ken_non_sumの日記: 6: 著者のいうことを聞きなさい! 5
今期特に注目していたわけではなかったが、中大多摩キャンパスが映ってる、というだけの理由で『パパ聞き』を視聴している。
夏休み、大学一年生の主人公のアパートに、航空機事故に消えた姉の遺児たちが転がり込んでくる、というより、一家離散をきらった主人公が引っ張り込んできて生活する、というと「松智洋はまた孤児を主人公にハーレムラノベを書くために、ついに親まで殺したか」という誹りもきこえてきそうだ。しかしその遺児三姉妹がかわいいのは見た目だけで、主人公はこの新たな同居者たちに振り回されながらどうにかひと夏を過ごしてゆく、というのが現在までの放送分。
ネットでの評判があまり、というよりかなり良くないので驚く。
それも、否定的な意見の多くは扱われているシチュエーションの非現実性を理由にしている。
しかしそれらは概して「あり得ないこと」と「あってはならないこと」とを混同しているようだ。
この二者は別であって、ボクとしては、少なくとも後者は単純に否定されるべきではないと考える。
あるいはむしろ、その「あってはならない」事態こそが物語の源泉ともいえよう。
;; あいにく原作は未読なので、実際それでもって物語がうまく動いているのかは知らない。
;; しかし、『パパ聞き』の非現実性の最たるは、どう見ても弱小サークルの「ロ研」が学生会館に部室を得ていることだと思うのだが。
あと、上で書いた「かわいいのは見た目だけ」というところも、批評という姿勢とはまた別に、単純な意味で視聴者に嫌われる要因のようだ。それでも現実の子供よりはよっぽど「いい子」たちなのだが、多少間が抜けていたり、生意気だったり、元気が空回りしていたりする。
三次元のうんざりする現実を二次元美少女のベールで覆って、それも、これまでよりも薄めに覆うことで、多少苦味に顔をしかめつつも、明るく生活してゆく姿を硬めの輪郭で描こうとしているのだろう、という見方をしたら買い被り過ぎかも知れない。ただ、三姉妹の年齢を幼くしたのも、そういう見ていて苛立たしい不器用な人物を自然に描くためとも思える。あと、恋愛が物語の中心に来てしまうのを避ける意図もあるだろう。
だいたい上のようなことを考えていた矢先、著者へのインタビューが掲載された。
一読して、わが意を得たりと思った。
著者と視聴者との意識のずれが前作「迷い猫オーバーラン!」のときとはまた違った形で起こっているのが興味深い。
それにしても、これに限らず、ライトノベルやそのアニメに対する否定的な意見というのはどこか論点に違和感のあるものが少なくない気がする。
具体的に言うのは難しい、というのは、ボクが読んでいる作品はあんまり俎に上がってこないからなのだが、ひとつ思ったのは、主人公に期待を寄せ過ぎるというところだ。
『君望』の孝之を評して「キングオブへたれ」、あるいは『スクイズ』における「誠死ね」のような前例がエロゲにはあったが、それが洒落にならないくらい先鋭化して、そういう弱気、あるいは不器用な主人公を描くこと自体を否定する、そういう主人公の作品が良くない作品だと言わんばかりの主張が散見される。
それを強く意識したのは、何かと話題のとあるまとめサイトに載った『はがない』についての記事と、それを受けた次のまとめ記事だ。
前者の記事は、当時の新刊の内容が否定的に紹介されたところに、その好悪の印象が様々に語られている様子を載せている。その「否定的な紹介」というのが、読めば分かることだが、主人公をはじめとした登場人物らが知らない顔を持っていた、とか、本心を隠して場をしのいでいたとか、そういう、反感をいだかれる態度をとっていたことが発覚する、というものだったのだ。
興味深いのは、それに対し、後者の記事は、その紹介が作品内容の曲解であるという理由で、これを印象操作だと批判する意見を肯定的に取り上げている点だ。
ボクとしては、おそらくライトノベルについてはより肯定的で深い見識をもつと期待される後者がこのような記事を編集したことに驚き、呆れた。曲解でなかったならば、否定的に捉えられるのも仕方ないとでも言うのか。
オタク、ないしはヲタクというのはもっと人の心の弱さには敏感であったように思っていただけに、こういう身の丈に収まってないマッチョなモラル意識の発露には嫌悪しか覚えない。
実は、後者の元のスレッドには、むしろその紹介の解釈を肯定的に支持する、ないしはその紹介によって作品に興味をいだいた旨の書き込みも少なくないので、全体としては悲観したものでもないと思う。しかしそれだけに、なおさら、そうした意見のあることを紹介しなかった後者の記事に疑念を禁じ得ない。
