍の非破壊複製がまずい理由 10

日記 by akiraani

おそらく、大半の人はことの重要性が全く分かってないと思うんだけど、これを理解するためには音楽CDの世界で過去何が起きてどういう形で対処されたのかを知る必要がある。

現在、みんな当たり前のように音楽CDをTUTAYAなどでコピーしてきてオーディオプレイヤーなどに取り込んでいるが、そこに至るまでには著作権法を改正する必要があるまでの大騒ぎがあった。

まあ、最終的にどういう風に落ち着いたのかというと、だいたい以下のような形になっている

  1. レンタルショップが貸与権使用料のような形でレコード協会にみかじめ金を払う
  2. 主要な録音専用メディアおよび録音機で私的録音録画補償金制度を運用する
  3. 著作権法30条1項を追加し、公衆サービスからのコピーを違法化する

実は、この対処方法というのは書籍ではどれも不可能に近い

まず、1と2についてだが、音楽業界はテレビやラジオなどのメディアに対する権利管理の必要性があったため、包括的にこの手の問題を処理するシステムが存在した。早い話が60年以上前からJASRACがあって、そういう権利関係の把握がアーティストとレコード会社の契約ベースで行われており、権利を金で貸与するというスタイルが業界に浸透していた。
私的録音録画補償金にしろ、レンタル料金にしろそういった商慣習がすでにあったからこそ実現が可能だったわけだが、残念ながら書籍の世界はこのような「権利を契約して切り売りする」というった習慣がない。また、出版権という制度では権利を切り売りするというビジネスがやりにくいという事情もある。
これは出版権という法体系とそれに基づく商慣習からくる問題なので、おいそれと変えることができない。
また、みかじめ金をいくら払えばいいのか、という問題も浮上してくる。音楽の場合は対象はレンタルCDだったので「売り上げの何割」といった形で一応の決着を見たが、公立の図書館のように年間200円で借りたい放題、運営は税金で賄っていますよ、みたいなところからそのような形で徴収してもまともな額にはならず解決にはならない。
また、音楽CDの頃はメディアと言えば音楽専用メディアであったが、現在はそうではないという問題もある。iPod課金問題で何年もにわたってもめた挙句、ダウンロード違法化なるとんでもない着地点に落ち着いたという実例をまた繰り返すことになってしまいかねない。

では、3はどうか。実はこれも実際やろうとすると大問題になる。
まず、著作権法30条1項について説明しよう。これは簡単に言うと「公衆サービスとして提供されている複製サービスを利用して著作物を複製する場合、私的複製の範疇から除外する」というもの。早い話が、レンタルショップにCDダビング装置を置いてそこから録音したら指摘だろうとなんだろうと著作権法侵害ですよ、と言いたいために追加された条項だ。
現在、著作権法30条1項は、附則で図画及び文書は当面の間対象外ということになっているので、この附則だけを廃止してしまえば、書籍もその対象になる。実際にそのような提言は出ているが、現時点では与太話のたぐいでしかない。
これの何が問題かというと、コンビニのコピー機が違法機器扱いになるのである。コンビニのコピー機はそのものズバリ図画及び文書を複製するための機械で、著作物だからコピーしないといったシステムは搭載されていないし、コピーサービスを行う時に著作物かどうかをチェックするというのは不可能だ。かといって、ユーザーに違法性を認識した上で自粛してもらうなどという運用というのは現実的ではない。
となると、コンプライアンスを順守するためにはコンビニはコピー機そのものを撤去する必要があることになる。コンビニ業界がこれに納得するかと言われると、おそらく納得しないし説得も不可能だろう。

では、いざ書籍で非破壊複製が一般家庭で可能になれば、もしくは可能であるかのように権利者が認識したら……。
いったいどのような混乱が起きるのか及びもつかない。最悪、図書館の本を自宅に持ち帰ることが禁止になるといった処置が行われる可能性すらある。
実際問題として、図書館やから借りた本をデジタルだろうがアナログだろうが、安価で複製できてはまずいのだ。ブックオフで買った本をスキャンして即日また売り払ったりすることが横行すれば、回り回って新刊の書籍が提供されなくなってしまう。
これは技術や現行法で正当性があるかどうかは全く別のレイヤの問題であり、ユーザーやベンダが声高に正当性を叫んでも無駄なのだ。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by chachaireya (44989) on 2011年11月25日 2時36分 (#2055865)
    指摘だろうとなんだろうと

