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テクノロジー

糸状のカーボンナノチューブの製造に成功 28

ストーリー by hylom
ナノ糸なのです 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、

米ライス大学らの研究チームは、糸状のカーボンナノチューブの量産に成功したと発表した。1991年に発見されたカーボンナノチューブは、鋼鉄よりも高い強度を持ち非常に軽い。また優れた導電特性を持つことから夢の素材として科学者たちを魅了してきた。しかし、高純度のカーボンナノチューブを糸状に生成するのは困難とされてきた(gizmagライス大学による発表資料本家/.)。

今回製造に成功したカーボンナノチューブは髪の毛ほどの太さの繊維で、金属線のように熱と電気を通すという。これまでのカーボンファイバーと同様の強度があり、繊維糸のような柔軟性を持っているとしている。航空宇宙産業や自動車産業のみならず、医療やコンピュータ機能を内蔵した「スマートウェア」などの開発にもつながると見られている。

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  • 語弊が…… (スコア:5, 参考になる)

    by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2013年01月17日 8時36分 (#2307341) 日記

    糸状のカーボンナノチューブ(CNT)を作ったのではなく,CNTを紡績して糸にしたものです.湿式紡績自体は既知のもので,おそらく今回は条件等を最適化して特性が優れたものを作ったあたりが注目点.
    著者所属にライトパターソン空軍基地があったのがちょっと物珍しかったり.

    ご存じの通り,CNT自体は長さが非常に限られており,そのままでは用途が限られます.そのためCNTを紡いで糸にして利用しよう,と言う研究が多数行われています.その場合よく利用されるのが

    (a)長めのCNT(場合によってはミリメートル単位)を直接紡いで糸にする乾式法.特性に優れるが,多段階の面倒な手間がかかる.
    (b)短いCNT(通常マイクロメートル以下程度)を溶液に分散し(長いと分散しないので短いものを使う),そこから通常の化学繊維の紡績と同じように紡いでいく湿式法.量産性に優れるが特性は劣る.

    という2つです.今回用いられているのは後者の手法で,使用しているCNTも5 μm程度と短い(でもこれまでの湿式法よりは10倍程度長い)のですが,それでもちゃんと紡績すれば乾式法並みの結構良い特性が出たよ,と言うのが売り.
    手法としては,CNTをクロロスルホン酸(硫酸のOH一つを塩素に置換したもの.CNTをよく分散できる)に数wt%程度の濃度で分散させ,100 μm程度の孔からアセトンや水といった溶媒中に射出.そうするとクロロスルホン酸が溶媒中に拡散して行ってしまうので,溶けきれなくなったCNTが析出して糸になる,という紡績法です(化学繊維とまあ同じようなもの).出来上がる糸を構成する繊維の太さは約9 μm,長さは20-30 mm程度.この中に多数のCNTが詰まっていて,さらにこの繊維を撚って長い糸となっています.

    でもって得られた繊維の特性です.
    重さで規格化した引っ張り強度では,既存の湿式法CNT紡績糸よりは強く,乾式法CNT紡績糸に並ぶレベル.市販の炭素繊維(グラファイト系繊維)に比べると半分程度?とやや落ちるが,まあ合格点.重量あたりの熱伝導度も非常に高く,炭素繊維とほぼ同程度.銅やアルミなどに比べると数倍程度優れる(ただし重量で規格化してある点に注意).同時に電気伝導性にも優れ,重量あたりで見ると鉄や金を超え,銅に近い値を実現.アルミには負ける.強度や熱伝導性ではカーボンファイバーにやや劣っていたものの,この導電性ではカーボンファイバーの数倍と,今回のCNT紡績糸の方が上となります.
    CNT紡績糸の範囲だけで既知の各種最高値と比較すると,引っ張り強度では7割程度,弾性率では1.5倍,導電性では5倍,熱伝導性では10倍と,CNT紡績糸の中ではほぼ全ての特性がトップクラスとなっています.既存の0.5 μmという短いCNTを使った湿式法と比較するとさらに差は広がり,引っ張り強度で20-30倍,弾性率で1.5倍,導電性で10倍以上,熱伝導性で30倍近くです.
    また,射出時の孔のサイズを変えることで,全体的な特性はほぼ変わらないまま繊維の太さだけを増減させることも可能.