ボクにだって、イヤだなと思う作品の十や二十はあるけれども、それはボクの領分の外にある限り干渉すべきものごとではないし、逆にボクの領分に入ってこようということが(想定しづらいが)もしあるとすれば、「キライだから」というのはそこでは排除の十分な正当性をもっているはずである。あるいは、強いていうなら、個人の領分がそのようなものであるべきだ、というのがボクにとってのモラルである。どうして権威や常識や道徳といったご大層なものを持ち出して自説を補強しなければならないというのか。
それにしても、ああいう学園都市というのはそばを通るだけでわくわくする。
もっとも、自分が学生として通うなら市街地にあってほしいところだが。
2/17 015 JST 追記
[Re: 集英は角川や電撃に勝てるのかな…… (#2100682) from kitakitsune]
中学生に、地に足ついた生活感を期待するのがそもそもの間違い、というのがボクの意見です。
冗談はさておき、子供っぽさのネガティヴな側面を描くのに、ある程度強調されている部分はあると思います。もともとの暮し向きが豊かだったようすを描いてあるので、それとうまくリンクさせられればなおよいのでしょうけれど。
そして、それにイライラすることは正しいことだとも思います。というより、上でも書いたように、視聴者をイライラさせたくてああいう描きかたをするのでしょう。
これが、子供たちが男の子だったら、単純に叱りつけて済んでしまうところを、女の子三姉妹にしたために、18 そこらの青年の身には、どこかおっかなびっくりな態度で接してゆかざるを得ないわけで、簡単には収拾しません。視聴者が女の人のばあい、そういう遠慮がないだけに、いっそう苛立ったりするかも知れませんね。
これから、そのイライラの芽をどうやって摘んでゆくのか、というところをうまく描ければいい見せ場になると思います。親戚との確執をどうにかするという話に集約して済ませてしまいそうな気もしますが。
集英社は漫画ではひとり勝ちみたいなものですから、ライトノベルにどこまで注力するつもりかははかりかねます。
わけのわからないサークルが学内でそれなりの地位を得ていることはむしろよくあることなのだったりする
学生会館の建て替えと管理強化さえなければ、あるいはボクも……いえ、なんでもありません。
300 JST 追記
[Re: 原作読者としては (#2100707) from AC]
コメントありがとうございます。
お読みになった方の具体的な感想というのは興味深いところです。
上で紹介したインタビューにも、やはりそのあたりを意図して、まず莱香と先に出会わなければならなかった、とあります。とはいうものの、アニメだと第 1 話で、春にロ研メンバーと出会うくだりから一気に夏まで跳んでしまいますから、大学内での生活については描きかたが物足りないというのもうなづけます。空を探す第 5 話で、仁村が自分の都合にかまわず協力してくれ、また瀬古部長がアルバイトを紹介してくれるほど、祐太が彼らと親密になっているのを唐突と感じた視聴者も少なくなかったようですし。
それらをおいても、ここまでの話で、祐太が莱香に、外面的なこと以外でも惹かれているというふうに読みとるのは、たしかに難しい気がします。
集英社はラノベは片手間な風味ですが、講談社はどうなるんでしょうかねえ。
三大なんとかラノベのうちふたつまでが既に完結してしまいました。ひとつはレーベルごと消えてしまい、もうひとつのところもかつての勢いはありません。
そう考えると、いつまでも続きの出ない残りひとつを抱える SD 文庫はなかなかなんじゃないか、という気もしてきます。
漫画は好評らしいのが救いですが、醜悪祭以後はどうなるのか、が気になります。
;; リンさんが死ななかった、というより、切彦が殺さなかったのにはちょっと納得がいかない。
講談社は……こんな Tweet があったのを思い出しました(時系列順)。
vhysd 講談社ラノベ文庫の帯の色使いがMF文庫と似すぎと思ったのは俺一人じゃなかったようだ。間違えて買わせようとしてると言われるレベルだとは思う
3ヶ月前 webから
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vhysd @touno なんつーか、志が低すぎますね……。ガガガのほうが志があるぶんマシというか、音羽のやることじゃない
3ヶ月前 webから tounoへの返信
ノベルス、ファウストの方向と別に、つまり星海社と別に立てる必要があったのやら。
まぁしろうとが勘繰っても仕方ありません。
そして我々は一迅社に逃避するのだ!
