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動物由来成分ゼロでのヒトES細胞培養に成功 7

ストーリー by yosuke
ヒトES細胞の研究は続く 部門より

KAMUI曰く、"ScienceDaily の記事によると、ウィスコンシン大のJames Thomson教授らの研究グループがマウスなどの「動物由来成分」を全く使う事なくヒトES細胞を培養する事に成功した(ウィスコンシン大のニュースリリース)。この結果は、Nature Biotechnologyで発表されている。
ES細胞は分化しやすく、非常に増殖が早いため、培養条件に気を配る必要がある。 従来のヒトES細胞の培養には、マウス胎児の線維芽細胞からなるフィーダー細胞、マウス腫瘍由来のマトリゲル、牛由来の代用血清などが必要だった。しかし、それらに有害な病原体が潜んでいる可能性も含めて、人間の体内に入った場合の安全性が不明だった。
昨年、研究グループは、高濃度の塩基性線維芽細胞増殖因子(basic FGF)を使うことで、フィーダー細胞なしでのヒトES細胞の培養に成功していた(前回のウィスコンシン大のニュースリリースNature Methodsに掲載された論文)。今回の研究は、これをさらに進めて、ヒト由来のものなどを使用して、動物由来のものを完全に置き換えたもの。
この成功により,ES細胞による再生医療がまた一歩近づいたと言えるだろう。

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  • ヒトは無害 (スコア:2, すばらしい洞察)

    by pinch (22469) on 2006年01月04日 14時27分 (#858841)
    今回の研究は、これをさらに進めて、ヒト由来のものなどを使用して、
    ヒトは、有害な病原体が潜んでいないのか?
    • >ヒトは、有害な病原体が潜んでいないのか?

      潜んでいる可能性はありますが,非ヒト細胞湯以来のシアル酸が問題になる理由は
      ES細胞から生体組織を培養して患者に移植した場合に免疫反応を起こしてしまう
      可能性があるためです.
      細菌やウイルスは移植前に検査して感染したものを取り除くことができますが,
      どの細胞も免疫反応を起こす抗原を持っているとすれば対処のしようがないわけです.
      (ただし現在の培養環境が本当に拒絶反応を起こすという証拠はありません)

      タレ込みでは書かれていませんでしたが、Matrigel [bdbiosciences.com]というのは
      細胞の培養に使われる製品の商標で,大まかな内容は公開されていますが本質的に
      プロプライエタリな製品であり、その内容が正確に分かっていない特定のベンダの
      製品にES細胞研究全体が依存するような状況はよろしくない,という判断もあったと思います.

      また再現性という面でも製品(Matrigelやウシの血清など)のロットNo.に依存
      しているかもしれない状態はあまりよいとはいえず,つい最近逆風の中にある
      ES細胞研究がちゃんとした足場を固める為に重要な研究だと思います.
      そのため論文のタイトルも
      "Derivation of human embryonic stem cells in defined conditions"
      と培養条件が"defined"であることを強調しています.
      著者らが述べているように,ヒト血清アルブミンは(ヒトを含めた)動物由来の成分で
      あるのでこの部分が課題でありますが,ES細胞研究が多くの研究者がアクセスしやすい
      分野になりつつあると思います.
      --
      kaho
      親コメント
      • Re:ヒトは無害 (スコア:4, 参考になる)

        by Anonymous Coward on 2006年01月04日 16時47分 (#858902)
        EurekAlert!で記事 [eurekalert.org]を読みました。昨年のkaho氏の日記のエントリ、 ES細胞は汚染されている [srad.jp]が、当時報道された免疫システムが幹細胞を攻撃するかもしれない、という話を取り上げていますのでリンクを置きます。 (当時のNatureの記事:Human stem cells trigger immune attack [nature.com]   。 [mypress.jp])

        培養に関する話では、抗体の話の他にも幹細胞を長期間培養すると染色体異常が起きるという問題点が出ていたりするようで、実際の治療への道は険しいようですが、明るい方の話としては、現在でも適合性の高い他人の臓器移植が行われている事を考えれば、受精卵由来の幹細胞を一定数確保できれば幹細胞による治療が可能になるのではないか、という事を示唆する英国の研究結果が報告されていました。 (UK stem-cell bank needs 150 deposits [nature.com]  。 [mypress.jp])

        また、羊のドリーを創り出した英国のIan・Wilmut氏が、現時点ではまだ動物実験が完全に終わったわけではないのだが、末期状態に有る患者に対しては幹細胞を使った治療を認めるべきだ、と発言したりもしています。Wilmut氏は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む「運動神経疾患」の患者達の中には、安全性の確認が成される前に死に至る人々が複数存在する事を指摘していました。 (患者達に幹細胞を [mypress.jp])

        ヒトクローン胚の捏造疑惑で研究全体への逆風が吹きかねない状態ですが、地道に成果を積みあげている大多数の研究者の為にも、良い材料が出てくる事は望ましいと思います。

         # 問題になりそうな部分はより少ない方が良いですよね
        親コメント
      • by cobonzu (17398) on 2006年01月16日 18時02分 (#865317) 日記
        ヒトアルブミンの場合は、組み換えのものが将来的に使えそうですよね。
        親コメント
    • Re:ヒトは無害 (スコア:2, 参考になる)

      by TarZ (28055) on 2006年01月04日 14時47分 (#858851) 日記
      もちろんヒト由来の危険な病原体もあるのでしょうけど、ここでのポイントは、
      他の種から人類がまだ経験したことのない新しい病原体が入り込むことの
      予防でしょう。マールブルグ病 [wikipedia.org]とかエボラ出血熱 [wikipedia.org]とか。

      # "Xeno phobia"でググってみたけど、日本語のいいコンテンツがない…。
      親コメント
    • by k-hello (13137) on 2006年01月05日 12時21分 (#859424)
      ヒト由来の薬品で起きた事件に
      「薬害エイズ」と「薬害CJD」 [wikipedia.org]がありますので。
      キチンと管理されていないと危険ですね。
      親コメント
    • by Anonymous Coward
      わたしは、ヒトは動物じゃないのかと思っちゃったよ。
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ハッカーとクラッカーの違い。大してないと思います -- あるアレゲ

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