    ラフに言ってしまえば,強度と熱伝導性が既存の炭素繊維にほぼ匹敵し,導電性で大きく上回る素材の開発,といった感じでしょうか.著者らの簡単な分析によれば,この優れた特性はこれまでの湿式法よりも10倍近く長いCNTを原料に使えるようになったことで整列性が良くなり,繊維長軸方向への導電性・熱伝導性・強度が向上したのだろう,とのこと.もっと長い,例えば50 μmぐらいの,欠陥の少ない単層&金属性CNTを原料にできれば多分全特性がもっと向上するだろう,とは書いてありますが,まあ,そういった原料の量産性とか,その場合でも同じ条件でいけるのか?とかの検討は必要になります.

    • by hgsdrk (13085) on 2013年01月17日 8時42分 (#2307343)

      よっしゃ!軌道エレベータが8割がた完成したようなもんや!

      と思ったら、紡績ですか。
      紡績だと、軌道エレベータに必要な強度にはまだまだ遠そうですねえ。。。。。

      親コメント
      • by Anonymous Coward on 2013年01月17日 16時35分 (#2307677)

        >よっしゃ!軌道エレベータが8割がた完成したようなもんや!

        これはありがちな妄想ですね
        革新的材料を使った超軽量・超高性能テニスラケットや超軽量・超高性能ゴルフクラブや超軽量・超高性能自動車や超軽量・超高性能旅客機や超高層ビルや超長大橋が実現されてもいないのに、軌道エレベータが出来るはず無いじゃありませんか
        #工業技術の本質的性質を無視した法螺話を信じちゃいけない

        親コメント
        • by Anonymous Coward

          > 革新的材料を使った超軽量・超高性能テニスラケットや超軽量・超高性能ゴルフクラブや超軽量・超高性能自動車や超軽量・超高性能旅客機や超高層ビルや超長大橋が実現されてもいないのに、軌道エレベータが出来るはず無いじゃありませんか

          そんなことはわかってるわ。
          それらも含めての話だろw

      • by Anonymous Coward

        よっしゃ!軌道エレベータが8割がた完成したようなもんや!

        と思ったら、紡績ですか。
        紡績だと、軌道エレベータに必要な強度にはまだまだ遠そうですねえ。。。。。

        なんでも、軌道エレベーターを作るのに十分な強度の素材が手に入るならその素材でペットボトルロケットを作って水を推進剤にして衛星を打ち上げる事ができるのだとか。軌道エレベーター作るより安く宇宙に行けるね!

    • by kohzoh (34869) on 2013年01月18日 0時38分 (#2307956) 日記

      ひんやり涼しいシャツとか作れるんでしょうかね?
      リンク先のコメントで「もっと安くなぁれ」というような意見があるから、量産性に優れるといっても衣服に利用できるまでコスト下がってるわけではないのかな。

      あ、黒しか作れなさそうだから直射日光のもとでは・・・。

      親コメント
    • by Anonymous Coward

      まるまる高圧環境下で溶媒中に射出したら強度の高いものができそうだなとふと思ったなど

    • by Anonymous Coward

      >同時に電気伝導性にも優れ,重量あたりで見ると鉄や金を超え,銅に近い値を実現.アルミには負ける

      電気伝導率(?)が銅に近い値で、アルミに負けるってどういうこと?

