スペイン風邪ウイルスは、鳥ウイルス由来の可能性大 3
鳥と云えどもあな鳥がたし... 部門より
MIYU曰く、"過去に世界規模で流行し致死率が高かったインフルエンザのうち、
1918年から1919年に大流行を起こし一説には4000万人の死者を出した
と言われているスペイン風邪のウイルスが、鳥ウイルス由来だった
可能性が高いと米ハーバード大学などの研究者が発表しています。
研究では、アラスカ州の永久凍結層の中に埋葬されていた当時の犠牲者から
原因ウイルスを取り出して遺伝子解読を行い、ウイルスのタンパク質の構造を
復元した結果、このウイルス(H1N1型)は
鳥インフルエンザウイルスとよく似ているが、
ウイルスがどの動物に感染するのかを決定している
ヘマグルチニン蛋白質(HA)の構造がわずかに異なっている
という事が確認されています。
(論文は“Structure of the Uncleaved Human H1 Hemagglutinin
from the Extinct 1918 Influenza Virus”。概要は
Science Express 2004/02/05 “Structure of 1918 Flu Components”)
これは、鳥インフルエンザウイルスが人への感染性を獲得するするのに
ごくわずかの構造変異しか必要としていないという事を意味している為、
現在流行している鳥インフルエンザ(H5N1型)が、
人への感染性を獲得して爆発的に広がる危険性が有る事が裏付けられた
とも言えます。
現在、ベトナムでは
豚から鳥インフルエンザウイルスが検出された事が報告されており、
感染か付着かの確認が急がれていますが、豚への感染が確認された場合、豚の体内で人への感染力を獲得したウイルスが出現する事への警戒がよりいっそう必要になります"
非ドーキンス的「遺伝子の川」 (スコア:1)
もったいないので、偶然見つけたインフルエンザ解説サイトをリンクします。
インフルエンザ [affrc.go.jp]
これによると、宿主としては鳥類(カモ、ニワトリ)、哺乳類(ヒト、ブタ、ウマ、ミンク、アザラシ、クジラ)が挙げられてますね。
正直なところ共通点が全然見えません。いったい何がインフルエンザウィルスの宿主スペクトルを決めているんでしょうか。
また判明しているのは極一部でしょうから、さらに多種多様な宿主が存在し、宿主とウィルスを媒介とした「遺伝子潮流」とでも言うべきものが存在している、ようにも思えます。
Re:非ドーキンス的「遺伝子の川」 (スコア:1)
>正直なところ共通点が全然見えません。いったい何がインフルエンザウィルスの宿主スペクトルを決めているんでしょうか。
ウイルスの増殖は基本的に吸着-侵入-脱殻-再構成-放出 [oka-pu.ac.jp]というステップで行われます。特に、細胞表面に吸着するのに必要なレセプターとなる分子が細胞側にあるかどうかが、ウイルスの細胞親和性の決定に重要だと考えられてます。
インフルエンザの場合、基本的にはそのウイルスのHAと細胞側の糖鎖の組み合わせで決まるものです。ちょっと読みにくいですが、ここ [ocn.ne.jp]が参考になるでしょう。トリ腸管細胞は糖鎖にシアル酸-ガラクトースがα2-3結合した部分を持ち、ヒト気道上皮細胞はα2-6結合した部分を持つ。ブタ気道上皮細胞にはその両方がある。その部分がウイルスが吸着するためのレセプターとして働きますが、HAの型(タンパク構造)によってレセプターとウイルスの親和性が異なるため、
・トリ型ウイルス→トリ、ブタに感染(ヒトには感染しない)
・ヒト型ウイルス→ヒト、ブタに感染(ブタには感染しない)
・ブタ型ウイルス→ブタに感染、さらにトリかヒトのいずれか一方にも感染
という形式になります。
ただしトリ型であってもヒトに偶発的に感染することは知られてます。その機構についてはまだよく判ってはいないようですが、基本的には「程度」の問題なのだろうと。
沢山のウイルスと一度に接触した場合、細胞表面に偶発的に付着したものがエンドサイトーシスによって取り込まれることがあります。細胞内に入った後では、トリだろうがヒトだろうが構わずにウイルスは増殖可能です。ウイルス粒子の放出過程ではNAが重要な働きをしますが、もしそのNAがヒトの糖鎖に対する切断活性もあるタイプで、かつウイルスの増殖がきわめて早い高病原性型であれば、体内で感染細胞から別の細胞への感染が成立して、偶発的なトリインフルエンザによるヒト疾患が起こるのではないかと。
#この場合でも、くしゃみなどの飛沫として体外に排出される量は知れているので、ヒト→ヒト感染は基本的に起きないとされる。
パンデミック(汎流行)への対応 (スコア:1)
2004.2.4 [nikkeibp.co.jp] 【トリインフルエンザ 専門家に聞く 1】
国立感染症研究所ウイルス第3部長 田代眞人氏
2004.2.5 [nikkeibp.co.jp] 【トリインフルエンザ 専門家に聞く2】
けいゆう病院 小児科部長 菅谷憲夫氏
H5N1型、H9N2型、H6N1型がパンデミックを起こす危険性が高い事、 今回流行しているH5N1型が強毒性なので、遺伝子操作で弱毒化しなければならない事、 ワクチン製造の特許の問題については、既に米国、日本、英国、ドイツ、 カナダなどのG7政府が介入して特許の多くを保有している メッド・イミューン社と調整している事、 迅速診断キットの開発が進められている事、 抗ウイルス薬のアマンタジンがH5N1型に関しては効果がない事、などが1の内容です。
2では臨床医の立場からパンデミックにどのように対応するかが語られており、 ワクチンの生産が感染の第一波には間に合わないだろうという予測に基づいて、 感染者への迅速診断キットによる診断とノイラミニダーゼ阻害薬の処方に よる治療が主役になる事、迅速診断キットとオセルタミビルの在庫、 備蓄量が重要で有る事、日本の新型インフルエンザ治療能力は 現時点で世界最高水準で有る事、開業医のインフルエンザ日常診療体制 を盤石にする事が必要だと述べられています。
抗ウイルス薬については国家備蓄の必要性が語られています。 現実的にどの位の規模が現実的なのかが難しいそうです。