ヒトの白血病をマウスに発症させることに成功 11
ストーリー by yosuke
100%の発症率 部門より
100%の発症率 部門より
ScienceDailyの記事によると、Ontario Cancer Instituteの研究者が、 ヒト造血細胞に白血病の遺伝子を導入しその遺伝子組換細胞を定着させることで、マウスにヒト白血病と同じ特徴パターンを示す 急性白血病を引き起こさせることに成功したらしい。論文は4/27付けのScienceに掲載されている。
どうやらこれまでも、マウスでの実証実験は白血病にとっても重要だったのだが、 それがマウス自身の細砲に由来するものであったために限界があったとのこと。 今回の手法ではヒト白血病をマウスに発症させることで、白血病の発症や進行についての知見を得ることができ、より効果的な白血病治療法を開発できるとのことだ。 それにしても、ヒトの病気を発症させられるマウスも可哀想な気がしてしまう。
実験系の確立としては喜ばしい (スコア:4, 興味深い)
Scienceのアブスト読んだだけですけど、拒絶反応を起こさないように免疫系を弄ったマウスに、白血病を引き起こす変異を導入した『ヒトの』造血系細胞を移植したって話ですね。
これまで培養細胞の遺伝子を組換えて実験したり、モデル生物の遺伝子を組換えたりっていうのはメジャーな方法でしたけど、どちらも『ヒト』ではありません。
基礎研究には足りたのですけど、(多分)製薬業界には不足だったのでしょう。
その点、今回の手法は原因細胞だけはヒトのものなので、マウスとヒトの差を気にせずデータを取れます。
白血病は造血系細胞内で細胞自律的に進行する(他の細胞からの影響で白血病になるわけではない……と解釈してますが、識者の方よろしく)ので、このような実験系は上手く動くんじゃないでしょうか
一方、ガンみたいに細胞間・組織間の相互作用(血管増加・転位)が大きく影響する系では使いにくく、対象を選べばデータの取得にはよいのではないでしょうか
ヒト細胞で発症から継時的に確認できるという点は確かですが、マウスにヒト細胞を移植してまで違いのあら探しをするのはマウス自体の血液細胞系での実験が終了したあたりで必要になるでしょうか
ホントにダメだし確認って感じの実験で、如何にも製薬系に求められる実験系って気がします(偏見かも知れませんが)
気になるのは、これまで技術的に出来なかったのか?というところです
何らかの技術的ネックがあったのか(でもアブストでは触れてなかった)、白血病という知名度が高く患者の多い病気だからか(これの可能性は高い)、それとも倫理的に出来なかったのか(だとしたら国外で既にやってそう)・・・
個人的にはScienceよりもNature Medicineって感じの内容でした
Discussionの内容によっては、Scienceに掲載される価値があると思いますが。
Re:実験系の確立としては喜ばしい (スコア:5, 参考になる)
実はこれまでにもヒトがんを移植可能な、免疫不全モデルマウスってのはありまして。有名どころでは、ヌードマウスの足蹠などの皮下にがん細胞を接種して、そこで固形腫瘍を作らせるとか(ただし、これだと元のがんと同じフェノタイプとはいえない)。最近では、SCIDマウス(重症複合不全症モデルマウス)に1型糖尿病の自然発症モデルであるNODマウスを掛け合わせた、NOD/SCIDマウスが開発されて、それを用いた実験によて、「がんの元になる細胞」である「がん幹細胞」が、白血病を皮切りにいくつかのがんで発見され、ここ数年の重大なトピックになってます。NOD/SCIDマウスだと、例えば、ヒトがん患者のがん組織から分離したがん細胞のうち、特定のグループ(CD133などの表面抗原分子を持つ、幹細胞的なもの)を少数接種しただけで、もとのがん組織と同様なフェノタイプを示すがんが再現されます。
今回の論文のポイントは、導入した細胞がそういう(精製したとはいえ、まだバルクな)ものではなく、人為的に作製したがん細胞でも可能になっていることですね。これまで、こういったがん遺伝子(あるいはがん抑制遺伝子の変異や欠損)の機能を解明する実験では、in vitroにせよin vivoにせよ、今回の実験系に比べると間接的なものだったわけで。それが今回の実験系で、より厳密に証明できるようになったと。そういう意味では、専門的には結構インパクトのある研究ではありますが、一般にとってのインパクトという意味では先例もそれなりにあるものですね。
