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電力

2020年度北電発電部門電力供給義務から解放=全島停電頻発北海道の明日は明後日の日本

タレコミ by Anonymous Coward
あるAnonymous Coward 曰く、
北電の電源開発計画として現在着工中のものは、石狩湾新港発電所1号機のみで、今後は老朽火力・水力発電の廃止が進められ、供給力は弱まっていくことになる。奈井江発電所の廃止は決まっており、その後順次、苫小牧、伊達、苫東厚真1号機、知内1号機、といった発電所が廃止していくことが見込まれる。
そもそも老朽化しているのはもちろん、原発の停止が長引く中で設備利用率を大幅にあげて酷使させられており、なおかつ石油発電については太陽光発電・風力発電に代替されていくことになるからだ。これはCO2削減という観点ではめでたい話だが、太陽光発電・風力発電は需要に合わせて発電を調整できないため、調整力がない電源が、調整力のある電源を塗り替える、という意味で、系統の脆弱性を高める要因にもなっている。
ここで重要となるのは、調整電源としての性能の高いLNG火力発電所の新設である。その意味で石狩湾新港発電所の2号機、3号機の建設が着実に遂行されることは北海道全体の電力系統の調整力を高める上で非常に重要なことであるが、そのためには北電がこの大規模投資に見合った経営体力を有することが必要不可欠となる。
忘れてはならないのは、2020年度には北電の発電部門は、電気事業法改正の経過措置期間を終え、電力の供給義務から解放されることだ。北電の発電部門は純粋に経営のみを考えればよくなり、石狩湾新港発電所の2号機、3号機の建設が行われない可能性も十分にある
現在マスコミでは「北電は経営のみを考えて、危機対策が不十分だった」との指摘がなされているが、2020年には北電の発電部門は実際経営だけを考えればいい状況が生まれることになるし、またそのような状況を作った主因は他ならぬ東日本大震災後のマスコミの報道姿勢だ。
ここでようやく泊原発の議論になるわけだが、石狩湾新港発電所1号機さえ稼働すれば、短期的には泊原発が稼働しなかったところで電力供給の面で大きな問題が起きることはない。ただ問題は、今後、長期的には苫東厚真の採算性が落ちていくことが確実なことである。石炭火力は稼働率が低いと採算性が大きく落ちるという特性がある。
他方、石狩ではLNG火力発電群(1号機と北ガス発電所)が稼働し始め、北海道管内での風力、太陽光発電の導入はまだまだ進むことになる。加えて小売事業者に非化石電源比率44%以上を義務付けるパリ協定に基づくCO2規制もあり、苫東厚真火力発電所の稼働率は落ちざるを得ず、また老朽化による影響で苫東厚真発電所の1、2号機の維持コストが上昇していくことは確実だ。これらを考えると徐々に同発電所の採算性は落ちていくことになるだろう。
ここで考えられる現実的なストーリーの一つが「泊原発の稼働が進まないまま再エネの導入が進み、苫東厚真発電所の稼働率が徐々に落ち、また、老朽化して維持コストが上がり、他方新電力との競争の中で値段も上げられず、北電の経営が悪化していく。その結果、北電が経営体制を縮小して、泊原発および苫東厚真1、2号機を廃止し、石狩湾新港のLNG発電所群の運営に専念する」というものである。
この場合でもおそらく平時の電力供給は充たせることになるだろうが、今度は北海道の西部の狭い地域に発電所が集中することになり、なおかつ、供給予備力が大幅に落ちることになる。こうなると北海道は常時綱渡りの電力需給の調整を迫られることになり、災害に極めて脆弱になってしまうだろう。そしてこれは現実に起きる可能性が高いストーリーでもある。
泊原発の停止が長引き北電の経営を圧迫した時に、供給責任を持たない発電事業者がどのような経営判断をするのか、またその時に、北海道の電力供給体制に何が起きるのか、ということについては、北海道民はこれを機によくよく考えてみる必要がある。

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計算機科学者とは、壊れていないものを修理する人々のことである

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