日米欧などがサイバー犯罪条約に署名 9
ストーリー by Oliver
諸刃の剣 部門より
諸刃の剣 部門より
takusi 曰く、 "Internet Watchの記事によると、ブダペストで開催されているサイバー犯罪国際会議(なもんがあったのね)において、インターネット犯罪を取り締まるためのサイバー犯罪条約に、日米欧など30カ国が署名したとのこと。この条約では、コンピュータウィルス、知的所有権、児童ポルノなどに対する犯罪に対応する。そのために、各国が証拠データの保存や通信傍受などに協力する。
国際的な規模で盗聴(通信傍受と言っている)が行われるとしたら怖いですね。いくら犯罪のためとは言え、犯罪かどうかを判断するのは、中立足り得ない国家なのですから。"
ウィルスならまだしも知的所有権といえばDCMAみたいに自分の国では合法でも他の国では違法かもしれない。そんな時、国家は自国民の権利を守って強力要請を蹴ってくれるだろうか?国民の生命と財産を守る、という国家としての絶対の正義すら守れん国にはできなさそうだ。
アメリカの新しい対テロ法(クラッキング行為含む)なんて、対象となる行為が外国で外国人により、第三国に対して行われても、つまり米国がまったく係わらなくても、逮捕/起訴できるってんだから。国際法と自決権はどうなってしまったんだ。
グローバリゼーション (スコア:2, 興味深い)
# コメントしていたので、今回は慎重に行きますが、
# 関連のある話でもあるので…
>この条約では、コンピュータウィルス、知的所有権、児童ポルノなどに対する犯罪に対応する。そのために、各国が証拠データの保存や通信傍受などに協力する。
いわゆる「組織犯罪の国際化」に対処するためとの建前でこれらの条約が続々と出来ていることに注目すべき時期にきていると思います。
確かに、組織犯罪は国際化していますが、しかし、それは現象の断片でしかない。
このような条約が出来た背景には、いわゆる「グロバリゼーション」と言われている、経済や政治の国際化が絡んでいます。
グロバリゼーションが進む中で、急速に文化・経済や思想の多様性や独自性が失われている事と、それによって生活基盤や自由権が脅かされている人が対抗を始めている事こそが、これらの条約が出来た真の背景であると考えた方がいいでしょう。
# やっと、これらの条約や児童ポルノ禁止法の「見直し」
# で基盤が脅かされる日本のクリエータも立ち上がる様ですし。
# 来月半ばにも何らかの動きがあるでしょう。
>国際的な規模で盗聴(通信傍受と言っている)が行われるとしたら怖いですね。いくら犯罪のためとは言え、犯罪かどうかを判断するのは、中立足り得ない国家なのですから。"
その通りだと思います。
国家が恐れているのは犯罪の国際化ではなく、市民の国際化であり、価値観の多様化が維持される事だからだと思うのですが。
グロバリゼーションの本質とは、経済的動機に基づく価値観の世界的な画一化であるからです。
インタネットを始めとする世界的な交流は、異文化の尊重や交流を急速に広めたという「陽」の部分があり、今はまだ、それが主流ですが、これは、価値観や文化が画一化していないと完成しないグロバリゼーションとは本質的に相容れない物です。
文化の交流は、既に指摘されている事ですが、今までの文化を破壊する事と繋がる物であり、それは今までの資本主義的な文化や思想も例外ではない。
知的所有権一つ取っても、最低でもサイバースペースでは全員共有の方向に向かいつつあり、それによって経済的損害を受ける事を恐れた側(それは企業であったり国家であったりするのですが)がグロバリゼーションを錦の御旗にして「共有」を国際的な犯罪として扱っていると考えればわかりやすい。(つまりは、日本の著作権法の改悪やアメリカのDMCAは共通の根っ子にあるという事です。)
そういう事を考えると、今は企業・国家と市民との間での価値観や文化の衝突という激動の時代に入りつつあるのではないかと思うし、それはどう決着されるのか予想できない問題ではないかと思うのですが。
Re:グローバリゼーション (スコア:2)
>国家が恐れているのは犯罪の国際化ではなく、市民の国際化であり、価値観の多様化が維持される事
現実に国境を越えての犯罪が増えているのは統計上明らかですし、経済的な活動領域の拡大に伴って民事上の権利保護の必要性は高まる一方だと思います。それを国家や企業と個人との対立関係として捉えるのは、いき過ぎた相対化のように思えます。
Re:グローバリゼーション (スコア:1)
>SCANの記事 [yahoo.co.jp]にも出ていますが、米国内でも先に成立した
>SCANの記事 [yahoo.co.jp]にも出ていますが、米国内でも先に成立したUSA PATRIOT Act [loc.gov]で、
>これまで州ごとの裁判所に必要だった電子メールの捜索令状が連邦裁判所で一括請求可能になった例などを見ると、
>人間の活動領域の拡大にあわせた適正な立法処置と言えるのではないでしょうか?
