EU司法裁判所は9日、あるWebサイトが権利者の許諾を得て一般公開している著作物であっても、他のWebサイトがフレーム内に埋め込み表示する行為は原則として公衆送信に該当するとの判断を示した(
裁判所文書、
SPKのプレスリリース、
TorrentFreakの記事)。
この裁判は
デジタルライブラリーサイトDeutsche Digitale Bibliothek (DDB)を運営するドイツの文化財団Stiftung Preußischer Kulturbesitz (SPK)がビジュアルアート関連の著作権管理団体Verwertungsgesellschaft Bild-Kunst (VG Bild-Kunst)を訴えているものだ。
DDBは博物館などのWebサイトと連携したデジタルショーケースとして機能し、アート作品に関してはプレビュー用の低解像度画像のみを保持している。著作権保護された作品については著作権者の許諾を得ているが、VG Bild-Kunstが外部サイトで埋め込み表示されないようにする技術的保護手段の適用を許諾条件として要求したため、SPKは不当な要求だとしてドイツ国内で訴訟を提起した。
裁判では外部サイトによる埋め込み表示が公衆送信に該当するかどうかが争点となっており、公衆送信に該当する場合、VG Bild-Kunstの許諾条件は正当ということになる。そのため、公衆送信権を定める
欧州指令2001/29/ECをどのように解釈すべきか、ドイツ連邦最高裁判所がEU司法裁判所に事前判決を求めていた。EU司法裁判所は既に公開されているコンテンツにハイパーリンクを張る行為について、
無償で合法的に一般公開されているコンテンツなら公衆送信に該当せず、
著作権侵害コンテンツであることを知っている場合は公衆送信に該当するとの判断を過去に示しているが、埋め込み表示に関しては今回が初の判断となる。
本件に関しては昨年9月、ページを開いた時にコンテンツが自動で表示される場合は公衆送信となり、リンクをクリックした場合のみコンテンツがフレーム内に表示される場合は公衆送信にならないという
見解をEU法務官が示している。一方、EU司法裁判所の判断は、コンテンツが表示されるタイミングにかかわらず、外部サイトでの埋め込み表示を回避するための技術的保護手段を権利者が採用または要求した場合、外部サイトでの埋め込み表示は2001/29/ECが定める公衆送信に該当すると判断した。
今回の判決を受けてSPKでは、最終的にはドイツ連邦最高裁判所の判断待ちとしつつ、著作者の中にはより広く作品が知られることを望む人も多いとし、著作権管理団体により一律に許諾条件が定められるべきではないとの見解を示している。