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40053 story
医療

骨髄移植でHIV感染者を「機能的に治癒」 17

ストーリー by hylom
一石二鳥、 部門より

あるAnonymous Coward 曰く、

ドイツでHIVに感染している白血病患者への骨髄移植が行われたのだが、これにより白血病だけでなくHIVの治療にも成功したそうだ(Wall Street Journal本家/.記事)。

HIVはT細胞表面のケモカイン受容体であるCCR5を足がかりに感染していくが、ごく稀に遺伝的にCCR5を作り出さない人もおり、このような人はHIVに対して高い抵抗力を持つことで知られている。そこでこの患者への骨髄移植は適合ドナーの中からCCR5の遺伝的変異を持つ人を探し出して施された。ドナーの造血幹細胞が生着する確率を上げるためエイズ治療薬の投与は一旦中断され、血液中にウィルスが確認されれば投与が再開される予定だったが、術後2年経っても通常の検査でHIVは確認されていない。

骨髄移植の前には患者自身の造血組織などを根絶するために大量の抗がん剤投与や放射線治療が行われため、この際HIVに感染した細胞の多くも破壊されたとみられているが、患者はまだHIVを保有していると考えられている。しかし新たな細胞に感染できないため「機能的に治癒した」状態にあるとのこと。

この件に関しノーベル生理学医学賞受賞者であるデビッド・ボルティモア博士は、あくまで非常に稀なケースであるかもしれないとしながらも、HIV感染者への遺伝子治療の一つのProof of Conceptとして評価しているとのことである。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by Anonymous Coward on 2008年11月11日 14時40分 (#1453480)
    この人の細胞にはHIVは感染しないとしても、保有はしているのであれば、
    例えば性行為を行った場合に他人をHIVに感染させることは可能なんですかね?
    • by Anonymous Coward
      風邪を引いているときにキスしたら相手は感染するだろうか。
    • Re: (スコア:0, 参考になる)

      by Anonymous Coward
      新たな細胞に感染はしてないとある。
      なので、血液や精液等にはHIVウィルスは含まれておらず、感染はしない可能性が高い。
      • by y_tambe (8218) on 2008年11月11日 15時41分 (#1453516) ホームページ 日記
        HIVは基本的に、Th細胞やマクロファージに感染しますが、レトロウイルスなので、それらの細胞の宿主ゲノム中に組み込まれます。そして、そこから(レトロウイルスのLTRをプロモーターとして)、ウイルスゲノムや、ウイルスタンパク質が生成されつづけることで、感染力のあるウイルス粒子が生成されることになる。

        最終的には、HIVが患者のTh細胞に感染し、その細胞を殺していくことで免疫不全に至るのだけど、今回のケースのようにCCR5を持たない骨髄細胞を移植すると、HIV耐性のTh細胞が出来て、患者は助かりうる(少なくとも理論上はそうだし、まだ1例とは言え今回それが実証された)。この点においては、別にこの患者がHIV感染細胞を持っていようが持っていまいが関係ありません。

        一方、この患者さんが他の人に対する感染源となるかどうかは、「新しい細胞に感染するかどうか」ではなくて、「感染細胞が残っているかどうか」がポイントになります。この点について言えば「HIVは保有している」と書かれていることから、感染細胞はまだ残っている、と専門家は判断しています。ただし、「通常の検査ではHIVが確認されてない」とも書かれていることから、血液中の感染性のHIVの量は(おそらくは他の治療の効果によって)それほど多くはないだろう、と判断されます。

        以上から、一般的なHIV患者として考えると感染のリスクはおそらくそれほど高くはない部類に当たる。けれども感染する可能性は依然として残っており、キャリアーとして扱う必要がある患者さんだということには変わりありません。
        親コメント
    • by Anonymous Coward
      キャリアー生成技術だよね。治療法としてはあまり採用して欲しくない。
      • Re: (スコア:0, 興味深い)

        by Anonymous Coward
        「CCR5の遺伝的変異 耐性HIVウイルス」
        (耐性ってのは変だけど、)そういう突然変異が登場する
        土壌を生み出すだけな気がしてしょうがない。
  • by kamada (2799) on 2008年11月12日 10時26分 (#1453854)
    こういう医学的な試験行為にも使う用語なのね。
    プロトタイプを作るとかそういうアイディアを何かしら現実のものとして(最終的な製品などと比べて)簡易な方法で実現する行為に対して使う言葉だと思っていました。

    勉強になります。
  • by minamina (18231) on 2008年11月12日 21時11分 (#1454362)
    機能的治癒というのは寛解いう解釈なんでしょうか?

