アルツハイマー病の薬物治療に大きな一歩 3
老後を健康に 部門より
MIYU曰く、"アルツハイマー病の根本的な原因は解明されていませんが、症状を発症した患者達の脳内で、「アミロイドβペプチド(Aβ)」の蓄積が起こっている事が確認されています。また、アミロイドβペプチド(Aβ)は、それを分解する酵素である「ネプリライシン」の活性が下がる事によって蓄積が進む事も解明されています。今回、独立行政法人理化学研究所・脳科学総合研究センターの神経蛋白制御研究チームが、ネプリライシン活性の低下が認められるソマトスタチン欠損マウスを用いて、神経ペプチド(生理活性物質)の一種である「ソマトスタチン」が、ネプリライシンの活性を上昇させ、アミロイドβペプチド(Aβ)のレベルを低下させることを発表しました。(理化学研究所プレスリリース)" (つづく)
"ソマトスタチンは、成長ホルモンの分泌抑制因子として古くから知られている神経ペプチドの一つですが、脳内では加齢に伴って減少してゆきます。また、様々な生理作用を人体に及ぼしているソマトスタチンには5種類の受容体(SSTR)のサブタイプが存在しているため、脳内で発現している種類を特定しそれに選択的に働きかける薬を創り出すことで、副作用の少ない治療が可能になると期待されています。
理化学研究所のチームは、2004年初めに、アルツハイマー病の遺伝子治療をマウスで成功させ、先日はMRIによって生体内のアミロイド斑を確認できる、ということも発表しています。脳内の実際の状態が見られる、また投薬という手法でアミロイドβペプチド(Aβ)の蓄積を防げるという事になれば、アルツハイマー病の予防が可能になるかもしれないという、非常な朗報に思えます。
全アルツハイマー病患者の99%以上は「孤発性アルツハイマー病」と分類されていますが、原因が何であるのかは解明されていません。また、社会の高齢化が進むのに伴って認知症(旧名称:痴呆症)の増加が懸念されていますが、認知症の原因の45%はアルツハイマー病だと言われています。
研究グループでは、「加齢に伴い、ソマトスタチンを初めとする神経ペプチドレベルの低下が起こり、その結果、ネプリライシン活性の低下を引き起こし、脳内Aβレベル(特に病原性の高いAβ42)の上昇が起こる。そして、それぞれの現象が、さらなる悪循環を形成し、時間経過とともに孤発性ADの発症へつながる」という仮説を立てていますが、それが正しければ今後開発される薬によって、認知症の患者数を大幅に減少させる事が可能かもしれないため、研究の進展が非常に期待されます。
薬自体に関しては、記銘力(経験内容を覚え、定着させる能力)の改善に役立つことが期待され、また実際にそのような薬物を合成することが可能であることが分かっているため、実用化の可能性は高いと述べられています。"
論文(Somatostatin regulates brain amyloid β peptide Aβ42 through modulation of proteolytic degradation)は、Nature Medicine電子版で発表された。
変性疾患 (スコア:2, 参考になる)
一応「原因」と考える立場の提唱してるメカニズムとしては、細胞内タンパク質分解系の異常や特定タンパク質の変異によって、異常タンパク質が細胞内に蓄積し、それがストレスになって神経細胞がアポトーシス(細胞の自殺)を起こし、それによって神経細胞の欠落が起きるという説などが挙げられます。Aβの蓄積は、その原因と密接に結びついた現象である、と。ただ(今回の研究もそうですが)変性疾患に関連するさまざまな遺伝子の発見と、その機能解明によって、どうもこれらの説で簡単に説明できるわけではない、という研究の流れになっています。
個人的には、むしろMRIで診断が可能になるという報告の方にインパクトを感じてます。あんなもんが外から見えるのかーっていう印象で。
治療は可能 ? (スコア:0)
Re:治療は可能 ? (スコア:1)
現在,日本国内の認知症患者数が約 160万人で10年後には 250万人になるとの予測があります。
将来的にはもっと増えると想定されていると言っていいでしょう。
実際に「予防」が可能になるまでにどの程度の期間がかかるかは不明ですが,
この発症数が抑えられる,或は生活に支障がない軽微な状態に留められるなら
十分に有効と言えるのではないでしょうか?