    私的だろうとなんだろうと
  • by Anonymous Coward on 2011年11月24日 17時07分 (#2055640)

    海賊版が出回るくらいなら、と出版社側が紙ベースから緩やかなDRM付き電子書籍に
    大きく舵を切ってくれれば・・・と期待するのは甘過ぎますかね?

    • by Anonymous Coward
      ●海賊版が出回るんだからと、経費回収のために書籍の単価が上がる
      ●海賊版が出回って、経費回収もおぼつかず、出版社が倒産する
      ●海賊版対策のために、スキャン/コピー画像が読めなくなるぐらいものすごく汚くなる製紙技術/印刷技術が開発され、結果として経費がかかって書籍の単価が上がる

      ……あとはなにがあるかな?
    • by Anonymous Coward

      大手出版と有名作家以外は普通に廃業・転職するよ。
      食えないんだったら仕事として成り立たないんだから。

      • by Anonymous Coward

        なんかもう
        「そうしたけりゃ、そうしろよ」
        としか思わないのが現状。

  • by Anonymous Coward on 2011年11月25日 6時29分 (#2055873)

    ブックオフで買った本をスキャンして即日また売り払ったりすることが横行すれば、回り回って新刊の書籍が提供されなくなってしまう。

    まず小説とかコミックとかをブックオフで買って、読んですぐにブックオフへ売る層。
    この層は、出版・著者への利益貢献という点では、
    非破壊複製がメジャーになっても、今とほとんど変わらない(貢献が小さいまま)と思われる。

    次にブックオフや書店で買っても今までは売らなかった層。
    この層は、何割かが複製の実現によってブックオフへ売るようになる(と考えられる)が、
    中古市場への本の流通量が増えるため、中古本の買い取り価格が下がり、
    スキャナの導入コストがペイできなくなる=思ったよりこの層が増えない可能性はないだろうか?
    #CD(ドライブ)と違い、本の場合は装置を追加で導入する必要があるのだ!

    図書館やから借りた本をデジタルだろうがアナログだろうが、安価で複製できてはまずいのだ。

    こちらに関しては、技術書などは確かに影響があるかもしれない。

    • 中古市場への本の流通量が増えるため、中古本の買い取り価格が下がり、

      元々ブックオフの買取価格は一部新刊or人気作品以外は10円以下ですから、影響は微々たるものでしょう。
      買っても売らない人にとって、最大の問題は自宅の書庫スペースです。
      そういう人は本に対する愛着が強いですから破壊複製に抵抗がありますが、非破壊複製ができるのであれば、多少の投資は厭わないでしょう。
      あなたは、非破壊スキャナの導入コストとブックオフへの売却代金を比べていますが、正しく比較すべきは、書庫スペースの維持費(専有面積/家賃・ローン)です。

      今書庫にある本を非破壊複製して、ブックオフに売却(投棄)、また新しい本を買って…というサイクルが生まれ、中古本の版権料が入ってこないという問題がさらに顕在化することになります。

      親コメント
  • by Anonymous Coward on 2011年11月28日 8時56分 (#2057040)

    そもそも公立だろうと私立だろうと「図書館から借りれば無料」という発想がおかしいとも。

    一回借りるごとに一定量の金額を著者に払う仕組みがあればこんなことは問題にならないし、
    そうでない現状では図書館に入れること自体が著者にとって大きな問題になる。

    • by Anonymous Coward

      無料?
      誰もが、図書館で借りられるわけじゃないよね。
      その土地で、税金はらってる人が図書館を利用できるだよね。

    • by Anonymous Coward

      そこで、再販制度に絡んできちゃうわけですよ

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アレゲはアレゲを呼ぶ -- ある傍観者

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