    しかし、この場合はHIVのウィルスよりブラストの方が重要ですよね。
  • by pmjames (29210) on 2008年11月13日 8時38分 (#1454625) 日記
    「HIVが除去されたわけではないがHIV耐性リンパ球により免疫不全状態を脱することができた」わけだから、
    ソース同様に「AIDSを治癒させた」という言葉を使えば良いように思います。
    (同種)骨髄移植自体が新たな免疫不全状態を作り出すので、本当の意味で実用化できるとは限らないのですが。

    iPSから効率的に造血幹細胞を作り出す(血球は作れるけど)手法はまだないのですが、
    ・患者体細胞からiPSを作成
    ・CCR5(ホモ)ノックアウトiPSを作成
    ・造血幹細胞を誘導
    ・自家移植
    という方法で、理論的にはAIDSが治せることになりますね。技術的なハードルがいくつもありますが。
    • 要は「機能的に治癒」という言葉がおかしいだけでして。日本語で上手くニュアンスを伝えられるか自信がないのだけど、「(治療によって)機能回復させた/した」というのが、いちばんしっくりくる表現かなぁ。"function recovery"の訳語が「機能回復」で、recoverとcureの意味の近さ(と、その微妙なニュアンスの違い)なんかから考えると。

      HIV感染によりダウンしたTh細胞の免疫機能を回復させる、という対症療法的な治療法であって、今回の方法でもiPSの方法でも、上でも指摘してるように、HIV感染細胞が残った潜伏感染の状態になるので、「治せる」と言い切っちゃうのにはちょっと違和感がありますね。そもそもHIV感染とAIDS発症は同義ではない(AIDSはHIV感染の終末像)ので、"AIDS"を治せる、という表現は確かに間違っちゃいないのだけど。特に、他の感染症の場合と違って、HIV感染だと「症状をとりあえず抑えておけば、後は宿主の免疫で治る」ようなものではないので。例えば、HTLVとかB/C型慢性肝炎のキャリアでも、症状が出ない状態のことを「治った」とは言わないわけだし、AIDSに関しても似たようなものなんだろうけど、まぁこのへんの呼び方には結構微妙な問題があるからなぁ…。
      親コメント
  • by Anonymous Coward on 2008年11月11日 14時40分 (#1453481)
    無くても良い物なの?
    • Re:CCR5ってのは (スコア:5, 参考になる)

      by y_tambe (8218) on 2008年11月11日 15時58分 (#1453524) ホームページ 日記
      少なくとも「生存に必須」のものではありません。実際、CCR5を遺伝的に持たない人もいますし。またCCR5ノックマウス [jimmunol.org]も作製されてますが、正常に生まれてきますし、見た目の上では通常のものと区別が付きません。

      ただし、CCR5のある/なしによって、さまざまな病原体に対する免疫応答に違いが現れることが判ってます。CCR5ノックマウス [jimmunol.org]ではマクロファージの活性化が弱くなる傾向があり、一部の細菌(マクロファージ内に寄生するリステリアなど)に感染しやすくなる一方、グラム陰性菌が持つ内毒素(エンドトキシン、パイロゲン)によるショック(免疫系の過剰反応による)に対して抵抗性になることが報告されてます。
      また、CCR5を持たない人 [rupress.org]では、HIVには感染しにくいのだけれど、ウエストナイルウイルスに対する抵抗性が落ちている、という疫学調査の結果があり、CCR5があるから、あるいはないからと言って、一方的に有利/不利に働くものではなく、どのような病原体に巡り合うリスクが高いかによって結果が変わってくる、というところですね。
      親コメント
  • by Anonymous Coward on 2008年11月11日 15時05分 (#1453496)
    帰納的に治療
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弘法筆を選ばず、アレゲはキーボードを選ぶ -- アレゲ研究家

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