T澤氏はさすがに良い作家を連れてくるなあと思うのです
同感です。
2000 JST 追記
[Re: ターゲットが違うんじゃない?(#2101085) from AC]
主人公の性格うんぬんの、上の『はがない』の件は一例として挙げたのであって、たとえば『俺妹』でどのヒロインと親密になるのか、という話の中で破られた本の画像がアップロードされたりとか、そういうことも意識して書いたものです。だから、「主人公の出来が良すぎる」みたいな文句に対してもボクは疑念をもっているわけです。
とはいえ、その前にだって「下級生 2」や「かんなぎ」の件があって、それでもあの頃はまだ悪趣味な冗談くらいに捉えて済ませられていたので、やはりボクはボクで識らず、毒されてきていたのでしょう。作品内容に不寛容であるのと似た、気持のゆとりのなさに。
そうなった理由はよく分かりませんが、とにかく、それで少しばかり上では不用意に帰納的な物言いをしてしまったようです。『はがない』の一件をふと思いだしてどうしても書きたくなったところ、無理に話を筋立てようとしてそういう表現になってしまいました。
だから、その主人公は不甲斐無さをdisられつつも、不甲斐無いからこそ読まれているはず。
もしかしたら、不甲斐無い主人公に重ね合わせた自分に対する苛立ちの発露かもしれない。もしも本気で不甲斐無い主人公を忌避する人が居たら、それはそもそもターゲットじゃない。
もしもそんな読者ばかりなら、その作品は売れてないし、編集者も作家に対して、
「弱気、あるいは不器用な主人公」で書く事を諦めるよう言うでしょう。
冷静な洞察です。
上でも書いたように、たとえばまとめ記事の元のスレッドにおいてさえ、冷静な、こういって差し支えなければ「まとも」な感想が大半であるのに、そういう文脈をきちんと捉えずに過激な表現ばかりに注目するので、変に悲観的になったり、過剰に怒りや嫌悪を覚えたりしてしまう、ということなんでしょう。
そうはいっても、妙に男性的過ぎるモラルを背景にしたような主張というのも、やはりあると感じます。あとは、やたらと才能に恵まれた、少なくとも、そういう設定がなされた登場人物が多いとか。
平凡な人間があがくような物語は門前払いされる、なんて話もきこえてきますし。
そのおっしゃる表現を借りるならば、「自分を重ねられる程度にへたれ」なのに「リアリティを考えられない程度に超人」であることが求められることが少なくないのかな、という気がするのです。
その矛盾のために、なおさら、身の丈に収まっていない主張というふうに思えてきて、単に、作品世界にナイーヴにモラルを尺度として持ち込んで批判と称することの愚かしさ以上に、その身勝手さにも怒りを覚えてしまいます。
でも、よくよく考えればこれらも結局ネット上の与太話でしかないのでした。
;; そもそも、ライトノベルの感想のやりとりなんて現実でする機会も稀でしょうけれど。
ボク自身、全体をうんぬんし得る程読んでいるわけでもなければ、そういうステレオタイプに迎合、少なくとも、ナイーヴに迎合した作品に遭遇したこともありませんから。
……なんだか、ただの独りずもうだったのかも知れません。
結局、ネットの影響というのはどの程度でどんな具合なのか、なんてことは、消費者がわからは知りようがありません。だから、具体的な問題ひとつひとつにあたってゆくことぐらいしかできない、性急な一般化は許されないのでしょうね。これからものを言うときには、そのあたりにつねに留意しようと思います。