結局、盗聴法の時にも議論になった事なんですけど、どこまでの範囲を「犯罪」や「監視対象」とするかという、一番重要な部分が曖昧かつ、十分な議論をしないままに進んでいる事が最大の問題なんですよ。
現状では、非常に当局(やそれと繋がる企業)にとって都合のいい運用が可能であることに問題の核心があると思うのですが。
簡単にいうならば、「犯罪のおそれあり」で令状が取れる状況や、従来ならば民事的に解決すべきだった事案を一方の価値観で犯罪として認め、取り締まれる状況は法手続き上もまずくないかと考えるし、元コメントで提示されている資料はそれを補強する物ではないかと考えるのですが。
>現実に国境を越えての犯罪が増えているのは統計上明らかですし、 >経済的な活動領域の拡大に伴って民事上の権利保護の必要性は高まる一方だと思います。
まず、「統計上明らか」とするならばそのソースを示し、そのソースの背景について議論を行なうべきではないかと考えますが。
又、「民事上の権利保護」が目的ならば、この様な刑事的な手続きで保護するべきではないと考えますが。
行き過ぎた知的所有権の保護が、ユーザの基本的な権利を侵したり、市場の独占を生み出して大きな社会的な問題になっている(例えばDisneyやMicrosoftが過去10年でどれだけの問題を起こしてきているか考えてみて欲しい)事の弊害こそが国際条約で制限されるべき状況にきていると思うのですが。
>それを国家や企業と個人との対立関係として捉えるのは、いき過ぎた相対化のように思えます。
NAPSTERの問題一つ取っても、あれは国家を後ろだてとした企業の価値観とユーザやユーザ側に立つ表現者の価値観の対立から起きた問題だし、(私はWarezを擁護しないが)ソフトの海賊版の流通やポルノや暗号の流通をめぐる問題にしても、取り締まる側や規制する側とされる側の明確な価値観の相違が引き起こした問題だと思うのですが。
そういう事を考えると、この問題をとらえる時に「行き過ぎた相対化」というとらえ方は思慮が浅いように思えてならないのですが。
不安と希望。 (スコア:1)
縄張り争いや主導権争いがおきないか。
最終的な決定にはちゃんとした技術者の意見が生かされるのか。
「守られる」側としては心配になりますね。
世界の目がインターネットと言うサイバー空間に向けられたからこそ生まれた、大規模でかつ国際的なサイバー犯罪条約が世界に役立って欲しいと思います。
希望などこの条約にはない。あるのは絶望だ。 (スコア:2)
この条約に「市民として」希望をかたってしまうような 誤ったイメージを持ってしまう人には、 是非とも 条約の実際の文(確定版の仮訳(現在は途中まで) [meiji.ac.jp]と 25版の仮訳(全訳) [meiji.ac.jp]。 中間にあたる WG最終版である27版の翻訳は JISAから購入できる [jisa.or.jp])を読んでほしい。
この条約に沿うなら、 クラッキングツール、チャイルドポルノ、著作権侵害コンテンツ、 そういったところに「リンクをはるだけ」で、 そういったものを「利用可能にした」ということで 罪に問われることになる。 また、刑事手続上も、 通信傍受手続きが「コンテンツの傍受」と 「トラフィックデータのリアルタイム収集」に分けられ、 前者もあきらかに日本の盗聴法に比べて拡大されたものを 想定しているが、 後者にいたっては対象犯罪の限定がない。 さらに、「応急保全」という措置がある。 これは、投網をかけるようなやり方で、 十分な嫌疑のない段階であらかじめコンテンツやログを サーバ管理者に「保全」させ、最大90日の保管を 義務づけるものだ。 そして、あとに嫌疑が固まってきた段階で、 押収する、というのが基本になるのだが、 トラフィックデータ(ログ)については、 「応急開示」という制度があり、 十分な嫌疑がない段階でも「疑わしい挙動」を追いかける ために、応急保全したログを提出させる、ということになっている。 「応急保全」「応急開示」といった手段は、その性質上、 極めて広範囲のサーバ上の大量のコンテンツやログに対して行われる可能性があると考えるべき。
さらにこの「応急保全」「応急開示」の問題には 続きがある。 この条約では国際的な捜査協力についても定めているんだけど、応急保全とトラフィックの応急開示については、 「双罰性」が要求されない。 つまり、自分の国では犯罪でない行為についての容疑でも、 こういった手続きを強制されることになる。 応急保全したデータの押収には双罰性が要求されている(が、緩い)けれども、 トラフィックの応急開示についてはそれすらない。
