米インディアナ州最高裁判所、無断で取り付けられたGPS追跡装置を自動車の所有者が取り外す行為は窃盗に当たらないと判断
米国・インディアナ州の州最高裁判所は20日、捜査機関が密かにGPS追跡装置を自動車に取り付けた場合、それを自動車の所有者が取り外す行為は窃盗に当たらないとの判断を示した(裁判所文書: PDF、 Ars Technicaの記事)。
この裁判は麻薬所持などで逮捕・起訴された被告が証拠は違法に収集されたものだと主張し、一審・二審判決を不服として上告していたものだ。
2018年夏、ウォリック郡保安官事務所は被告が麻薬を密売していると考えて令状を取り、被告の自動車にGPS追跡装置を取り付けた。しかし、7日後に装置からの信号は受信できなくなる。捜査員は装置の「窃盗」容疑で被告の自宅と父親の所有する倉庫に対する家宅捜索令状を取得。捜索中に麻薬などが見つかったため、改めて麻薬の捜索に関する令状を取って捜索した結果、被告は複数の違法行為で逮捕・起訴されることとなった。
被告は最初の令状2件の宣誓供述書では犯罪行為が行われたとする相当な理由が示されておらず、不合理な捜査や押収を禁じた合衆国憲法修正第4条やインディアナ州憲法に違反すると主張。後の令状2件による捜索を含め、証拠をすべて除外するよう求めた。一方、州は令状が有効であり、無効でも善意の例外が適用されると反論し、一審・二審ともに証拠を有効として有罪判決が出されていた。
州最高裁では最初の令状2件に関する宣誓供述書が窃盗の要件である 1)他人の所有物であると知りながら許可なくその権利を奪う 2)他人から意図的に何らかの価値を奪う、のいずれも示していないと指摘。宣誓供述書は自分の車で見つけた謎の黒い箱を被告が取り外した可能性を示しているだけであり、被告が「意図的」に価値を奪ったとするのは捜査員の勘に過ぎないと判断した。
後の令状2件は相当な理由を示さずに取得した最初の令状2件による不当な捜索結果を悪用したものであり、善意の例外を適用してしまえば修正第4条を骨抜きにすることになる。証拠を除外すれば犯罪を見逃すことになるが、勘に頼った不当な捜索を防ぐことが重要だという。その結果、家宅捜索で押収したすべての証拠を無効とし、下級審への差し戻しを命じた。