      • by Anonymous Coward

        アルミが軽いから、重量あたりだとそうなる。

        • by Anonymous Coward

          飛行機の配線をアルミ化するのも同じ理由でしたっけ

          • by Anonymous Coward on 2013年01月17日 9時42分 (#2307368)

            飛行機に限らず、高圧送電線や自動車の配線etcは軽量化のためにアルミ化の動き(あるいは実際に採用)がありますね。
            一方、半導体の配線はアルミ→銅と変わりましたが、これは微細化が主目的のため体積あたりの電導率を重視するためです。

            親コメント
            • by Anonymous Coward

              >>半導体の配線はアルミ→銅と変わりましたが、これは微細化が主目的のため体積あたりの電導率を重視するためです

              電導率も無視出来ませんがLSIの場合は配線寿命/マイグレーション等の問題が大きいです
              アルミの場合、微細化すると配線が「溶ける」という恐ろしい現象を無視出来ないので
              (高温になって溶けるのではなくアルミ原子が移動する!)
              それからよく誤解されますが、アルミから銅に代わったのではなく(ハイエンドの製品には)銅も使われるようになったのです

              • by Anonymous Coward

                (ハイエンドの製品には)銅も使われるようになったのです

                うん?だからアルミから銅に代わったんでしょ。

    • by Anonymous Coward

      絶滅危惧種を1万匹も使わなくていいわけですね

    • by Anonymous Coward

      >著者所属にライトパターソン空軍基地があったのがちょっと物珍しかったり.

      やっぱり、奴らは空飛ぶ円盤を捕獲していたんだ...

    • by Anonymous Coward

      帝人アラミドの人がいるのはそういうわけか

  • 米ライス大 (スコア:3, おもしろおかしい)

    by Anonymous Coward on 2013年01月17日 14時32分 (#2307614)

    なんだそのおかゆライス大盛りみたいなのは…

    # 綴りもそのままRice Universityなので略して米大でいいな>ライス大

  • "〇〇を合成した"というような基礎研究は、科学技術に携わらない人でも興味をひく華やかな話題である一方、 実用化という長く険しい道のりを征く事の大変さは、彼らには届きにくいように思う。 予算を動かすことのできる(科学技術に携わらない)人の目が、そういうとこにも届けば多くの問題はすぐ解決するのになぁ
    • by Anonymous Coward

      といっても、この頃はその成果を企業なり個人が独り占めってのも多いからなぁ。
      自身に全然見返りが見込めない物に付いては出したくないってのは仕方ない話。
      下手すれば自分が金を出している筈なのにカモ客扱いでボッタクリ、なんてもの有るから。
      せめて公的援助からの成果は、ちゃんと還元する仕組みが出来てないと。

  • by the.ACount (31144) on 2013年01月17日 14時14分 (#2307598)

    長繊維は生物的プロセスじゃないと無理な気がするからCNT合成細菌を創り出さないと…

    --
    the.ACount
    • by Anonymous Coward

      それをモスラのおなかに住まわせるんですね。
      わかりますん

      • by the.ACount (31144) on 2013年01月18日 13時14分 (#2308305)

        そうか、モスラに絹じゃ強度不足だからCNTに違いない!
        炭素だから黒いと思ってたけど、そうとも限らんかもしれない。
        CNTの導電性は構造で色々変わるから、抵抗が大きければダイヤみたいな透明なのもあるか。

        --
        the.ACount
        親コメント
      • by Anonymous Coward

        普通のカイコでも良いのでは?
        それともヨナグニサンを品種改良して使う?

    • by Anonymous Coward

      3ヶ月も経ってから返信してちゃ誰も読んでくれないかもしれませんが・・・

      超長繊維のCNTを合成する方法としては住友電工の炭素透過法が有望ではないかと思います。
      http://www.sei.co.jp/tr/pdf/energy/sei10548.pdf [sei.co.jp]

      現在実用化されているCNT合成プロセスはいずれもCNTの生長点に炭素が気相経由で付着するため、グラフェンに構造欠陥が生じたり触媒粒子に雑多な炭素化合物のゴミが付着して失活するいう問題が有ります。

      それに対して住友電工の炭素透過法は炭素供給源とCNTの生長点を分離する

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Stableって古いって意味だっけ? -- Debian初級

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