Re:実験系の確立としては喜ばしい (スコア:1)
なるほど参考になりました
ガン幹細胞でこの手の実験が行われていなかったのは、ちょっと意外でした
#コメントしてしまったのでモデできません
どなたか#1150215に『参考になる』のモデを……
Re:実験系の確立としては喜ばしい (スコア:3, 参考になる)
いえ、それを実証したのが、NOD/SCIDマウスを利用した実験でして。
そもそもがん幹細胞の存在自体は、1970年代から提唱されてたんですけど、それを実験的に証明することができなかった。これには理由が二つあって、一つはがん組織の中から特定の細胞だけを見分けて分取する方法がなかったこと、もう一つは実験モデル動物がなかったことです。
最初の問題については、フローサイトメトリーの実験技術が開発されて、セルソーターを用いた特定細胞集団の精製方法が見つかったことで解決されました。そして、二番目の問題ですが、これは単にヒト組織を定着できるかどうかという問題に加えて、そもそも正常な生体では免疫によってがん細胞が排除されているものなので、それを弱めて、がん細胞が定着しうる動物モデルを開発する必要がありました。これに加えて、がん幹細胞の研究の背景には、正常な体性幹細胞が発見されたことも大きく関与してます。正常組織の修復に関わる、体性幹細胞の表面抗原などに関する知見が、がん幹細胞を見定めるときの重要な手がかりになりました。
で、このような条件がそろって、がん幹細胞が最初に発見されたのが1997年、血球細胞系のがんである白血病で証明されました。これは、体性幹細胞として血球系の造血幹細胞が最初に見つかったのと同じで、もともとがばらばらの浮遊細胞の状態にある血球系細胞が、分離精製が容易であることが大きな勝因だったと言えるでしょう。NOD/SCIDマウスにおける実験では、ヒト白血病患者の白血病細胞から、ごく少数含まれている幹細胞を分離してマウスに接種すると、ヒトと同様に多数の白血病細胞(幹細胞は中に少数含まれる)が増加して、同様の病態を示しただけでなく、そのマウスから再び幹細胞を分離して同様の実験を繰り返すことが出来た…ややこしく聞こえるかもしれませんが、これは要するに「コッホの条件」の第3および第4項を満たすことの証明なので、これで古典的な考えでも「病原体」としての条件を満たすことになるわけです。
その後、固形腫瘍においても、2003年に乳がんと神経細胞種、2007年に大腸がんにおいて、同じNOD/SCIDマウスを用いた実験系を用いて、がん幹細胞の存在が証明されてます。この他にも、いくつかのがんにおいてがん幹細胞の存在が報告されてます。ただし、それらでは(使用許諾の関係からか)NOD/SCIDなどを用いた動物実験での証明はまだ済んでません。
どうせならフレーム拡張 (スコア:1, すばらしい洞察)
A. 理由があってウィルスを殺す
B. 理由があって微生物を殺す
C. 植物を殺して食べる
D. 食用以外の理由があって植物を殺す
E. 魚類、両生類、は虫類を殺して食べる
F. 食用以外の理由があって魚類、両生類、は虫類を殺す
G. ほ乳類を殺して食べる
H. 食用以外の理由があってほ乳類を殺す
I. 理由があって人を殺す
普通はEから下あたりかな。
こうやって「殺す」と書くと、その行動の必然性が強調されるので、感情を抑制する理由が思い浮かべやすい。
でも生体実験だと、医学他研究者以外はその行動の必然性があいまいで、感情が抑制されにくいのかもしれないね。
で、つい「可哀想」という意見を表明してしまう。
Re:どうせならフレーム拡張 (スコア:1)
FとGの間.理由は無いが魚類、両生類、は虫類を殺す
HとIの間.理由は無いがほ乳類を殺す
J.人を殺して食べる
K.理由は無いが人を殺す
# こんな選択肢ありえない・・・と言えない所が最も可哀想。
Re:ったく (スコア:0)
Re:ったく (スコア:0)
#次はハイパーゴールドラグジュアリーフルオートマチック真ファイナルヴァーチャルロマンシングときめきドラゴンマシーン
Re:ったく (スコア:0)
批判してください。相手をへこます技術は魅力的だけど、
自分の人生ふりかえったとき寂しいぞ。
Re:ったく (スコア:0)