「30カ国もの違う法律、違う宗教、違う社会体系を持った国々」、 でも、捜査機関にしてみれば、 市民権への配慮というのは二次的なものだと割り切ってしまえば、 「お互いに悪いと思う連中をとっつかまえる」ということについては共通の利益が見出せる、 だからお互いに乗り入れて協力してしまえ、 というのがこの条約だ。 そしてこの条約のつくる未来は 計算機システムを使う「市民」は 権利よりもなによりも前に、任意の締結国の捜査機関の たえまない電子的監視に常に協力させられてしまう、 そういう未来だ。 そんな未来が「希望」に満ちたものでありえるだろうか? いや、そんなことはない。そこにあるのは絶望だ。 君はBig Brotherのもとでも平気かもしれないが、俺は違う。
問題は・・・。 (スコア:1)
とりあえず、国際化が進んで色々な価値観が多様化している時だからこそ、“サイバー犯罪”の定義を(なるべく多くの国で)共有することは、良いことなのでしょう。
問題は、
1. テロの定義のときと同様に、各国の思惑が一致せず、迷走すること。
2. 通信傍受などの“手段”が一人歩きして、不当に扱われること。
を、どう防ぐかだと思います。
1.は、笑っちゃうだけですけど、2.は困りものですよね。
個人的には、犯罪捜査のためとあれば、多少のことは仕方ないと思いますが、(暗号)通信傍受はいただけないなあ。
# どうでも良いですけど、今回の条約って、著作権のときのベルヌ条約みたいに、ブダペスト条約と呼ばれるようになるんでしょうか。
--- Melloques Les Covdrasey ---
Re:問題は・・・。 (スコア:2)
なので、さっぱり盛り上がりませんね。仕方ないけど。
実際、どういうあり方が良いか、私も分からないです。どんな立派な理由があれ、盗聴は自由にとって非常に危険です。でも、現実問題として、インターネットを使われると、従来の聞き込むや筋を追う捜査の仕方では対応できないのも事実です。
最近は、とりあえず、できるだけ多くの人が、こういう会議があったことや、条約が決まりそうなことに注目するようになれば良いと思っています。もっとも危ういのは、秘密裏に行われることです。
rm -rf /bin/laden
「業界」にのみ意見を聴くclosedな意志決定 (スコア:2)
このコメントではこのような条約の「作られ方」について絞った話をします。
まず、日本はサイバー犯罪条約の策定について、 「オブザーバ」という形ながら、アメリカともども 積極的な役割を演じてきた、ということに留意する必要があります。 そうしたなかで日本政府は、この条約の内容について 国内で開かれた議論をしてきたか、といえば、全くしていないといえます。
しかし、 そのような批判を政府はおそらく一蹴するでしょう。 曰く「業界団体と官民一体になって取り組んできた」と。 外務省の「国際的なハイテク犯罪」 [mofa.go.jp]の政策のページをみると、 ハイテク犯罪対策に関する官民対話 [mofa.go.jp] というページがあり、このような条約 (条約自体は欧州評議会の枠組だが、議論自体はG8はじめ さまざまな枠組のなかでされている) のために「官民協力」が行われているとされています。
では、このような「官民協力」がどのような形で行われているかといえば、 経団連をはじめとした経済団体、あるいは個別の業界団体に声をかけ、 業界団体役員や、企業からの出席、という形で人が集められるわけです(某perl界で有名な方 [srekcah.org]もそういうことになっているようだ)。 もちろん、そういう人達は、一個人の意見でなく、 企業の意見・業界の意見を述べることを求められているわけですから、 企業・業界にとってあまりに不利益な結果にならないかどうか、 あるいは好都合な形になるかどうか、という観点から 話をすることになります。 従って、そこでは個人の市民的権利という観点からの 議論は、直接的には行われないということになるでしょう (もっとも、広範な人に影響が出る場合は、 市場を萎縮させるという経済的な影響があらわれますから、 そういう形で議論が行われうる要素はあります。 しかし、そのような形で全ての問題を議論できるわけでもないでしょう)。 要は、「政府の基本方針に沿った形で、詳細について技術的な議論をする」ということであって、 そもそもの前提を疑ったり、それをぶち壊したりするような議論を行えるようなものではない。
そして、実際に条約に日本政府が署名したいま、 関係省庁は早速 業界との調整 [ryukoku.ac.jp] をはじめているようです。 「業界」の意見をきくこと自体は悪いことではないですが、 「プロバイダ責任法」のように、実際の法案作成にあたって オープンな環境での作業を行わず、密室での根回しに徹した作業が行われる可能性は 十分にあるでしょう。 とくに、このような「ハイテク」「インターネット」「サイバー」と名がついているものは、 「一般人にはわからないことを技術的にやっている」という(誤った)イメージを利用しやすいですから。
余談 (スコア:0)