BSE予防実験に成功 9
ストーリー by yourCat
抗体入り肉骨粉が出てくるのかな…… 部門より
抗体入り肉骨粉が出てくるのかな…… 部門より
KAMUI曰く、"CNN サイエンスの記事に依ると、イギリスの研究チームが BSE (牛海綿状脳症) の発症を抑える実験に成功、科学誌ネイチャーに発表した。
研究チームではマウスの腹部に BSE や クロイツフェルト・ヤコブ病の原因物質である「異常プリオン」を注射して後に、プリオンと結び付く抗体を投与。異常プリオンだけを注射して抗体を投与しなかったマウスの場合、スクレイピーの症状が現れて 200日以内に死亡したが、抗体を定期的に注射したマウスの場合は 500日以上経っても異状はなかった。ただし、一旦発症すると抗体も意味をなさない上に「抗体がどのように作用したか?」や「投与を中止した場合に発症するのか?」は今の所不明だという。"
原報読んでみた (スコア:3, 参考になる)
異常プリオンをマウス腹腔内投与後、7日目および30日目から抗体を週2回腹腔内投与した場合、発症は5ないし6例中0匹と完璧に抑えてますから。単なる中和抗体って言ったらそれまでですけど (^^;
ただし、(タレコミにもあるように)発症してから(120日目以降)では無効だし、異常プリオンの脳室内投与(腹腔内投与よりはるかに毒性が高い)の場合も無効。著者らも書いてますが、おそらくは脳血液関門を越えないためでしょうね。
今回のはヒト/ウシのでなくて、マウスの異常プリオンに対する抗体なのでヒトに使えるかどうかは不明ですが、仮に使えたとしても先に挙げた理由のため使い道は限られるでしょう。 硬膜移植など脳に直接入ってくるものには無理っぽいですが、例えば病院や実験室などで扱っている最中に(針刺し事故などで)誤って曝露されてしまった場合などには有効かもしれません。 BSE牛肉を摂食した場合の有効性については、まだ判断材料が少なすぎて(食べた後で異常プリオンが脳に至る経緯も不明だし)何とも言えませんが、少なくとも食べるかどうか判らないBSE牛肉のために投与を受け続けるのは、ちょっとナンセンスでしょうね。
まあ単に「プリオンにも中和抗体が出来ることが見つかった」と言えばそれまでのことなのですが、これでencourageされる研究者も多いとは思います。ここからさらに脳にも到達可能なものの開発や、抗原認識部位の構造解析から(1〜数回の投与で有効な)予防ワクチンの開発につながっていけばいいなあ。
Re:原報読んでみた (スコア:1)
ただ、投与1回2mgってのがかなり量が多いような気がするのですが、どうなんでしょう?
#個人的には、動物実験ってもっとエラーバーが出るもの、という思いこみがあったので、
最新号(6 March 2003)のNatureかな? (スコア:2, 参考になる)
uxi
Natureの該当ページ (スコア:2, 参考になる)
Supplementary Information [nature.com]
uxi
Re:最新号(6 March 2003)のNatureかな? (スコア:2, 参考になる)
#余談だがスクレイピーはヒツジの病気なので、マウスには「スクレイピー様の症状」が正しいと思う。
これで (スコア:1)
これって、人間に使うより、まずは肉牛に対する予防ワクチンが開発され、
普及するんじゃないかな。
原因が判らなくても (スコア:1)
>異状はなかった。ただし、一旦発症すると抗体も意味を
>なさない上に「抗体がどのように作用したか?」や「投与を
>中止した場合に発症するのか?」は今の所不明だという。"
漢方薬もそういった位置付けですし、効き目は確かだが理由は
詳しくは判らない、というのは、ある程度実験で実績が得られれば
障壁にはならないと思います。
#風邪のひきはじめに飲むと効く、葛根湯のような感覚でしょうか?
Mouse to mouse (スコア:1)
マウスの抗体をマウスに注射すれば問題ないのかも知れませんが、同じ抗体を人には使えませんよね?
抗体(IgG)自体が人にとっては「異物」ですから、免疫反応の対象になりますね。
場合によっては血栓を起こしかねない。
臨床に使うためには、対象の生物由来の抗体が必要なんですね。
(それを「ワクチン」と呼ぶんでしたっけ?)
#あれ?中和抗体って見つかってなかったか?
Re:Mouse to mouse (スコア:1)
ヘビに噛まれた場合などの治療には、ウマやヤギなどに作らせた抗毒素血清(毒素に対する中和抗体を含む血清)を使いますよね。異種動物の抗体だからといって即使えないということはありません。ただし、これは一回こっきりの投与が前提で、頻回投与の場合には確かにいわゆる血清病のようなアレルギー反応は問題になります。
#でもまぁ今回の抗体はモノクローナルなので、目的の抗体のみの精製はしやすいですから。コストさえ度外視すればね。
>それを「ワクチン」と呼ぶんでしたっけ?
ワクチンは、その免疫を必要とするヒト(動物)に直接、抗原を投与して、そのヒトが自分でその抗体を作る能力を獲得させるものです(能動免疫に分類される)
このケースならば、いわば「異常プリオンそのものをヒトに注射する」のがそれにに当たります。もちろん病原性のあるものをそのまま打つことはなくて、何らかの方法で無毒化したり、構造の一部分を使うなりしなければなりませんが…
プリオンの場合厄介なのは、正常プリオン蛋白と異常プリオン蛋白の両方が存在するということです。この異常型にのみ反応して、正常型と反応しないものを作らせるというのが、なかなか難しかったのです。日本でのBSE騒動のときに「擬陽性」によるマスコミの誤報が問題になったのにはこのことが関係してます。尤も、現在では一応二つの違いを判別できる(ただし中和活性があるとは限らない)抗体は何とか作成され、診断に用いられてますけど
ワクチンを使う場合には、正常型との反応がない抗体を作るようなものを使わないといけません。正常プリオン蛋白の本来の機能はまだ判ってはいませんが、非常に多くの生物種に存在することから、何か生物にとって重要な機能をになっているのではないかと考えられてますから。
ただ診断用抗体を作るのにもかなり手間どったことから、一筋縄ではいかないことになるんじゃないかなあ。
>#あれ?中和抗体って見つかってなかったか?
多分これが最初だと思いますね。使われている抗体の詳細は別の雑誌に書かれているそうですが、そっちはin pressですから。