headless 曰く、
NASAは10月27日、赤外線天文学成層圏観測装置SOFIAの観測により、水が月面の日の当たる場所で検出されたことを発表した(プレスリリース、 論文、 動画)。
月面では常に日の当たらない極付近のクレーター内部に氷の状態で水が存在することが確認されているが、日の当たる場所で水が存在し続けることは難しいと考えられていた。一方、NASAの土星探査機カッシーニや彗星探査機ディープインパクト、インドの月探査機チャンドラヤーン1号などのミッションでは、日の当たる場所でも水の特徴を示す吸収スペクトルのピークが波長3マイクロメートル付近で観測されている。ただし、この吸収スペクトルは水分子以外の水酸化物も共有するため、水分子が存在するのかどうかは不明だった。
NASAとドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同開発したSOFIAはボーイング747SPに直径2.7mの反射望遠鏡を搭載した空飛ぶ天文台で、赤外線を吸収する大気の99%よりも高い成層圏からの観測が可能だ。SOFIAに搭載されている赤外線カメラFORCAST(Faint Object infraRed CAmera for the SOFIA Telescope)は波長5~8マイクロメートルをカバーしている。地球からも見える南半球のクラビウスクレーター付近をSOFIAで観測し、データを分析した結果、水酸化物とは共有されない水分子のスペクトルシグネチャーである波長6マイクロメートル付近のピークが確認されたとのこと。
観測地点での水の濃度は100~412ppmであり、月面の広い範囲で表土1m2あたり12オンスボトル(約355ml)1本相当の水が存在する可能性もある。厳しい月面の環境で水がどのように保持されているのか、SOFIAによる観測で知ることはできないが、隕石による衝撃で形成されたガラスの内部に封じ込められているか、表土の粒子の間や割れ目の中に封じ込められているとみられるとのことだ。