;; でも「自分を重ねられる程度にへたれ」なのに「リアリティを考えられない程度に超人」って、たとえば中村主水とか、漫画なら「シティーハンター」とか、割と古典的なヒーロー像ともいえようか。
;; でも、成長途上の十代を扱うには馴染まない気がして。
;; まぁでもそれは個人的な心情であって、上で言っているのは、そういう性格づけが良くない、といっているのではなくて、そういう性格づけでなければならない、という主張が良くない、ということだと念押ししておきます。
集英は角川や電撃に勝てるのかな…… (スコア:2)
とりあえず飯を食うてえとコンビニでなんだか凄いことになっちゃったぞ的なことになったり、
では自炊するかてえと包丁の扱いはアレでフライパンを焦がしあちこちをひっくり返し、
挙句あの所帯で毎日洗濯機を回そうとしたり下着をクリーニングにかけようとしたり、
という、地に足ついた生活感のすっぽり抜けた生活の描写はもううんざりなのですよ、
作ってる方にしたってそんな独身暮らしの経験が全くないわけではありますまいに。
おまけに舞台にしてるのが生活感をすっかり漂白したような都市であるところの立川一帯というのですから。
原作がアレなのか原作→アニメの変換過程でアレなのか、やっぱりSD文庫だからな……なのか。
# わけのわからないサークルが学内でそれなりの地位を得ていることはむしろよくあることなのだったりする
原作読者としては (スコア:0)
私の場合、どちらかと言うとロ研がらみの描写の部分がいただけませんでしたね。
それ以外は3姉妹の可愛さも理不尽さも良く出てるし良いと思うのですが。
でも、やはり主人公が3姉妹に対し父性として対峙する為のカウンターとしての
よよよの人の魅力が出ていないというか。
集英社はラノベは片手間な風味ですが、講談社はどうなるんでしょうかねえ。
最初に持ってきた傭兵達はなかなかに強力な面子ではあるのに、その後が
続きませんしね。まあ、早いところキリカの2巻を出せと言う事なんですが。
#そして我々は一迅社に逃避するのだ!
#T澤氏はさすがに良い作家を連れてくるなあと思うのです
自分はすこぶる好感だったので (スコア:0)
ネットの評判とか何も調べていませんでしたが、評判が悪いのは意外でした。
子供っぽさがリアルに描写されてて、関心したものですが。
# 五十嵐さん演技マジぱない
Re: (スコア:0)
現実からはるかにかけ離れてる「よつばと」のほうがウケがいいんでしょう
ターゲットが違うんじゃない? (スコア:0)
> 弱気、あるいは不器用な主人公を描くこと自体を否定
おそらく、ラノベに限らずティーンズ向けの作品全般において、
「弱気、あるいは不器用な主人公」でなければ読者の共感を得られず、入り口で掴み難いと言う問題があり、
出来・不出来はともかく、ほとんどの作品が「弱気、あるいは不器用な主人公」になっているはず。
(実際には、リアリティを考えられない程度に超人か、自分を重ねられる程度にへたれかの二択でしょうか。)
だから、その主人公は不甲斐無さをdisられつつも、不甲斐無いからこそ読まれているはず。
もしかしたら、不甲斐無い主人公に重ね合わせた自分に対する苛立ちの発露かもしれない。
もしも本気で不甲斐無い主人公を忌避する人が居たら、それはそもそもターゲットじゃない。
もしもそんな読者ばかりなら、その作品は売れてないし、編集者も作家に対して、
「弱気、あるいは不器用な主人公」で書く事を諦めるよう言うでしょう。